研究課題/領域番号 |
22K04907
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒木 和彦 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (10242091)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 超伝導 / ニッケル酸化物 / バンド計算 / 有効模型 / 二層系 / 多軌道系 / 多軌道 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、(Nd,Sr)NiO2合成の還元過程において生じうる残留水素をあらわに考慮した理論計算を行うことで、d9とd8の間の電子配置になる可能性を探り、その際に生じる多軌道性が超伝導に及ぼす効果を研究する。また、(Nd,Sr)NiO2と類似のバンド構造を持つd8電子配置の複合アニオン系を理論的に解析し、これらに電子ドープしたとき、また、圧力をかけたときに超伝導が実現する可能性を探究する。この目的のために、新規に開発しつつある新しい強相関理論手法を用いる。
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研究実績の概要 |
ニッケル酸化物Sr2NiO2Cl2における圧力印加による超伝導の可能性について調べたけん研究については、論文を書き上げ、現在投稿中である。 一方、令和5年度は、ニッケル酸化物超伝導において、予想していなかった展開があった。二層型ニッケル酸化物La3Ni2O7が、圧力下において、Tc=80Kの高温超伝導になることが、中国・中山大学のグループによって発見された。本科研費課題の主題は、二層系が超伝導に有利であることに着目し、二軌道系を有効的に二層系に読み替えることができることに着想を得ているが、La3Ni2O7は本当の二層系であり、かつ、本科研費課題の代表者が2017年にPhys.Rev. B 95巻 214509頁において、高温超伝導の可能性を論じていた物質そのものである。そこでの論点は、この物質は、d3z2-r2軌道の層間の重なりが強いため、相関を電子が行き来することができ、かつ、各d3z2-r2軌道に平均して約1個の電子が存在しているという点がポイントであった。我々は急きょ、高圧下における結晶構造を取り込んだ有効模型を構築し、揺らぎ交換近似を用いて、高温超伝導の可能性をあらためて検証した。その結果、Tc=80Kを説明し得る結果を得た。また、揺らぎ交換近似よりも強相関効果を正確に取り込むことができる密度行列繰り込み群を用いて、La3Ni2O7の電子状態を模した二軌道二本鎖梯子ハバード模型の超伝導ペア相関関数を計算した。その結果、d3z2-r2軌道の鎖間ペアの相関関数がべき的減衰を示し、d3z2-r2と混成するdx2-y2軌道の鎖間ペアの相関関数もべき的減衰を示して、超伝導に有利な状況にあることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に書いたように、予想していなかった展開があった。二層系ニッケル酸化物の研究をきっかけに、三層系ニッケル酸化物の研究にまで進展するに至っている。これらの新しく発見されたニッケル酸化物高温超伝導体の研究を通して、有効的に二軌道系を二層系とみなすという、本科研費のもともとの方向性に対して、いくつかの新しい可能性が生まれ、現在、研究に取り組みはじめている。令和6年にはそれらの結果の少なくとも一部を出版することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請時に構想していた、無限層系ニッケル酸化物における残留水素が超伝導に影響を与える可能性については、近年、否定的な実験結果が出始めており、この方向性を追求するよりも、今年度着想した新たな無限層系における有効二層系実現の可能性を探究するほうが適切であると判断している。一方、今年度発見された二層系ニッケル酸化物高温超伝導体La3Ni2O7については、現時点で、超伝導実現のために圧力を必要とする。圧力をかけない状態での高温超伝導実現の可能性について、すでに世界中でしのぎを削って研究が推進されているが、我々も独自の着眼点に基づいたアイディアを有しており、その方向での研究も推進していく。
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