研究課題/領域番号 |
22K04888
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小橋 和文 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究チーム長 (60586288)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 非晶質炭素 / ナノ炭素材料 / カーボンナノチューブ / 構造 / 表面官能基 |
研究開始時の研究の概要 |
非晶質炭素は様々な炭素材料に幅広く含まれるが、ナノ炭素材料では合成、精製時に生じる副産物とみなされ、グラフェンシートからなる炭素結晶構造が主な研究対象とされてきた。しかし、ナノ炭素材料から分散液・ペースト等の中間体を作製し、膜、糸、バルク等の部材を製造する工程では、非晶質炭素の担う役割が次第に認識されるようになった。それは分散性、成形性の向上や機能性の発現を支える助剤ととらえられる。そこで、本研究ではナノ炭素材料中の非晶質炭素を分析し、短距離(0.数~数nm)の規則的構造のサイズと表面官能基を明らかにする。得られる知見により、ナノ炭素材料の理解が深まり、ナノカーボン実用化研究を加速できる。
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研究実績の概要 |
初年度(2022年度)は非晶質炭素を含む市販CNTの評価を行い、中赤外分光法によるC=C結合振動ピークから炭素六角網面の結晶性を評価できる可能性を見出した。このような結晶性の評価手法は報告されておらず、次年度も引き続き重点的に研究に取り組む。 具体的には市販CNTのうち、バンドルをゆるく組み解繊しやすい構造をもつSGCNTから評価を始めた。酸化処理を行い積極的に非晶質炭素(表面官能基)量を増やしたSGCNTを用いて、N2下、不活性な雰囲気で高温アニール処理(375℃、800℃、950℃)を行った。酸化処理前のCNTには中赤外分光法により炭素六角網面に由来する長距離のC=C骨格振動ピークが見られた。一方、処理後はC=C骨格振動ともに、酸処理で導入された欠陥構造に由来する短距離のC=C伸縮振動と考えられるピークが検出された。また、酸処理によってエポキシ、ケトン、エステル、カルボキシル、エーテル基、水酸基等の官能基が導入された。高温アニール後は、その温度に応じて2、3種類程度の官能基が残ることが分かり、C=C骨格振動ピークは保たれるが、C=C伸縮振動と考えられるピークは消失することが明らかとなった。このピークの消失はエポキシ基の消失と連動して起き、アニールによって炭素六角網面でのC=C結合が再構築されたことが示唆された。 他の評価手法として遠赤外分光法によるCNT有効長(電気的なパスの長さ)、EDS、XPSによるO/C組成分析、ラマン分光法によるG/D比、TGAによる官能基重量、電子顕微鏡による形態、サイズの評価に取り組んだ。これらの多角的な評価と並行して、非晶質炭素の分離手法を検討した。pHの差を利用した湿式分離と熱分解性の差を生かした乾式分離について、試料調製条件および分離条件を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販CNTに含まれる非晶質炭素の構造パラメータ(結晶性、表面官能基、形態、サイズ等)の評価手法を幅広く検討することができた。特に中赤外分光法については長距離のC=C骨格振動と短距離のC=C伸縮振動のピークに着目して、非晶質炭素を含む市販CNTの評価を進め、炭素六角網面の結晶性評価につながる知見を取得した。このような炭素材料結晶性の評価はこれまで報告されておらず、非晶質炭素を含む炭素材料の新規評価手法として期待される。他の評価手法については遠赤外分光法、EDS、XPS、ラマン分光法、TGA、電子顕微鏡を活用し、試料調製条件、測定条件を検討できた。非晶質炭素の分離手法についても、湿式、乾式での分離条件を探索できた。このような理由からおおむね順調に進捗しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ炭素材料に含まれる非晶質炭素の規則的構造のサイズと表面官能基を明らかにできるよう、市販CNTやグラフェンを用いて評価手法の検討と多角的な分析を進める。並行して、非晶質炭素の分離手法を湿式と乾式で検討する。非晶質炭素の評価情報が得られやすいよう、酸化等での表面官能基の導入、高温アニールによる官能基熱分解除去を行った試料で組成、構造の変化を調べる。また、単一でなく複数の手法を用いて定量的な評価を行う。 初年度は中赤外分光法による炭素六角網面の結晶性評価に関して知見が得られたため、次年度に学会等で成果発表および意見交換を行い、今後の方針を明確化する。また、新規手法として論文化に取り組み研究成果の普及に努める。 市販CNTのうち、バンドルをゆるく組んだ構造をもつ単層CNTを対象として評価情報が得られてきたため、今後は構造の異なるCNTの分析を行う。具体的には結晶性が高くバンドルを強く組んだ構造をもつ単層CNT、結晶性が低くバンドル構造をもたない多層CNTを用いる。さらに、市販酸化グラフェンの評価を行い、ナノ炭素材料に含まれる非晶質炭素の分析に取り組む。
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