研究課題/領域番号 |
22K04909
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小谷 岳生 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60283826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ハイゼンベルグモデル / 電子状態計算 / モデル化 / QSGW法 / 磁気応答 / 有効ハミルトニアン / 線形応答 / 並列化 / ecalj / スピンゆらぎ / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
最近,申請者らは「第一原理計算で得られたスピン横ゆらぎ線形応答を完全に再現するように、非線形応答の方程式(拡張ハイゼンベルグモデル)を与える」理論を提唱しており、本研究はこれに基づく。この方程式はLLG(ランダウ・リフシッツ・ギルバート)方程式を拡張したもので,ハイゼンベルグ交換相互作用を遅延型交換応答関数に置き換えるものである。ギルバート減衰項はその遅延効果に自然に含まれる。最近の量子力学的ランダム力を用いたスピンゆらぎシミュレーションの新たな基礎づけを与える方法である。本研究では、一般化した磁気ゆらぎの方程式を構成し磁性体・非磁性体を問わず適用できるものにする。
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研究実績の概要 |
研究目的を達成するため、当該年度においては、1.電子状態計算コードのリファクタリング、2.高速並列化、3.自動モデル化、に注力した。以下、各点について述べる。 1:これは手法開発を効率化するために必須である。古く書かれたコードや無駄なアルゴリズムなどついて、最新のフォートラン文法を用いての書き換えを推し進めた。とくに引数でデータをやり取りする方法から、オブジェクト指向におけるシングルトン的記述法(モジュール内にデータをため込む方法)への書き換えを大幅に推し進めた。またブロック構文を活用し変数を局所的に宣言するコードにしている。大枠の構造も変え、フォートランコードはライブラリとし、単純なメインプログラムから呼び出す形式に改変した。これは将来的にpythonを主プログラムとする構造にするために必須である。 2:おもに金沢大学グループと共同研究においておこなっており、私の側ではGPU化に乗せる以前の部分での論理構造の整理をおこなった。現在、分極関数計算の部分においてはGPUでテストできるようになっており、準粒子計算の部分も進展中である。 3:自動モデル化、従来の最大局在化ワニエ法の難点を取り除くものであり、研究計画の技術的中核である。現在、論文発表できるレベルまで完成しており、取りまとめていく段階にある。遷移金属酸化物などではおおむね完全自動化ができているし、半導体では、内部エネルギーウインドウの上限値を設定するだけである。従来法に比して簡便な方法であり、一括計算を可能にすることができるはずである。 また、これらの過程において、「GW計算を多数の系において系統的に行い、機械学習によってその系統性を調べる研究」、「3d電子系の有効モデルハミルトニアンをQSGW法の結果を参照して構築する研究」を、共同研究で行い発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、③のGW計算の高速並列化については、nvfortranを用いてGPU利用ができる形へ移植しOPENACCを用いての高速化を図っている。具体的には申請者がまず、コードの可視性を重視する形でコードの再整理を行った。そして、そのコードに対してGPU並列化について経験豊富な金沢大学の小幡正雄氏がOPENACCを挿入しコード書き換えをする、という形で計算の高速化と可視性の良さを両立させている。相互に情報をやり取りしながら進めていくことで効率よく研究が進展しつつある。また誘電関数におけるスペクトルウエイトは単精度計算するなどの効率化の工夫を行っている。④のモデル化法については、遷移金属酸化物などではおおむね完全自動化ができている(間接ギャップ型の半導体では内部エネルギーウインドウの上限値を設定する必要が残っているが自動化も可能であると考えている)。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、③、④のそれぞれについて、成果報告を論文として取りまとめる。その上で、有効相互作用の計算を組み込み直した後、①における拡張ハイゼンベルグモデルパラメーターをハイスループットで計算できる手法を構築していく。拡張ハイゼンベルグモデルパラメーターの実時間表現を高効率のフーリエ変換的手法を用いて、解析していく。従来、ハイゼンベルグパラメーターは時間依存性のないものとされているが本手法により、その時間依存性が明瞭になり、スピンゆらぎの新たな側面を明らかにしていく予定である。さらには②のスピン縦ゆらぎと共存する問題にもチャレンジする。
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