研究課題/領域番号 |
22K04942
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29030:応用物理一般関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
安田 正美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (50322045)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 光格子時計 / 基礎物理定数の恒常性 / 光制御型低速原子線源 / 長期連続運転 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、時間の単位「秒」を定義している、マイクロ波領域で動作するセシウム原子時計 に比べて、光格子時計等の光時計は、優れた時間周波数標準であることが実証されてきた。メートル条約関連会議では、時間の単位「秒」の光周波数に基づく再定義が検討されている。この再定義実現のための最も重要な条件は、光時計による国際原子時への定常的な貢献であり、技術的には、光時計の長期連続運転が必要となる。本研究では、申請者が独自に開発した光制御型低速原子線源により、長期連続運転を阻害してきた要因を排し、秒の再定義に貢献するとともに、異種原子の時計遷移の周波数比を長期間にわたり高精度に測定し、基礎物理定数の恒常性検証を行う。
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研究実績の概要 |
現研究課題における主たる分光対象である中性イッテルビウム原子は、2030年頃に想定されている秒の再定義の有力な候補であるのみならず、以下に述べる特性により、基礎物理学への貢献が期待されている。まず、天然には7種類の安定同位体168Yb、170Yb、171Yb、172Yb、173Yb、174Yb、176Ybが存在し、同種原子において異なる同位体の分光研究が実施できること。さらに、荷電子励起ではなく、内殻電子による励起状態が存在することである。特に、近年、波長431nm付近にそのような内殻励起状態が存在することが理論的に予測されていたが、今年度においては、この内殻励起状態をレーザー光により直接励起するとともに、その絶対周波数測定に初めて成功した。この内殻励起状態は電子スピンをもつために、磁場などの環境外乱に対する感度が高く高精度な磁場センサとして機能することが期待されており、現行の光格子時計と同時に運用することにより、in situ条件で環境外乱の影響を補正することにつながり、更なる高精度化が期待される。さらに、この遷移は、微細構造定数の変化に対する遷移周波数変化の感度が中性原子の中では最も大きいことが知られており、従来の時計遷移の周波数との比較により、微細構造定数の時間変化探索に貢献しうる。最近の知見によれば、この微細構造定数の時間変化の要因の一つとして超軽量暗黒物質の存在が予言されており、内殻励起状態のさらなる高精度分光により、暗黒物質探索への貢献も期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、表面状態の良く定義されたイッテルビウムタブレットの作成に成功した。令和5年度は、四重極型質量分析器を調達し、紫外線照射による酸化イッテルビウムの解離に伴う、酸素分子の観測に向けた実験装置の準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、イッテルビウム原子のレーザー冷却捕獲用超高真空装置に、四重極型質量分析器を設置し、酸素分子を観察するとともに、レーザー分光を行うことで生成されたイッテルビウム原子の速度分布を測定するなど、種々の物性評価を実施する予定である。
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