研究課題/領域番号 |
22K04991
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
熊谷 友多 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (70455294)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 放射線 / 炭酸 / 水素 / 有機酸 / 地層処分 / 地下水 / 還元 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、地下水への放射線分解の影響を予測するため、炭酸イオンの還元による有機酸の生成反応を明らかにする。地層処分環境で想定される還元性の地下水では放射線分解により炭酸イオンが還元されて有機酸が生成し、放射性核種の移行挙動に影響する可能性がある。そこで、地層処分環境で想定される水素溶存条件、メタン溶存条件での放射線化学反応を研究する。放射線分解による生成物の分析、反応の直接観測と速度評価、数値計算による反応解析を相互にフィードバックをかけて進め、地下環境において“放射線分解によって、どのような反応過程で、どのような有機酸が作られるのか”を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
放射性廃棄物の地層処分では、廃棄体からの放射線によって地下水の放射線分解が生じることが想定される。地下環境は一般に還元的であり、還元性水溶液中での放射線誘起反応では炭酸イオンが還元される可能性がある。そこで、地下水の放射線分解によって炭酸イオンが還元されて、有機酸が生成する反応について研究を行っている。有機酸は錯形成反応を通じて様々な核種の地下環境での移行挙動に影響する可能性があるため、放射線分解による有機酸の生成可能性を把握しておくことは重要である。今年度は還元雰囲気として水素雰囲気に調整した炭酸塩水溶液の照射実験を行い、生成する有機酸の分析を進めた。イオンクロマトグラフによる陰イオン分析、およびガスクロマトグラフ質量分析計による有機酸分析を実施したが、有意に検出された有機酸はギ酸およびシュウ酸であった。放射線分解に関する数値計算では、炭酸の還元によるラジカルの蓄積とグリオキシル酸やジヒドロキシ酒石酸の生成が推定されているが、これらの生成を示唆する実験結果は得られなかった。そのため、炭酸の還元で生じるラジカルを消費する反応の存在が示唆される。解析により反応経路の推定を行うためには、ギ酸・シュウ酸の生成とpH条件や炭酸濃度、水素分圧の関係についてデータの拡充が必要ではあるが、炭酸イオンの還元反応では炭酸1電子還元ラジカルとその2両体が生成し、2両体化したラジカルの反応については報告が少ないため、このラジカルが消費される反応経路が存在するのではないかと考えられる。次年度以降のメタン雰囲気でのデータ取得し、水素雰囲気での結果との比較検討を進めて行くために、メタン含む混合ガスを調製し、試料の雰囲気を制御するための実験環境の整備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素雰囲気下での有機酸生成については照射実験を順調に進めることができており、並行してメタン雰囲気下での実験の準備も進めているため、概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果から、炭酸の還元によるラジカルの蓄積とギ酸・シュウ酸以外の有機酸の生成を抑制する反応の存在が示唆された。そこで、次年度はより高線量の照射を行い有機酸の生成について分析するとともに、反応解析により実験結果を説明するモデルの構築に取り組む。またメタン溶存雰囲気での照射実験に着手し、水素雰囲気での結果との整合性の観点から反応モデルを考察したい。
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