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高温有機デバイスに向けた半導体ポリマーの開発と薄膜モルフォロジー変化の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K05047
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分32020:機能物性化学関連
研究機関東京工業大学

研究代表者

芦沢 実  東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80391845)

研究分担者 間中 孝彰  東京工業大学, 工学院, 教授 (20323800)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
キーワード高温有機半導体 / 金属錯体ポリマー / ジチオレン配位子 / 電気伝導度 / 熱起電力 / パワーファクター / 半導体ポリマー / 薄膜構造 / 分光学測定 / 電界効果トランジスタ
研究開始時の研究の概要

高温下で駆動するために冷却を必要とするシリコンテクノロジーと異なり、高温領域においても使用可能な半導体ポリマーを開発する。さらに分光学的手法を用いて、熱によるポリマー鎖の変形に伴う薄膜モルフォロジー変化を精度良く捉える3次元マッピング解析を行い、高温駆動するトランジスタの薄膜構造モデルを解明する。本研究におけるポリマー単体での高温用途を意図したポリマー設計は、未開拓であり独創性がある。また使用温度の高温側への拡大は、熱エネルギー再生デバイスへの展開、さらに軽量化が必須の自動車、航空宇宙産業への応用を見据えている。学術的にも新規に高温有機エレクトロニクス分野を先導する点で意義がある。

研究実績の概要

本研究課題は高温下で安定に動作する有機デバイスを実現する新規な金属錯体ポリマーを開発し、高温下において安定にデバイス駆動するポリマー薄膜のモルフォロジーをモデル化することを目的とする。昨年、合成に成功した鍵となるジチオレン系テトラチアフルバレン配位子を用いて、塩基を用いて保護基であるシアノエチル基を脱保護することによってニッケル錯体ポリマーの合成を行った。ここで種々の塩基及び反応溶媒を検討しナトリウムメトキシド及びカリウムメトキシドを用い、溶媒としてテトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドを用いた場合に化学量論的に理想値に近い硫黄原子とニッケル原子の比となることを見出した。この反応条件を用いて、テトラチアフルバレン骨格にチオフェン及びチエノチオフェンを挿入したジチオレン系配位子からニッケル錯体を同様に作成した。作成した3種類のジチオレン系ニッケル錯体の分解温度を調べた結果、いずれの錯体も200℃においても安定であることが分かった。これらの錯体は有機溶媒に対する溶解性が低かったため、粉末状サンプルを加圧してペレット状のサンプルを作成し、電気伝導率と熱起電力の測定を行った。チオフェン及びチエノチオフェンを挿入したニッケル錯体に比べて、これらの骨格を挿入しないテトラチアフルバレン骨格からなるニッケル錯体は室温で最大で876 S/cmと優れた電気伝導率を示した。また室温での熱起電力の測定からキャリアがホールであることを見出し、熱電変換デバイスの性能指標となるパワーファクターを見積もったところ、比較的良好な~10 マイクロW/mK2の値を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

理由
当初の予定では中心金属としてニッケルの他に、パラジウムや銅を予定していたがニッケル錯体が再現性良く得られたので現在はニッケル錯体のみを評価することとした。またカウンターカチオンとしてナトリウム及びカリウム塩が得られている。したがって3種類のジチオレン系配位子からなるニッケル錯体を合計6種類作成することに成功している。またバッチ依存性のない合成条件の探索にも成功している。本年度は室温における電気伝導度に加えて熱起電力の測定を行い、テトラチアフルバレンを主骨格とするジチオレン系ニッケル錯体のナトリウム塩で良好な熱電特性を得ている。すでに高温下での電気伝導率及び熱起電力の測定を行う準備はできている。したがって本研究の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

今後は合成に成功したニッケル錯体の電気伝導率や熱起電力のバッチ依存性を調べるとともにカウンターカチオンとして含まれるナトリウム塩及びカリウム塩の違いが輸送特性に及ぼす影響を明らかにする。また酸化還元電位の測定及び紫外可視近赤外吸収スペクトルの測定を行い基礎物性について明らかにする。さらに光電子分光測定を行い錯体の電子状態を調べる。本研究で合成に成功したジチオレン系テトラチアフルバレン配位子は新規分子であるため、同様の測定を行う。またテトラチアフルバレン骨格にチオフェン及びチエノチオフェンを挿入した配位子は構造異性体が存在する。したがって単結晶の作成を試みてX線単結晶構造解析を行い、エネルギー的に安定な異性体の分子構造を求める。本研究で得られた粉末またはフィルム状の錯体は、溶媒に対して溶解度が低く塗布法による成膜が難しい。したがって今後の物性測定はペレットを作成して行う。また微小角入射広角X線散乱法を用いて、ペレットサンプル中のニッケル錯体の分子配向の評価を試みる。本研究は高温下で安定に動作する金属錯体ポリマーの開発を目指しており、室温からニッケル錯体の分解温度付近(200℃)までの温度可変の電気伝導率及び熱起電力の測定を行う。得られた温度変化による挙動を明らかにすることで、熱電デバイスとしての性能を評価する。得られた結果は、配位子設計へフィードバックし構造の最適化を行う。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Thienoisoindigo-based recyclable conjugated polymers for organic electronics2024

    • 著者名/発表者名
      Nozaki Naoya、Uva Azalea、Matsumoto Hidetoshi、Tran Helen、Ashizawa Minoru
    • 雑誌名

      RSC Applied Polymers

      巻: 2 号: 2 ページ: 163-171

    • DOI

      10.1039/d3lp00209h

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Quinoxalineimide-based conjugated polymers: synthesis, characterization and field-effect transistor performance2023

    • 著者名/発表者名
      M. Ashizawa, K. Yaginuma, Y. Hayashi, S. Kawauchi, H. Masunaga, N. Ohta, W. Lee, H. Matsumoto
    • 学会等名
      2023 MRS Spring Meeting, San Francisco, CA, United States, April 10-14, 2023.
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 水素結合部位を導入した伸縮性ナフタレンジイミドポリマーの合成と物性2022

    • 著者名/発表者名
      八木沼克生, 芦沢実, 松久直司, 増永啓康, 太田昇, 松本英俊
    • 学会等名
      第16回分子科学討論会, 慶應義塾大学矢上キャンパス, 令和4年9月19-22日
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] キノキサリンイミド骨格から構成される半導体ポリマーの合成とトランジスタ特性2022

    • 著者名/発表者名
      芦沢実, 長谷川司, 林慶浩, 川内進, 増永啓康, 引間孝明, 太田昇, Lee Wen-Ya, 松本英俊
    • 学会等名
      第16回分子科学討論会, 慶應義塾大学矢上キャンパス, 令和4年9月19-22日
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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