研究課題/領域番号 |
22K04934
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
影島 賢巳 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (90251355)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 臨界現象 / 二成分系 / シア粘性 / 相分離 / 原子間力顕微鏡(AFM) / 臨界状態 / 相転移 / 相関長 / 原子間力顕微鏡 / シア / 粘性 / 臨界ゆらぎ / 臨界カシミール効果 / 粘性異常 |
研究開始時の研究の概要 |
理論的にも未解明な点の多い相転移・臨界現象の微視的側面を実験的に探るため、研究代表者が精通した計測手法である原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、臨界2成分系の液液相分離臨界状態で臨界ゆらぎの相関長の発散によって生じる異常を、力学的に計測するアプローチを確立する。この手法を用いて、臨界カシミール効果による特異な力や、粘性異常の特性を、境界面との空間的な位置・方向の関係や、その計測の時間スケールへの依存性として測定し、臨界現象の微視的・時間分解的側面を解き明かす研究である。
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研究実績の概要 |
今年度の研究では、臨界二成分系の臨界ゆらぎの空間的分布に関する考察を行う目的で、微小距離領域でのダイナミクスを直接反映する物理量としてシア粘性の挙動に着目して計測を行った。原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバー型力センサーに貼付したガラスコロイド球を、水/ルチジンの臨界二成分系中に入れ、同じカンチレバー上に付着させた磁石粒子に外部から交番磁場を与えてセンサーのねじれ振動を誘起した。このねじれ振動によって、コロイド球はマイカ(雲母)基板との間に挟まれた流体にシアを及ぼすので、シア応答として粘性抵抗係数が測定できる。この状態で、コロイド球とマイカ基板との距離を制御して粘性抵抗係数の距離依存性を計測したところ、温度が上昇して相転移温度に近づくにつれて、2表面の接近に伴う近距離域での粘性抵抗係数の増加が鈍化する兆候が観測された。これは、コロイド球と基板の2表面が接近して相関長に近づくと、表面近傍に形成されている成分分率の偏った領域が重なり始め、分率の勾配が低下することで説明される可能性があると考えている。これは、臨界二成分系の相関長程度以下の距離レンジで起こる相互作用について実験的な考察を与える成果であると考えられる。 この成果を、ソフトマターに関する国際学会および走査プローブ顕微鏡に関する国際研究会で発表した。さらに、後者に付随して刊行される物理系欧文誌の走査プローブ顕微鏡特集号に論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の大きな柱の一つである、臨界ゆらぎの空間的な分布に関する考察は成果があがりつつあるのでほぼ順調と言える。それに対して、もう一つの柱である、臨界ゆらぎの時間スケールに対する考察については、いくつかのアプローチを検討している段階である。具体的には、特定周波数の変調をAFMの力センサーに与え、この周波数成分の応答を計測するというこれまでの研究手法を踏襲したアクティブな計測法と、高周波帯までカバーできる装置の特性を活用して、広帯域のノイズスペクトルを計測して、2表面間の相互作用によってスペクトルの変化する様子を、温度を変えて計測しようという考え方である。現在、後者の手法に必要な機材を用意して計測を試行する段階に差し掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
臨界ゆらぎの時間スケールに関する考察を行うため、高周波帯までカバーする粘弾性応答の計測を行うことを計画している。そのため、実際にAFMの力センサーを高周波帯までカバーして励振し、その粘弾性応答を計測するアクティブな手法の他に、広帯域のブラウン運動ノイズを計測することで、各高調波モードに重畳する粘弾性応答を計測することができないかを検討し、試行する。 また、AFMの力センサーにコロイド球探針や変調用の磁石粒子を接着するための接着剤が、計測時間とともに二成分液体による膨潤を起こして力学特性が変動することが、研究の進捗のうえで技術的な問題となっているので、これを克服するために、有機系接着剤の代わりに低融点金属を溶着するなどの手法を検討している。これが実現されれば、本研究の計画に置いて、計測の精度を大幅に改善する進歩が期待されると考えている。
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