研究課題/領域番号 |
22K04945
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
奥津 哲夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20261860)
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研究分担者 |
堀内 宏明 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00334136)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 表面プラズモン共鳴 / 増強電場 / アミノ酸 / ペプチド / 分離・精製 / 結晶成長 / プラズモン共鳴 / 有機化合物 / 金ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、金粒子に分子が吸着する効果および表面プラズモン共鳴の増強電場によるトラップ作用を用いて分子の濃縮を行い、結晶化が難しい分子の結晶化を行う。金ナノ構造が構築された基板上にアミノ酸やペプチドの溶液を滴下すると液滴の外側の金基板上に結晶が出現することを見いだした。液滴の外側に同心円状に結晶が出現する。滴下する溶液は飽和溶液でなくても結晶化する。光照射を行うと、円周の直径が小さいところで結晶化が起こる。二種類の溶質を混ぜて滴下すると、異なる半径で別々に結晶化する。これらの現象を見出し、結晶化が難しい物質を結晶化することを試み、混合物の分離に応用できる可能性について研究する。
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研究実績の概要 |
本研究は、金粒子に分子が吸着する効果および表面プラズモン共鳴の増強電場によるトラップ作用を用いて分子の濃縮を行い、結晶化が難しい分子の結晶化を行う。金ナノ構造が構築された基板上にアミノ酸やペプチドの溶液を滴下すると液滴の外側のオイル相中の金基板上に結晶が出現することを見いだした。結晶は液滴の外側に同心円状に出現する。液滴中の溶質分子は外側のオイル相に拡散し、金粒子表面に吸着し濃縮されて結晶化したと考えている。さらに、滴下する溶液は飽和溶液でなくても結晶化する。光照射を行うと、円周の直径が小さいところで結晶化が起こる。二種類の溶質を混ぜて滴下すると、異なる半径で別々に結晶化する。これらの現象を見出し、結晶化が難しい物質を結晶化することを試み、混合物の分離に応用できる可能性について研究する。 物質によって結晶化が起こる場所が異なるのは、水相とオイル相での二相間分配平衡と、オイル相と金ナノ構造での吸着平衡が物質により異なるためであることを示す。この平衡定数を変えることにより、別々の場所で結晶化させ、分離・精製が行うことを計画している。 金のナノ構造は、物質を吸着する機能を持つ。ナノ構造のギャップでは表面プラズモン共鳴による増強電場が発生し、光ピンセット効果で分子をトラップする。ギャップで分子がトラップされて濃縮され結晶化が始まると考えられる。 この方法は新しい分離・精製の原理である。今までに合成分野で用いられているカラムを用いた分離・精製では大量の溶媒とシリカゲルが必要であった。この方法は廃棄物を出さず、SDGsな方法である。時代に即した方法として研究を育てる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶が水溶液液滴の外側に同心円状に成長する機構の解明を進めた。水溶液に溶けた溶質は、一部がオイル相に溶け出し水溶液相とオイル相の間で二相間分配平衡を形成する。また、オイル相の溶質は金薄膜に吸着して吸着平衡を形成する。これらの平衡状態をずらすと何が起こるか調べた。平衡をずらすために温度変化の実験を行った。温度を上げると溶質がオイル相に溶けやすくなった。このとき、結晶は液滴の近くに出現した。結晶は二次元核形成により形成されると考えられる。このため、結晶はオイル相中の溶質の濃度が一定の濃度を超えたところで出現すると考えられる。温度が上がり溶質濃度が高くなったため、液滴の近くの溶質の濃度が高くなったためと説明された。溶質が混合した溶液から溶質が別々の場所に析出して結晶化するのは、溶質ごとに二相間分配平衡の平衡定数が異なるためであり、さらに金薄膜との吸着平衡の定数が異なるため、二次元核形成が起こる場所が異なるためであることが判明した。 本年の後半に共同研究先の企業からHPLCを譲渡してもらったた。この装置を使って異なる場所に析出した結晶が別々の溶質であることを示す段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
どのような化合物でこのような現象が起こりやすいのか調べる。溶媒Ⅰ(水)/溶媒(オイル)の系の溶質濃度(溶解度)と分配係数に関係があると考えている。この現象は水に溶けている溶質がオイル相に溶出するものの、その溶解度が極めて低く、拡散中に金粒子に吸着することからおこると考えている。どのような化合物を用いればモデルとして説明できるか検討を進める。 核酸オリゴマーの結晶化に使えるか検討する。複数の企業の製薬業界の研究者がこの現象に興味を示した。製薬分野では薬剤を合成した後品質を保つために、結晶化して保管する必要があり、常に優れた結晶化法の出現が期待されている。例えば糖のオリゴマーは結晶化しにくい。また、新型コロナウイルス用ワクチンとして用いられているmRNA は数十残基の核酸が重合したオリゴマーであり、その安定性が低く問題となっている。これを結晶化すれば安定に保管することができると期待されている。我々の実験で試しに核酸が2 個のオリゴマーで実験したところ結晶化した。残基の数を増やしてゆきながら結晶化実験を進める。最終的にRNA、DNA の結晶化を試みる。 混合物の分離・精製法として可能性を検討する。グリシンとフェニルアラニンを混合した溶液で実験したところ、別々の円周上で結晶が出現した。図5に結果を示す。外側がグリシン結晶、内側にフェニルアラニン結晶が出現した。シスチンを用いると不純物のシステインが分離して出現する。このように別々の場所で結晶化が起こることことからクロマトグラフと似た機能が期待できる。この機構は溶質のオイル中での空間分布と金との吸着平衡の定数が異なるため結晶化する場所が溶質ごとに決まった値になるのだと考えられる。この方法による分離・精製は、廃棄物を出すことがないのでグリーンケミストリーとして発展できることを示唆している。
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