研究課題/領域番号 |
22K04898
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山平 真也 京都大学, 生命科学研究科, 特定講師 (70750652)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 樹脂成形 / 微細加工 / 薄肉加工 / PDMS / 細胞解析デバイス |
研究開始時の研究の概要 |
生命科学研究から医療までの広い分野で、熱可塑性樹脂製のマイクロデバイスは重要なツールとなっている。しかし、現在主力となっている高剛性の金型を用いた成形技術は、10 umレベルの極薄い形状を大面積で有する立体物成形には適していない。また、非常に高いコストにより研究室レベルでは実施が困難である。 そこで申請者は、鋳型自体が変形によって寸法誤差を自己補正する弾性体鋳型を用いることで、誤差が大きいが安価な鋳型でも、金型では困難な極薄い構造を大面積にわたって精密に成形できる技術を発案・実証した。本研究では当該技術の確立を行い、薄い構造の高い熱伝導や優れた光学特性を利用した細胞解析デバイスを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、弾性体鋳型が変形によって寸法誤差を自己補正することにより熱可塑性樹脂の薄肉加工を可能とする技術を、段階を踏んで発展させ、任意の形状を成形し、望みの部分を薄肉加工できる技術として確立することを目的とする。まず、流路形状などのマイクロデバイスの基本的な構成要素の薄肉加工法の確立を行う。次に、得られた鋳型と成形物等のデータを基に、薄肉部分を有する構造物を作製するための鋳型や加工プロセスのシミュレーション方法を策定する。また、上記技術を用いて開発したデバイスの細胞解析への応用を行う。 令和5年度は、前年度に確立した光造形3Dプリンターを用いた自在な形状のPDMS鋳型作製方法を用い、研究計画に基づき細胞実験用の薄肉底面培養器を作製した。3Dプリンターで作製した樹脂製鋳型を80℃48時間加熱して、モノマーを完全に反応させた後、PDMSエラストマーを注型することで硬化不良を起こすことなく、PDMSの凸鋳型を作製することができた。これを、ポリカーボネートの板に高温高圧で押し付けることにより、薄肉ウェルプレートを作製することができた。一方、3Dプリンターの積層痕が転写されたと考えられる疵が底面に観察され、顕微鏡観察などの細胞実験には不適と考えられた。鋳型積層痕の研磨等による除去方法を検討中である。そこで、本研究当初の作製方法に立ち返り、治具上のPDMS膜を空気圧により変形させ、そこにエラストマーを注型して作製したPDMS凸鋳型で、滑面を有する細胞実験用薄肉ウェルプレートを作製した。光によって細胞を捕捉する光活性化PEG脂質をコートし、直径18μmのスポット光をフォトマスクで照射したところ、薄肉構造に由来する優れた光学特性によりヒト膵がんオルガノイドの1細胞アレイを作製することができた。本プレートでは、1細胞から中空形状のヒト膵がんオルガノイドに増殖する様子が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3Dプリンターで作製した樹脂製鋳型を適切に処理することにより、任意の形状のPDMSを作製し、これを鋳型とした熱プレス加工により熱可塑性樹脂をおおよそ目的の形状にすることが可能となった。これまでに、曲面を有する凸型や、矩形形状など、種々のデバイスを構成する要素の作製が確認されている。また、本研究当初の作製方法ではあるが、薄肉の培養容器を作製し、生体内に近い性質を有するがんオルガノイドの1細胞からの培養(クローニング)にも成功した。一方、様々な鋳型形状や熱プレス加工条件による成型と、実際の成形物の形状、特に樹脂の肉厚との関連付けに関する実験がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度中にデバイス作製における基本的な要素を任意の形状において、おおよそ成形することが出来るようになった。また、作製した薄肉デバイスの細胞実験への応用も達成した。令和6年度は残る目標として、弾性体鋳型の形状や熱プレス加工条件と、実際の成形物の形状、特に樹脂の肉厚との関連付けやシミュレーションに注力することで、作製したい成形物から鋳型や加工条件を逆算可能とし、本技術の確立を目指す。
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