研究課題/領域番号 |
22K04952
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
尾沼 猛儀 工学院大学, 先進工学部, 教授 (10375420)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 超ワイドギャップ半導体 / 酸化物半導体 / アイソエレクトロニックトラップ / ミスト化学気相堆積法 / 真空深紫外光 / MSM型真空紫外線センサー / フォトルミネセンス励起 / カソードルミネセンス |
研究開始時の研究の概要 |
超ワイドバンドギャップ酸化物半導体におけるアイソエレクトロニックトラップ制御により、150 nmから210 nm帯の真空紫外(VUV)、深紫外(DUV)域での発光の実現を目指す。MgOへのZnやSなどの希薄ドープ膜や、Al2O3やGa2O3へのBやIn、Sなどの希薄ドープ膜は、ミスト化学気相堆積装置により成膜する。真空・深紫外分光システムにより、VUVからDUV域での発光スペクトルを観測し、超ワイドギャップ酸化物半導体材料におけるアイソエレクトロニックトラップ制御と光物性解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、超ワイドバンドギャップ酸化物半導体におけるアイソエレクトロニックトラップ制御により、150 nmから210 nm帯の真空紫外(VUV)、深紫外(DUV)域での発光の実現を目指している。今年度の成果の詳細を以下に記す。 1. 岩塩構造MgZnO混晶薄膜の成長において、不均一な混晶組成によるストークスシフトが190 nm以下での発光波長制御の妨げになっていた。解決策として成膜後の徐冷による熱歪み低減を導入し、室温で180 nm台での発光を実現した。 2. 2系統のミスト原料を同時または交互に供給できるシステムを構築し、量子井戸構造の製作を行った。 3. Al, Ga, In不純物を添加したMgO試料の光物性評価を行った。手法として新たにフォトルミネセンス励起スペクトル測定を導入した。III族不純物を添加すると、補償欠陥としてMg空孔やMg空孔とIII族不純物が複合したアクセプター型欠陥が導入され正孔捕獲中心として働くことが分かった。また、無添加岩塩構造MgZnO薄膜の光物性評価を行った。その結果、MgOと同様に、II族空孔やII族空孔とAlが複合した正孔捕獲中心が関与する発光が観測されることが分かった。 4. 時間分解フォトルミネセンス測定を行った。極低温で観測した減衰信号には、速い寿命成分と極めて遅い寿命成分が観測され、アイソエレクトニックトラップの存在を実証する結果が得られた。 5. MSM型真空紫外線センサーを製作し、受光感度を定量評価した。反射スペクトルとの比較から、受光感度スペクトル形状には、RS-MgZnOにおけるΓ点での直接遷移に起因する励起子遷移や裾状態が反映されることが分かった。量子効率は最大で101%だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、超ワイドバンドギャップ酸化物半導体におけるアイソエレクトロニックトラップ制御により、150 nmから210 nm帯の真空紫外(VUV)、深紫外(DUV)域での発光の実現を目指している。ミスト化学気相堆積法による結晶成長と光物性評価から可能性を模索する中で、原料供給系を拡張し、積層膜の成長が可能になった。また、熱シーケンスを見直すことで、岩塩構造MgZnO混晶薄膜の混晶組成揺らぎの低減と発光波長の短波長化にも成功している。岩塩構造MgZnOにおいてZnOの混晶化によりアイソエレクトロニックトラップが形成されることを裏付けるデータが得られる中、Al, Ga, InなどのIII族不純物の添加が、補償欠陥としてMg空孔や、Mg空孔とIII族不純物が複合したアクセプター型欠陥を形成し正孔捕獲中心として働くことも明らかになった。さらに、当初の目的であった、単にVUV、DUV域での発光を得ることに留まらず、同波長域での発光デバイス実現に向け、Al, Ga, Inなどの不純物添加によるn型伝導性制御の試みや、MSM型真空紫外線センサーの製作に取り組むことができたことは、計画以上の成果を挙げたと考えることができる。以上より、「当初の計画以上に進展している」と自己評価します。
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今後の研究の推進方策 |
岩塩構造MgZnOを含めイオン結合性の大きな結晶で発光波長を制御するためには、アイソエレクトロニックトラップを含めたホール捕獲中心の振舞いを理解することは重要である。今後も、成膜ならびに光物性評価を継続するが、VUV、DUV域での発光デバイス実現に向けた取り組みも実施する。具体的には、下記の方策を計画している。 1.構築済みの積層膜成長用の原料供給系を用い、岩塩構造MgZnO/MgO量子井戸構造の形成を継続して行う。周期性、井戸層の厚さや組成を変化させた量子構造を製作し、構造特性や光学的特性の変化を検証する。フォトルミネセンス励起スペクトル測定から遷移エネルギーを求め、キャリアの閉じ込め効果について検証する。 2.Al, Ga, In不純物を添加したMgOおよび岩塩構造MgZnO薄膜の成長をさらに推し進め、抵抗率の低減を試みる。具体的には室温の抵抗率100 Ω・cm以下を目指す。 3.Li不純物を添加したMgOおよび岩塩構造MgZnO薄膜の成長を行い、抵抗率の低減を試みる。具体的には室温の抵抗率100 MΩ・cm以下を目指す。 4.上記1~3の量子井戸試料、Al, Ga, In不純物、Li不純物添加試料の光物性評価を行い、岩塩構造MgZnOにおけるユニバーサルな光物性モデルを構築する。
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