研究課題/領域番号 |
22K05027
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
細井 晴子 東邦大学, 理学部, 准教授 (00313396)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 蛍光タンパク質 / 時間分解蛍光分光法 / 発光メカニズム / 蛍光寿命 / 会合 / 蛍光異方性 / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 黄色蛍光タンパク質 / 緑色蛍光タンパク質 / 構造緩和 / 高次構造ダイナミクス |
研究開始時の研究の概要 |
生きたまま細胞や個体の可視化(イメージング)を可能にする蛍光タンパク質は、生命科学研究に必須のツールである。様々な機能をもつ蛍光タンパク質が開発され利用されているが、その基礎となる発光メカニズムの理解は限定的である。本研究では、蛍光タンパク質の会合とピコ秒からナノ秒のタイムスケールで起こるダイナミックな高次構造変化が、蛍光寿命を変化させていることを実証する。ピコ秒時間分解蛍光異方性測定により、 最もイメージングに用いられる2種類の蛍光タンパク質eYFPとeGFPの発光メカニズム、ダイナミックな高次構造変化、および、発色団周辺の局所的な構造変化(水素結合ネットワーク)の相関を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
研究代表者は、すべての蛍光タンパク質に共通する発光メカニズム解明を目指している。本研究課題は、広く用いられているオワンクラゲ由来の蛍光タンパク質である黄色蛍光タンパク質eYFPと緑色蛍光タンパク質eGFPの発光メカニズムの共通点と相違点を明らかにすることを目的とする。eYFPとeGFPは238アミノ酸で構成されており、その違いは5アミノ酸のみである。しかし、eYFPでは145番アミノ酸一つが変化するだけで蛍光寿命が大きく変化するのに対して、eGFPでは大きな変化がない。 これまでに、eYFPとeGFPの時間分解蛍光異方性測定により、eYFPでは低濃度でもタンパク質の会合が起こるが、eGFPはeYFPより会合しにくいことが明らかになった。eYFPとeGFPの結晶構造の比較から、5アミノ酸の違いにより、eGFPの発色団周辺には多くの水素結合があり、発色団がバレル内に強く束縛されているのに対して、eYFPでは、発色団周辺の水素結合が少なく、また、より表面の方に移動していることが分かった。発色団の移動方向のベータバレル表面が、会合の界面になっていると考えられ、eYFPとeGFPの会合効率の違いは、界面の違いに起因することが示唆された。また、145番アミノ酸はこの界面近くに位置しており、会合に影響を与えていると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
eYFPとeGFPの会合効率の違いが、5アミノ酸の違いによる界面構造の変化によってもたらされることが明らかになった。この界面構造の変化は、Y145変異体の蛍光寿命の変化などにも影響を与えることが示唆され、今後の研究の方向性を決めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
異方性の時間変化は、発色団の電荷状態の違いによっても変化する。eYFPでは、発色団がアニオン状態である時よりも中性状態である時の方が会合しやすく、光励起により中性状態の発色団を含む高次構造が変化することが示唆されている。発色団の電荷状態は145番アミノ酸の種類によっても変化する。今後は、eYFPとeGFPの発色団の電荷状態と会合の相関を明らかにする。さらに、145番アミノ酸の違いによる寿命の変化と発色団の電荷状態に相関があるのかを明らかにする。最終的に、蛍光寿命をコントロールする要素としてのタンパク質の高次構造の重要性を明らかにする。
|