研究課題/領域番号 |
22K04882
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
梅津 郁朗 甲南大学, 理工学部, 教授 (30203582)
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研究分担者 |
吉田 岳人 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (20370033)
福岡 寛 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (40582648)
青木 珠緒 (松本珠緒) 甲南大学, 理工学部, 教授 (80283034)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | パルスレーザーアブレーション / ナノ粒子 / 球状粒子 / インパクタ / 慣性効果 / ミクロン粒子 / レーザーアブレーション / 複合粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ粒子やミクロン粒子はサイズに依存した物性を持ち、複合化によって新たな機能性の発現が期待されている。本研究では二つのレーザーと二つの材料ターゲットを用いたダブルパルスレーザーアブレーション法によってナノ粒子・ミクロン球の複合構造を形成する。堆積条件を変化させて堆積物を観察することによってナノ粒子・ミクロン球の生成と複合化の時間的・空間的(非平衡的)生成過程の理解を深める。この基礎的な生成過程の研究成果は新規なナノ・ミクロン複合粒子構造の制御につながる。
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研究実績の概要 |
球状サブミクロン粒子は、局在表面プラズモン共鳴による吸収や光散乱を利用した光機能性材料として注目を集めている。研究代表者らはパルスレーザーアブレーション法で放出された粒子をパイプで吸引すると、基板上に球状ナノ粒子が堆積することを報告している。前年度は、パイプ中のガスの流れに沿って進む球状ナノ粒子が、基板上での慣性効果によって堆積し、平均粒径はターゲット材料物質の密度とガスの流速で決定されていることを明らかにした。粒径分布は対数正規分布によく従うものの、それから外れる大粒径の粒子がわずかに混在していた。また堆積条件によっては数ナノメートル程度のナノ粒子を一次構造とするナノ粒子集合体が混在した。 当該年度はパイプ吸入口の位置を変化させ、大粒径のナノ粒子とナノ粒子集合体の混入を最小限に抑える条件を模索した。その結果、パイプ吸入口がターゲット位置から遠ざかるにつれて大粒径粒子の混在が多くなることがわかった。この原因を、ガス中をパイプに垂直に進む粒子に対して粘性抵抗効果の影響を考察した。その結果、ターゲットから遠い位置では、ガスの粘性抵抗によって大粒径ナノ粒子が減速し、パイプ吸入口から入り込みやすくなることがわかった。また、ナノ粒子集合体はターゲットからある特定の位置にパイプ吸入口を配置したときによく見られた。これに関してはパルスレーザー照射によって発生する衝撃波の影響を考察した。レーザー照射によって気相から成長したナノ粒子集合体は照射位置近傍にとどまり、次のレーザーパルスで発生した衝撃波で掃き出され、特定の位置で停止すると考えると、実験結果は定量的見積もりともつじつまが合う。 このようにパイプ吸入口の位置を変化させて堆積させ、堆積過程を考察することによって、大粒径ナノ粒子やナノ粒子集合体の混入の少ない良質な球状ナノ粒子の作成方法の指針を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は「研究実績の概要」に示したようにパイプ吸入口の位置を変化させて試料の堆積構造の観察を行った。得られた結果を慣性効果と粘性抵抗をもとに検討したところ、ナノ粒子および球状ミクロン粒子の形成過程に関する有用な情報が得られた。さらにナノ粒子集合体に対する衝撃波の効果もわかってきた。これらは当初の研究計画に近く、順調に進んでいるといえる。ナノ粒子の複合構造に関してはナノ粒子とバルク半導体との複合構造に新たな展開が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた知見を基に、パイプ位置と流量を制御することによって、より良い試料作りを試みる。得られた試料に対しては結晶構造、プラズモン吸収、光散乱などの基礎物性を評価する。さらに、球状ナノ粒子の局在表面プラズモン効果や光散乱光効果を利用した光触媒や太陽電池の効率向上を試みる。初期の研究計画では金属ナノ粒子と半導体ナノ粒子の複合化を中心に考えていた。しかし、太陽電池応用を視野に入れれば球状ナノ粒子とバルクまたは薄膜半導体の複合化の方が有用である。また、予備実験では金属ナノ粒子をSi基板に堆積させることで光電気伝導性の向上に良い感触を得ている。そこで今後は球状ナノ粒子とバルク(または薄膜)半導体の複合化を行い、その光応答の変化の測定に力を入れる。複合化によって期待できる光触媒や太陽電池応用で重要なのは球状ナノ粒子から半導体へのエネルギー伝達である。そこでZnOやSiなどの半導体と球状ナノ粒子を結合させ、球状粒子と半導体間のエネルギー伝達の有無を光電気伝導やフォトルミネッセンスで確認し、応用展開への可能性を検討する。
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