研究課題/領域番号 |
22K05031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | スピン反転 / 密度汎関数法 / 反応機構 / 反応経路探索 / 反応動力学 / 量子化学 / 触媒反応 / 反経路探索 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,有効ハミルトニアン行列法を反応経路自動探索法と融合させ,スピン反転反応経路自動探索法を開発する.スピン反転は本質的にはスピン状態間の電子的非断熱遷移であるため,その効率はスピン軌道相互作用の大きさによって決定される.しかし,生体反応を初めとする複雑な分子について,スピン軌道相互作用を正確に計算することは事実上不可能である.そこで機械学習を使ったスピン軌道相互作用の予測モデルを構築することを行う.さらにスピン反転を伴う反応の新しい非断熱遷移状態理論の構築を行う.
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研究実績の概要 |
本年度は、アセチレン3分子環化反応によるベンゼン生成の金属触媒として3d遷移金属原子Ti(2価イオン)に着目した。適切な密度汎関数法と基底関数を用いて反応経路の詳細な計算を行った。ここでは以前の研究で用いて氷クラスターやCNアニオンを配位子として計算を行った。その結果、以前に調査したFeおよびVイオン錯体の触媒では、反応途中に必ずバリヤーが存在したが、Ti触媒については、予想に反して全くのバリヤーなしでベンゼン生成まで進行することを見出した。このことはTi触媒ではスピンの反転が起こらないことと関係していることが示唆された。また、本年度は鉄ポルフィリン錯体への酸素分子の吸着についての全自由度を考慮したポテンシャルエネルギー曲面の開発も行った。ポルフィリンの部分については、高速な計算が可能である半経験的電子状態理論(GFN2-xTB法)を利用し、酸素分子の吸着分は独自にポテンシャルエネルギー関数を開発した。この反応系では、酸素分子が錯体に接近する際はスピン三重項であるが、吸着生成物はスピン一重項であるため、それぞれのスピン状態に対応するポテンシャル曲面を作成し、これらの異なるスピン状態間のスピン軌道相互作用を考慮することで、ポテンシャルエネルギー曲面の交差ダイナミクスが十分記述できることを確認した。次年度は開発したポテンシャルエネルギー曲面を用いて、電子的非断熱ダイナミクス計算を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通りに進行しており、最終年度に向けてスピン反転ダイナミクス計算を行う準備も整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは密度汎関数法を用いて反応経路の探索に重点を置いてきたが、今後は実時間の反応シミュレーションに力を入れていく予定である。そのために、超高速半経験的拡張タイトバインディング法(GFN2-xTB法)を使える環境をすでに整えた。GFN2-xTB法と自作したポテンシャルエネルギー曲面関数を組み合わせることで、原子の全自由度を考慮した酸素分子のポルフィリン鉄錯体への吸着ダイナミクス計算が合理的な計算時間で実行できることを確認した。今後は詳細な電子的非断熱遷移ダイナミクス計算を行い、生物の呼吸過程とスピン軌道相互作用によるスピン反転機構の関連について議論することを予定している。
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