研究課題/領域番号 |
22K04985
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2023) 京都大学 (2022) |
研究代表者 |
義家 敏正 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 客員研究員 (20124844)
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研究分担者 |
西村 智朗 法政大学, イオンビーム工学研究所, 教授 (80388149)
木野村 淳 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (90225011)
堀 史説 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20275291)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | パルス照射 / 照射損傷 / 原子力材料 / イオン照射 / 電子照射 / 陽電子消滅分光法 / 透過電子顕微鏡法 / 格子欠陥 / 反応速度論 |
研究開始時の研究の概要 |
材料照射損傷の研究のためにイオン照射実験が数多くなされている。。高エネルギーの高周波加速器では、多くの場合ON/OFFを繰り返すパルスビームが照射される。パルス照射と連続ビーム照射の差異は明白てない。 本研究では、反応速度論に基づき、照射欠陥の形成・成長を微分方程式にして数値解を求めるシミュレーションと、電子線型加速器とタンデム加速器を用いたパルス照射実験により、金属の照射損傷構造に及ぼすパルスビームの持続時間や周期の影響を実証し、損傷構造発達機構を解明する。
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研究実績の概要 |
放射線下で用いられる材料の照射損傷の研究に、パルスビームが良く使われる。ON/OFFが連続するパルスビームと、連続ビームとの間で損傷構造に差が有るか無いか、もし有れば、照射モード(パルスの周期やパルス継続時間)により欠陥生成に差が有るかどうかは重要である。本研究は、反応速度論に基づき、照射欠陥の形成・成長を微分方程式にして数値解を求めるシミュレーションと、電子線型加速器とタンデム加速器を用いたパルス照射実験により、金属の照射損傷構造に及ぼすパルスビームの持続時間や周期の影響を検証し、そのメカニズムを解明することである。 試料としては純度99.99%のFeとNiを用いた。法政大学イオン工学研究所では、セルフイオン照射を加速電圧2MV、試料温度300℃で行った。京都大学複合研では9MVの電子線型加速器を用いて、パルスの継続時間5マイクロ秒、10Hzと100Hzと周波数の異なる条件でのパルス照射実験を行った。照射後特性試験として陽電子消滅分光法による欠陥構造の解析を行ったところ、パルス照射の周波数の違い(電子)、連続ビームとパルスビームの違い(イオン照射)により有意義な差が検出された。 反応速度論に基づく解析のためのコードはほぼ完成した。それを用いたシミュレーションを開始し続行中である。実験結果も含めて、これらの成果は日本金属学会の講演会で1件、他の研究会と国内シンポジウム及び国際シンポジウムで1件ずつ発表した。特に国内シンポジウムの発表内容はそのプロシーディングスで公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料の照射損傷に及ぼすパルス照射の影響を調べるために、電子線型加速器とイオン加速器でパルスの周波数を変えて照射を行った。照射後特性試験で残存するボイド中に存在する点欠陥の量を求めた。また、反応速度論に基づくシミュレーションを行い実験結果と比較した。照射実験としては、京都大学複合原子力科学研究所の電子線型加速器で、純Fe試料(4N)と純Ni試料(4N)を照射温度300℃と水冷状態(90℃)でパルス発生周波数を10Hzと100Hzと変えて、パルス持続時間5マイクロ秒で照射した。その後、Na-22を用いた陽電子消滅寿命測定法で解析した。また、法政大学のタンデム加速器では、Fe試料とNi試料にそれぞれのセルフイオンを連続ビームと周波数を変えて300℃で行った。照射試料を京都大学原子炉(KUR)付属の低速陽電子ビームシステムを用いて陽電子の消滅寿命を測定し、照射量を評価した。 京都大学複合原子力科学研究所の電子線型加速器で300℃照射したNi試料の陽電子寿命の測定結果では、欠陥成分とマトリックスでの自由消滅の成分が分離できず、二つの成分の平均的な寿命しか得られなかった。しかし、FeもNiも2つの照射条件では誤差範囲を越えるような陽電子寿命の差が見られており、欠陥の量あるいは構造に差があることが示唆された。イオン照射試料でも、連続照射とパルスビームの照射結果において差が見られた 以上シミュレーションや今回の照射実験では、損傷状態はイオンビームのパルス周波数に依存するという結果が得られた。2024年度は追加の実験を行い更にパルス効果を確認すると共に、損傷構造発達過程の解析を行い、どのような場合にその影響が大きいかを明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の照射実験は予定どおり行うことができたが、問題点も明らかになった。京都大学複合原子力科学研究所における電子照射実験では、照射量が少なく、陽電子消滅分光法測定結果は誤差がかなり大きいことが判明した。そのため今後は照射量を増やす予定である。2024年度は共同利用申請を行い、2回の照射を行うマシンタイムを得ている。 法政大学イオン工学研究所でのイオン照射試料の低速陽電子ビーム測定では、試料のサイズが陽電子のビーム径に比べて小さく、精度の良い測定ができなかった。現在のφ5mmの試料サイズをφ15mmにする予定である。そのために新たに試料の作製、圧延と打ち抜き及び焼鈍を行う。 反応速度論に基づく損傷構造形成のシミュレーションでは、基本的なコードの作成がほぼ終了した。しかしパルス照射による損傷導入を、時間に対してフーリエ級数展開した形で取り入れているが、非常に収束が悪く、時間が掛かることが判明した。今後何らかの工夫が必要である。コードの改良後は、様々な場合の照射損傷構造発達に及ぼすパルスモード依存を計算する予定である。また実験条件に見合うシミュレーションを行い、実験結果の解析を行う。 照射後特性試験としては陽電子消滅分光測定を行う。電子照射試料は通常のNa-22を用いたバルク状態の陽電子消滅寿命測定を行う。イオン照射した試料は、低速陽電子ビームによる表面近傍の欠陥量の測定を行う。これはイオン照射の欠陥生成が、表面から500nm近傍にビークであることによる。測定後の試料は電解研磨により薄膜化して、透過電子顕微鏡観察を行い、欠陥の直接観察結果とシミュレーションとの比較を行う予定である。
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