研究課題/領域番号 |
22K04875
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
畠山 一翔 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 助教 (30773965)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ナノシート / 構造制御 / グラフェン / 酸化グラフェン / ナノカーボン |
研究開始時の研究の概要 |
酸化グラフェンを前駆体とすることで、機能性の活性点を高密度に導入したカーボンナノシートが触媒、センサー、電気デバイス分野で大きなポテンシャルを見せている。しかし、前駆体である酸化グラフェンは多種類の官能基、炭素空孔をランダムに含む複雑な構造を持ち、機能性の最適化、再現性の実現が大きな課題となっている。その中で我々は、エポキシ基のみを酸素官能基とし、構造規則性が高いエポキシカーボンナノシートを開発した。本研究の目的は、この世界初のエポキシカーボンナノシートを前駆体に用いることで、不可能とされている緻密な構造設計を実現し、これまでにないほど高機能なカーボンナノシート群を開発することにある。
|
研究実績の概要 |
本研究の研究目的は、申請者が新開発したエポキシカーボンナノシートを前駆体とし、機能性二次元ナノカーボン材料を次々に開発することにある。2022年度は、1)酸素を脱離させることでグラフェン類似ナノカーボン材料を作製する試み、2)エポキシ基部位に窒素をドープする試み、3)エポキシ基を化学修飾する試み、を行い1)のグラフェン類似ナノカーボン材料の作製において最も成果が得られた。グラフェン化は、レイヤーバイレイヤー法により3層積層させた薄膜を3%水素中で熱処理した後、シート抵抗を測定することで評価した。結果として、300 ℃という比較的低温の熱処理で、4.2 kΩ/sqのシート抵抗を得ることができた。これは、グラフェンの前駆体としてよく用いられる酸化グラフェンを、700 ℃の熱処理したときのシート抵抗(12.8 kΩ/sq)より低い値であった。この結果は、エポキシカーボンナノシートがグラフェンの前駆体として、非常に優れていることを示す。エポキシカーボンナノシートの構造規則性について、XRD、紫外可視吸収およびRaman測定により詳細に議論し、低温熱処理による低シート抵抗の実現は、エポキシカーボンナノシートが炭素欠陥をほとんど含まないこと、高い構造規則性により酸素脱離の温度が狭い範囲に集中していること、が主な原因であると突き止めた。高い電気伝導度は、電池、センサー、触媒などの性能向上に直結するため、本成果はそれらの分野の発展に大きく貢献できると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究で、エポキシカーボンナノシートを温和な条件で還元し、低いシート抵抗を得ることができた。これは、これまで酸化グラフェンを用いた研究では達成不可能だった機能性を、エポキシカーボンナノシートを用いることで実現できること意味する。また、その中で、エポキシカーボンナノシートの構造欠陥や構造規則性について詳細を明らかにすることができた。このように、エポキシカーボンナノシートの可能性およびその根拠を示すことができたため、研究は概ね順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2022度の研究で、エポキシカーボンナノシートがグラフェン(類似材料)の前駆体として非常に優秀であることがわかった。酸化グラフェンを前駆体とする研究は、触媒、電極、センサー、多機能膜と多岐におよんでおり、エポキシカーボンナノシートも同規模の将来性があると考えられる。今後は、申請者が得意とする、触媒、電極、多機能膜の研究にエポキシカーボンナノシートを導入していく。特に欠陥が少ないという事実から、ガスバリア膜やイオンバリア膜への利用へ発展させていく予定である。また、構造規則性が高いことから、酸化グラフェンでは不可能であった、理論計算の導入が期待できる。今後は、理論計算による構造予測や、IR、紫外可視吸収スペクトルの予測なども行っていく。
|