研究課題/領域番号 |
22K04891
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和沢 鉄一 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授 (80359851)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 蛍光偏光 / SPoD-OnSPAN / 超解像イメージング / 細胞内温度 / フーリエ変換 / 配向秩序 / 光スイッチング蛍光タンパク質 / フーリエ解析 / 蛍光変調 / 蛍光顕微鏡 / 偏光 / タンパク質複合体 / 生体適合性 |
研究開始時の研究の概要 |
蛍光偏光測定は、試料に含まれる蛍光物体の配向や配向秩序を解析するための有用な手法である。細胞内の様々なタンパク質複合体は、その配置や構造の秩序・無秩序遷移を行いながら、生理的な機能を発揮していることが示唆されている。しかし、タンパク質複合体はしばしばサブミクロン~ナノメーターオーダーのサイズであるため、光の回折限界程度の空間分解能の従来型蛍光顕微鏡による蛍光偏光測定は、細胞内のタンパク質複合体の秩序・無秩序の解析には十分ではない。本研究課題では、超解像蛍光偏光イメージング技術を開発し、細胞中のタンパク質複合体の配向や配向秩序の解析に応用する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、超解像蛍光偏光イメージング技術を開発し、細胞中の蛍光標識タンパク質複合体の偏光蛍光測定を通して、複合体構造の配向や秩序化と細胞生理機能との関係を解析するための方法論を確立することである。具体的な実施項目は、(1) 低強度照明光による細胞適合性の高い超解像偏光顕微鏡装置の開発、(2) 超解像偏光顕微鏡による測定データから試料中の蛍光物体の配向と配向秩序を高空間分解能で算出する解析手法開発、そして(3) 超解像蛍光偏光イメージングの細胞観察への応用である。今年度は、多色超解像観察および蛍光偏光観察・超解像観察を同時に行うためのSPoD-OnSPAN超解像蛍光顕微鏡の改変を行い、また蛍光偏光および細胞生理機能に関与する細胞内温度のイメージング手法の研究開発に取り組んだ。 SPoD-OnSPAN超解像蛍光顕微鏡の改変においては、蛍光帯の異なる2種の光スイッチング蛍光タンパク質の超解像観察を行うために、励起用レーザー2台、そして光スイッチング用レーザー2台を装置に組み込んだ。次年度は、これら4本のビームの偏光比の最適化のために超解像顕微鏡装置の調整を行う予定である。また、この装置拡張に伴い、照明光とカメラの制御ソフトウェアの改変も行う予定である。 細胞内温度は細胞生理機能にとって重要な物理量であるだけでなく、蛍光プローブの回転運動性と蛍光偏光にも関与するため、蛍光偏光イメージングにおいても細胞内温度の観察は重要である。我々の研究室では、これまでに細胞内温度イメージングのための遺伝子でコードされた蛍光性温度指示薬の開発を行ってきた。今年度は、蛍光比型の温度指示薬を用いた温度イメージングにおける計測精度および温度センシングメカニズムの解析の理論的手法の確立を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、多色超解像観察および蛍光偏光観察・超解像観察を同時に行うためのSPoD-OnSPAN超解像蛍光顕微鏡の改変と、細胞生理機能に関与する細胞内温度イメージング手法の理論的考察について取り組んだ。SPoD-OnSPAN超解像蛍光顕微鏡の改変においては、蛍光帯の異なる2種の光スイッチング蛍光タンパク質の超解像観察を行うために、488 nmおよび561 nmの発振波長の励起用レーザー、そして405 nmおよび458 nmの光スイッチング用レーザーを装置に組み込み、これら4本のビームについてSPoD-OnSPAN超解像イメージングが可能になるようアラインメント調整を行った。ただし、当研究室の都合により、SPoD-OnSPAN超解像顕微鏡の設置場所を移動する必要があったため、当該装置はいったん解体し、移設先の顕微鏡室において当該超解像顕微鏡の再構築を行う予定である。顕微鏡装置の移設のために、蛍光偏光超解像画像の再構成計算手法の開発が遅れたため、これも次年度行う予定である。 細胞内温度は細胞生理機能にとって重要な物理量であるだけでなく、蛍光プローブの回転運動性や偏光にも関与するため、本研究課題を進める上でも細胞内温度の観察は重要である。我々の研究室では、これまでに細胞内温度イメージングのための遺伝子でコードされた蛍光性温度指示薬の開発を行ってきたが、蛍光性温度指示薬による温度計測の定量的な機能評価手法についてのまとまった記述は従来の文献にない。そこで、今年度は、蛍光比型の温度指示薬を用いた温度イメージングにおける計測精度および温度センシングメカニズムの理論的解析手法の確立を行った。特に、温度センシングメカニズムの解析では、蛍光比型の遺伝子でコードされた温度指示薬について、それを構成する蛍光タンパク質のモル吸光係数と蛍光量子収率、そしてFRET効率の寄与を解析的に算出する手法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、SPoD-OnSPAN顕微鏡装置の再構築と最適化、蛍光偏光超解像再構成計算手法の開発、そして細胞の蛍光偏光超解像観察を行う。SPoD-OnSPAN超解像顕微鏡は、移設先の顕微鏡室において再構築を行い、さらに照明光の偏光比を向上させるために光学系の最適化を行う。SPoD-OnSPAN超解像蛍光顕微鏡に新たなレーザー光源を導入したことに伴い、照明光とカメラを制御するソフトウェアの改変も行う。蛍光偏光超解像画像の再構成計算手法の開発では、SPoD-OnSPAN超解像観察データを用いた蛍光の変調深度および変調位相の高空間分解能の空間分布を算出する方法論を確立する。各画素の蛍光強度時系列からフーリエ解析を介してその変動振幅の実部画像と虚部画像に分離し、最適化最尤法によって超解像画像を推定する計算法を確立する。細胞イメージングでは、線維状のタンパク質複合体を光スイッチング蛍光タンパク質で蛍光標識した細胞試料を用い、本研究課題のコンセプトの実験的な実証を行う。
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