研究課題/領域番号 |
22K04967
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 真至 神戸大学, 工学研究科, 名誉教授 (50107348)
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研究分担者 |
藤井 稔 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00273798)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | Fano共鳴 / 光学応答 / 多層膜 / 近接場 / 励起子 / Fano共鳴 / 近接場応答 / 多層膜系 / 局所場 |
研究開始時の研究の概要 |
通常、ナノ構造のFano共鳴は、far-field光学応答に現れる。しかし、Fano共鳴発現の根本的な原因は、局所場や近接場の特異な振舞いにあると指摘されているものの、観測が困難なことから、研究されてこなかった。本研究では、対称性の高い平面導波路多層膜系やコアシェル多層膜球形粒子、或いは対称性の低いナノ構造に対して、厳密な電磁気計算、あるいは数値計算を通じて局所場、近接場の振舞いを明らかにし、実験的検証を経て、局所場、近接場のレベルでFano共鳴発現のメカニズムを解明する。さらに、局所場、近接場に特有の振舞いを応用した、局所場、近接場のみで動作するデバイスの提案を行う。
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研究実績の概要 |
本年度はFano共鳴を示す多層膜系の特異な光学応答を解明するために、以下の研究を推進した。 (1)励起子遷移を伴う球形ナノ粒子で発現するFano共鳴:昨年度までのMie散乱理論に基づく球形ナノ粒子の光学応答に関する数値計算を、光の散乱、吸収、減光スペクトルのみならず、球粒子内部の局所電場の振舞いにまで拡張して行い、局所電場のスペクトルを詳細に検討した。その結果、吸収スペクトルがLorentz型の対称形状を示すのにもかかわらず、散乱、減光スペクトルは非対称なFano形状を示すこと、また、局所電場のスペクトルもFano形状を示すことが明らかになった。もともと励起子物質の誘電関数は、共鳴を示さない背景誘電率と励起子遷移を反映したLorentz型の応答との足し合わせであらわされる。Fano共鳴は、背景誘電率の生み出すブロードな応答と励起子遷移を反映したシャープな応答の干渉効果により現れることが、結論された。光学応答、局所電場ともに、粒子サイズが光の波長に比べて十分に小さい場合(静電近似)のみならず、静電近似が破れた粒子サイズでもある限界サイズ以下であれば、Fano形状を示すことが解析的、数値的な検討により示された。 (2)励起子遷移層を含む多層膜構造で発現するFano共鳴:上記の励起子遷移を伴う球形粒子でのFano共鳴の発現にヒントを得て、平面膜構造でのFano共鳴の発現の探索に着手した。その結果、単純な媒質/励起子層界面での反射スペクトル、基板上に配置した励起子層の反射、透過スペクトル、プリズム底面に配置した励起子層のATRスペクトルいづれにも、非対称Fano形状が発現することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
球形ナノ粒子でのFano共鳴の発現メカニズムを明らかにすることにより、従来の平面多層膜構造でのFano共鳴の特異性を浮かび上がらせることができた。平面多層膜構造でのATRスペクトルでは、あくまでもFar-fieldのスペクトルが観測されるが、ATR配置の特異性により、物理的には多層膜構造内の近接場によって決定される吸収スペクトルの観測に他ならない。従って、従来平面多層膜構造で観測されてきたFano共鳴は近接場のFano共鳴に他ならない。しかし、励起子遷移を示す球形ナノ粒子では、近接場(粒子内部局所場)はFano共鳴を示すのにもかかわらず、吸収スペクトルはFano共鳴を示さない。Far-fieldでのFano共鳴は、2つの異なるFar-field成分間の干渉により生じ、近接場のFano共鳴とは必ずしも一致しない。励起子層を含む平面多層膜構造でも、近接場とFar-fieldのFano共鳴は別物になり、従来の多層膜構造でのFano共鳴とは様相が異なってくる。このようなことを通じて、同じFano共鳴でも、近接場のかかわり方が大きく異なっていることが明らかになって来た。
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今後の研究の推進方策 |
(1)励起子遷移を示す物質系のナノ粒子系、平面多層膜系等、実現可能な系を想定し、近接場、Far-fieldにおけるFano共鳴を発現する系をさらに探索するとともに、Fano共鳴発現のメカニズムを詳細に明らかにする。 (2)従来の表面プラズモン‐導波モード結合系、導波モード‐導波モード結合系で示されている屈折率センサーへの応用例にならい、特に励起子遷移を示すナノ粒子系、平面多層膜系のセンサー応用について、感度、性能指数等の評価を行う。 (3)研究対象としてきたFano共鳴を示す様々なナノ構造について、近接場およびFar-fieldでのFano共鳴発現のメカニズムを相互に比較し、それぞれの共通点、特異性を明らかにし、光学デバイスへの応用の適否について検討する。
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