研究課題/領域番号 |
22K04901
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
工藤 寛之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (70329118)
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研究分担者 |
森澤 健一郎 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (60410130)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | バイオセンサ / 生体計測 / 電気化学 / ウェアラブル / 汗中成分 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、微小空間において流体を制御するマイクロフルイディクスと呼ばれる技術や生体液(特に汗)に含まれる多数の成分の中から特定の分子だけに注目して測定することが可能なバイオセンサの技術を組み合わせることで、皮膚表面における化学物質の分泌動体を選択的に連続計測する技術を開発します。またこの技術を用いて生体表面の乳酸に注目し、その分泌量が日常生活の中でどのように変化するかを明らかにすることを目的としています。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究成果を受けて、2023年度は(1)開発したシステムの最適化、(2)多成分同時計測への応用の2点を中心に検討を進めた。具体的には、システムを長時間に渡り安定運用できるよう、電源関連のマイナーアップデートを行なったほか、本システムの制御およびデータ処理を担うiOSベースのアプリケーションを更新した。これらの最適化は目新しい展開を求めるものではなく、2022年度までに開発したシステムのバグフィックスや微調整を中心とした地道な内容である。しかしながらこれらの作業は本研究において不可欠なもので、S/Nが3倍程度向上した他、運用の簡易さ、安定性などの面でも著しく改善され、本システムの測定結果が従来技術と比べて明らかに生理的な情報を多く反映していることが明らかになった。これらの点についてIEEE-NEMS2023や「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウムを中心に研究成果を発表した。一方、(2)は新しい展開の位置付けと言える。K+を乳酸と同時にモニタリングするためには、乳酸センサを動作させるためのキャリアフローにK+が含まれないことが求められる。このため、イオノフォアで電極を修飾するとともに、乳酸センサの動作条件なを見直し、両立を図った。汗中のイオンモニタリングは国内外の関連の研究を俯瞰しても難易度が高い課題である。本研究で開発を進めているシステムは汗のサンプリングの信頼性と、低発汗時のモニタリングが可能であるという特長があるが、この利点を一切犠牲にすることなくK+イオンのモニタリングが可能であった。これらの成果は電気学会バイオ・マイクロシステム研究会等で発表し、IEEE-NEMS2024での発表も予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画通りのシステムが構築されており、デバイスの開発そのものは予定通りの進捗であるが、最適化が進んだことによりもはや汗中乳酸のモニタリングそのものは技術的に成熟を迎えてきた。これに伴い多数のデータを容易に集めることができるようになった結果、汗中乳酸の振る舞いについての理解が深化してきた。研究成果を公開するには時期尚早であるが、今後当初計画に加えて汗中成分の分泌動態についてより詳細な検討を行うことも検討している。 これらをもたらした研究の実施状況として、第一に電源の最適化がシステムの性能を著しく向上させた点が挙げられる。バッテリの消耗により電圧電源が下がった際に、ポンプの出力が変わらないよう、動的にduty比を変化する制御を加えた。また流路長が最短になるよう、腕時計型システムの設計を最適化し、発汗からセンサへの搬送までの時間を7割程度短縮した。またアプリケーションのバグフィックスに時間を費やした。これらが全体的にシステムの性能・安定性を向上させ、結果として大量の信頼性の高いデータの取得が可能となった。 加えてイオンセンサの開発では、従来の乳酸センサがキャリアフローとして用いているPBSにカリウムイオンが含まれていたため、カリウムイオンを含まない緩衝系にてセンサを動作させる技術を開発した。乳酸酸化酵素がTris-HCl緩衝液系で活性が不安定になることから、塩濃度の最適化などを踏まえて安定動作が得られるようにした。これらを踏まえて運動中の汗中乳酸の分泌動体について約40例のデータを取得し、発汗量や運動負荷が汗中の乳酸分泌にどのように影響するか、といった点についても新しい知見が得られる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度は、主にシステムの応用面を重点的に検討を進める。これまで研究を推進してきた中で、企業や海外との連携も生まれつつある。本研究計画の立案当初ではこれらの展開を予想することは難しかったが、国際的な共同研究や企業との共同研究の枠組みで周辺技術の検討も進んでいる。これらの研究成果を本事業にフィードバックしつつ、ハードウェアの開発を進めながらも本システムによる生理的な状態の評価、並びに新しい生命現象の理解という目的に向けて(1)運動中に汗中に含まれるイオンと乳酸の同時計測をモニタリングし、その推移を調べる。(2)臨床現場で腕時計型汗中乳酸モニタリングシステムの有用性を評価する。(3)海外の研究機関と連携して流体制御システムを微細化し、ウェアラブルシステムとしての成熟を目指す。 具体的には、電流計測・電位計測の双方を一つの腕時計型センサシステムに集積化するため、回路設計を刷新する。このシステムを用いてバイク運動に伴う汗中イオン・乳酸の同時モニタリングを実現する。また改良されたシステムを用いた臨床現場での実験についてはすでに倫理委員会の承認を得ているので、引き続き検討を進める。(3)はよりチャレンジングなテーマと位置付けている。新規なマイクロポンプを本システムに適用することで小型化と省電力化を同時に進め、実用面での使い勝手の向上を目指す。
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