研究課題/領域番号 |
22K04900
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
早瀬 仁則 東京理科大学, 創域理工学部機械航空宇宙工学科, 教授 (70293058)
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研究分担者 |
小川 修平 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 講師 (20385553)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | マイクロ流路 / 白血球除去 / 特異吸着 / 抗体 / 吸引穴 / マイクロスリット / CTC / マイクロ流体デバイス / 循環腫瘍細胞 / 白血球 |
研究開始時の研究の概要 |
マイクロ流体デバイスにより血液から大きめの細胞を選別することでCTC (循環腫瘍細胞)の捕捉を試みているが、この方法では白血球の混入が避けられない。そこで、白血球除去に向けて、生体分子のアフィニティ利用を試みてきたが、白血球を捉えるには流れを止めて吸着を待たなければならなかった。本研究では、捕捉が困難な原因として、細胞表面の凹凸にあると考える「凹部仮説」を提唱し、この仮説を、狭隘スリット部を有するマイクロ流路により検証する。その上で、細胞を流路壁面に押し付ける仕組みを設けた高スループットな白血球捕捉デバイスを目指す。
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研究実績の概要 |
細胞表面の凹凸により、凹部の抗原が抗体と接触しないことが、抗原抗体の特異吸着を妨げ、細胞のマイクロ流路壁面への低い吸着率の原因と考える凹部仮説を提唱している。昨年度の研究では、スリット状の狭隘部に細胞を流し入れることで、細胞表面を流路壁面に押し付けることを試みた。この結果、抗原抗体の特異吸着が大幅に促進され、凹部仮説を支持する結果が得られたと考えられ、大きな進展を得た。しかし、白血球は様々な大きさであるため、単に大きいために詰まる、あるいは、小さいため壁面と接触しないなど、狭隘スリットを用いた方法を実際の白血球捕捉に適用することはできない。そこで、今年度は、壁面に細胞が通過できない微細穴を設け、壁面の微細穴に向かう流れに沿って動く細胞が壁面に衝突すること、あるいは吸引による特異吸着促進の可能性を探った。なお、特異吸着以外で付着した細胞は流れを逆流させることにより脱離させる。微細穴は、細胞が通り抜けないことが必要である一方で、なるべく多くの流れが通過できるよう出来るだけ大きい方が好ましい。そこで、実際に1-5μmの穴を設けた流路を試作し、想定した流速内で細胞が通り抜けない寸法を実験的に検討した。この結果、穴は2μm幅とすることにした。次に、微細穴を設けた流路を用いて、特異吸着についての計測を進めた。具体的には、細胞分散液を注入して細胞を微細穴部に配置し、細胞数を計測する。次に、逆向きの流れにより、強く吸着していない細胞を脱離させ、残留した細胞数を計測した。これにより、細胞の捕捉率を求めた。なお、様々な流量で実験を行った。この結果、昨年度の狭隘スリットを用いた場合と同様の約80%の細胞捕捉率を得た。また、大きな流量(大きな押付力)で細胞を注入したほうが高い捕捉率を得たことから、細胞表面と流路壁面との特異吸着にはある程度の力で細胞を壁面に押し付ける必要が改めて確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗原・抗体反応による特異吸着により白血球の捕捉を目指しているが、捕捉率が極めて低かった。細胞表面の凹凸により、凹部の抗原が壁面の抗体に接触しないことが大きな要因と仮定した(凹部仮説)。そこで、狭隘スリット部に細胞を流し込むことにより、細胞を大きく変形させ、細胞膜と壁面との接触機会の増加を促した結果、従来よりも明らかに高い捕捉率が得られた。この結果を踏まえ、より実際的な微細穴型を提案し、有望な結果が得られたため、順調と判断した。また、大きな流量(大きな押付力)において、高い捕捉率を得たことは、特異吸着を促すためにはある程度細胞を壁面に押し付ける必要があることを示しており、一層、凹部仮説を支持する結果を得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までは、白血球の細胞株であるJurkat細胞を用いて、実験を進めてきた。白血球は、いくつか種類があり、また、活性化状態によっても、吸着状況は異なってくることが予想される。そこで、まずは、細胞株ではなく、市販の白血球を用いた実験を検討する。ここで順当な結果が得られれば、より実際的なデバイスとするため、白血球捕捉数を増加させる流路設計を進める。
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