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光電変換効率の向上を目指した振電相互作用制御のための理論研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K04914
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分29010:応用物性関連
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

藤田 貴敏  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (70767970)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
キーワード光電変換過程 / 電子状態計算 / 量子ダイナミクス / 時間分解分光 / 有機薄膜太陽電池 / 光合成アンテナタンパク質 / 大規模電子状態計算 / 超高速分光 / 光合成アンテナ系
研究開始時の研究の概要

光合成系や有機薄膜太陽電池における光電変換過程において、電子状態と分子振動との相互作用である振電相互作用の重要性が指摘されてきた。適切な分子設計・あるいはタンパク質改変によって振電相互作用を制御することができれば、光電変換過程の上昇が可能である。本申請では、大規模電子状態計算・量子ダイナミクス法・分光理論を統合して、光電変換過程を解析するための新しい計算手法を提案する。応用対象として光合成アンテナタンパクと有機薄膜太陽電池を取り上げて、光電変換過程における振電相互作用の役割を解明する。さらに、振電相互作用を促進・あるいは抑制するための分子設計を実験研究者に提案する。

研究実績の概要

本申請では、大規模電子状態計算・量子ダイナミクス法・分光理論を統合することにより、光電変換過程を解析するための新しい計算手法を提案する。光電変換過程における振電相互作用の役割を解明することにより、光電変換効率の向上のための物質設計を提案することを最終目標とする。本年度は下記の項目についての研究を行った。
(1)有機薄膜太陽電池のP3HT/PCBMについて電荷分離ダイナミクスとポンプ-プローブ分光の解析を行った。ポンプ-プローブ分光法の励起状態吸収(ESA)スペクトルの計算のためには、single-excitation manifold(SEM)の励起状態空間に加えてdouble-excitation manifold(DEM)が必要である。そこで本研究ではDEMのモデルハミルトニアンをフラグメント分子軌道(FMO)計算から導出する手法を提案した。導出したモデルハミルトニアンにより過渡吸収スペクトルの計算を行い、得られたシグナルが実験と定性的に一致していることを示した。さらに、ESAの異方性のダイナミクスの時間スケールが電荷分離のダイナミクスを反映していることを示した。(2)光合成アンテナタンパク質であるアロフィコシアニン(APC)についてFMO法による解析を行なった。APCは色素であるフィコシアノビリンと共有結合しており、α84位とβ84位にある色素間で励起子状態を形成する。本研究では分子動力学法により水和APCの構造を作成し、FMO法により色素の励起エネルギーや色素間の励起子カップリングの計算を行った。さらに、得られた励起状態のパラメータから吸収スペクトルやCDスペクトルの計算を行い、実験との比較を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2023年度は、2022年度に開発した理論・プログラムをベースとして有機薄膜太陽電池と光合成アンテナタンパク質の応用計算を行い、有機薄膜太陽電池の結果は論文として出版した。当初予定した応用計算は行えたが、本研究課題の主題である振電相互作用の影響については十分に検討できなかったため、やや遅れていると判断した。これは当初予定していた振電ハミルトニアンを用いたアプローチでは多数の振動モードを考慮することが困難だとわかったため、別の手法の検討・実装を行っていたからである。

今後の研究の推進方策

2024年度は次の項目について研究を行う。(1)APCの励起状態の解析について進める。特に、APC内の励起エネルギー移動のダイナミクスについて解析を行い2DESの実験との比較を行う。(2)P3HT/PCBMの計算では励起子状態→電荷移動状態の時間スケールが実験と比べて遅いことがわかっている。この結果を改善するために、熱浴の量子効果、振電相互作用、P3HT内のCT励起、を考慮したより精度の高い量子ダイナミクス法による解析を行う予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Manipulation of photosynthetic energy transfer by vibrational strong coupling2024

    • 著者名/発表者名
      Jun-Yu Dong, Yasutaka Kitahama, Takatoshi Fujita, Motoyasu Adachi, Yasuteru Shigeta, Akihito Ishizaki, Shigenori Tanaka, Ting-Hui Xiao, Keisuke Goda
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 160 号: 4 ページ: 045101-045101

    • DOI

      10.1063/5.0183383

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Ab Initio Study of Charge Separation Dynamics and Pump-Probe Spectroscopy in the P3HT/PCBM Blend2023

    • 著者名/発表者名
      Takatoshi Fujita, Takeo Hoshi
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry B

      巻: 127 号: 35 ページ: 7616-7623

    • DOI

      10.1021/acs.jpcb.3c02458

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Beat-frequency-resolved two-dimensional electronic spectroscopy: disentangling vibrational coherences in artificial fluorescent proteins with sub-10-fs visible laser pulses2023

    • 著者名/発表者名
      Tsubouchi Masaaki、Ishii Nobuhisa、Kagotani Yuji、Shimizu Rumi、Fujita Takatoshi、Adachi Motoyasu、Itakura Ryuji
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 31 号: 4 ページ: 6890-6906

    • DOI

      10.1364/oe.480505

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Pump-Probe ESA AnisotropyによるPSII反応中心の電荷分離経路解析2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 貴敏
    • 学会等名
      量子生命科学会 第5回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] メゾヒエラルキー物質における励起子ダイナミクス2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 貴敏
    • 学会等名
      学術変革領域研究(A)「キラル光物質科学」「メゾヒエラルキー」合同シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] フラグメント分割型励起状態計算法の開発と分子集合体の励起子ダイナミクスへの応用2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 貴敏
    • 学会等名
      日本コンピュータ化学会2023年秋季年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] P3HT/PCBMにおける電荷分離ダイナミクスと分光シグナルの理論解析2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 貴敏
    • 学会等名
      第70回応用物理学会 春季学術講演会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 大規模電子状態計算を用いた有機半導体材料の光電子物性2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 貴敏
    • 学会等名
      スーパーコンピュータワークショップ2022「 複雑電子状態の理論・計算科学」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 光電変換過程の量子ダイナミクスと時間分解分光2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 貴敏
    • 学会等名
      計算物質科学人材育成コンソーシアム(PCoMS)シンポジウム &計算物質科学スーパーコンピュータ共用事業報告会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 電子状態計算と時間分解分光によるP3HT/PCBMの電荷分離の解析2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 貴敏
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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