研究課題/領域番号 |
22K05043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
岡村 恵美子 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (00160705)
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研究分担者 |
安岐 健三 姫路獨協大学, 薬学部, 助教 (50714945)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 超精密計測 / 生物物理 / リアルタイム解析 / NMR / アミロイド形成 / 細胞輸送 / 膜透過 |
研究開始時の研究の概要 |
創薬を指向して、「生きた」細胞へのペプチドの分配・輸送の非侵襲計測法を確立する。塩基性および両親媒性の膜透過ペプチド (CPP)を対象として、時間分解計測により、細胞への移行をリアルタイムで捉える。フッ素核を用いたNMRで細胞の内外を識別し、ペプチドの結合量を定量する。ペプチドの「結合と解離」、「拡散」、「透過速度」を明らかにする。そのうえで、細胞へのCPPの導入効率の向上とその制御を目指す。さらに、アミロイド形成のNMRリアルタイム計測に方法を展開する。繊維形成に先立つ「初期中間体の捕捉とその動態」を原子レベルで明らかにし、線維化を阻害する新たな創薬のシーズを探索する。
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研究実績の概要 |
1. アミロイド形成初期過程のNMR計測 我々はすでに、アミロイドβ (Aβ)フラグメントにフッ素化アミノ酸を導入してペプチドの特定部位を選択的にラベルし、19F NMRを用いて、ペプチド・タンパク質の部位による会合・凝集挙動の相違をリアルタイムで解析可能であることを見出した。この成果を活用して、令和4年度は、Aβと同様に凝集・線維化を引き起こし、パーキンソン病の発症に関係すると言われるタンパク質・αシヌクレイン71-82フラグメントを用いて、19F NMRで繊維化の引き金となる初期凝集過程の計測および部位による凝集挙動の相違を解析した。特に、αシヌクレイン71-82フラグメント中に4箇所存在するバリン残基に注目した。その結果、線維化に最も密接に関与すると予想されるバリン77残基をフッ素化アミノ酸で置換すると、 初期凝集が著しく抑えられること、C末端のバリン82残基においても、置換により凝集がやや抑えられること、一方で、N末端のバリン71残基では、置換による凝集の抑制が比較的少ないことが明らかとなった。バリン77の置換体が創薬への有効な手掛かりになると期待される。 2. In-cell NMRによる膜透過 すでに我々はペプチドの細胞内輸送のリアルタイム計測を行い、アルギニン、リジンを含む塩基性ペプチドに疎水性のアミノ酸残基を導入すると、19F NMRシグナル強度の減少が観測され、細胞への取り込みが促進されることを見出した。しかしながら、疎水性アミノ酸の導入により細胞毒性が増大することも明らかとなった。このため、本年度は、良好な細胞膜透過性を有し、かつ、毒性の低いペプチド配列の設計をめざして検討を開始した。その結果、細胞毒性を小さくするためのアミノ酸配列を見出した。今後、さらに膜透過性の向上を目指した配列の設計を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アミロイド研究において、αシヌクレイン71-82フラグメントのバリン77の置換体が、初期の凝集を抑える創薬への有効な手掛かりになること、In-cell NMRによる膜透過において、膜透過性を有する両親媒性ペプチドで細胞毒性を小さくするために有効なアミノ酸配列を見出すなど、研究がほぼ計画通りに進展し、おおむね順調な成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に明らかになった凝集挙動の異なるαシヌクレイン71-82フラグメントのバリン置換体を用いて、それぞれの初期凝集過程の相違を分子レベルで解明する。同時に、バリン77置換体がシヌクレインの凝集をいかに抑制するのか、そのメカニズムについてNMRによる分子論的な解析を実施し、創薬に向けた指標とする予定である。
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