研究課題/領域番号 |
22K04974
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉田 周平 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10632606)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 光回折トモグラフィ / ディジタルホログラフィ / バイオイメージング / ラベルフリー / ホログラフィ / トモグラフィ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ディジタルホログラフィにトモグラフィの手法を応用した光回折トモグラフィにより,病理組織診断や細胞の形態学的特性評価などに応用可能な,高精度な3次元バイオイメージングを実現することを目的とする.光回折トモグラフィはディジタルホログラフィと比較して光軸方向の分解能が高く,細胞の内部器官や代謝活動などの生物物理学的パラメータと相関した3次元屈折率分布を再構成できるため,臨床応用や細胞生物学などへの幅広い応用展開が期待できる.
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研究実績の概要 |
光回折トモグラフィによる3次元屈折率分布の再構成は,散乱波から散乱ポテンシャルを求める逆散乱問題の一種である.逆散乱問題の解法には,散乱モデルに基づいた数値最適化の手法が必要であり,従来は取扱いが簡単な単散乱モデルが広く用いられてきた.しかしながら,単散乱モデルに基づいたアルゴリズムは厚みのある試料や高屈折率の試料には適用できず,光回折トモグラフィの応用展開への制約となっている. そこで本研究では,多重散乱モデルに基づいた再構成アルゴリズムを開発に取り組んだ.散乱波から散乱ポテンシャルを再構成するためには,散乱ポテンシャルから散乱波を求める順モデルと,散乱波とその推定結果から散乱ポテンシャルを求める逆モデルが必要である.本研究では順モデルとして,修正ボルン級数による多重散乱の計算アルゴリズムを実装した.修正ボルン級数ではダンピングファクターを導入することにより,ボルン級数(高次ボルン近似)で問題となる数値解の発散が抑えられる.逆モデルは数値解と観測結果の二乗誤差を最小化する最適化問題として定式化した.最適化問題の数値解法としては近接勾配法を採用し,3次元の全変動(TV)正則化を用いることで,ノイズへの過剰適合を防ぎつつ解像度の向上を図った. 多重散乱モデルは高密度・高屈折率の試料に適用可能であることに加え,後方散乱の影響をモデルに取り込むことで分解能を向上させることができる.提案手法による屈折率分布の再構成結果を従来の単散乱モデルに基づく結果と比較すると,二乗平均平方根誤差において50%程度の改善が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主として多重散乱モデルに基づいた3次元屈折率分布の再構成アルゴリズムの実装に取り組み,シミュレーションによる精度評価を行った.実装した再構成アルゴリズムによる結果を従来のフーリエ回折定理を用いた結果と比較すると,二乗平均平方根誤差が50%程度低減できており,モデルが有効であることを確認した. 再構成アルゴリズムの核となる多重散乱は修正ボルン級数により定式化し,3次元高速フーリエ変換(3D-FFT)を基盤としたフォワードソルバーを実装した.修正ボルン級数ではダンピングファクターを導入により,ボルン級数で問題となる数値解の発散が抑えられる.散乱波から散乱ポテンシャルを求める逆問題ソルバーは,フォワードソルバーによる数値解と観測結果の二乗誤差を最小化する最適化問題に基づき実装した.逆問題ソルバーのアルゴリズムとしては近接勾配法を採用し,過剰適合を防ぐ正則化として3次元全変動正則化を用いた. 実装したアルゴリズムはシミュレーションにより評価を行った.シミュレーションでは誘電体球による散乱波から3次元屈折率分布を再構成し,その精度を評価した.光回折トモグラフィにおける再構成アルゴリズムとして広く用いられているフーリエ回折定理を用いた手法と比較すると,二乗平均平方根誤差において50%程度の改善が認められた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の課題として,複雑な屈折率分布を有するサンプルを対象として,シミュレーションによる提案手法の精度評価に取り組む.あわせて,提案手法の有効性を実験的に検証する.実験では,ディジタルホログラフィック光学系によりサンプルからの散乱波の複素振幅を取得し,提案手法によりサンプルの3次元屈折率分布を再構成する. 本研究では,ディジタルホログラフィック光学系として,高解像度と高速測定を両立可能な並列位相シフト法を採用する.また,レーザービームのステアリングには空間光変調器を用いることで,機械的可動部のない光学系を構築できる.
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