研究課題/領域番号 |
22K05048
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 磁場効果 / 三重項状態 / 有機半導体薄膜 / 過渡吸収 / 過渡光電流 / ドリフト移動度 / スピンダイナミクス / 電子正孔対 / 有機半導体 / スピントロニクス / 光電流 / 時間分解分光 |
研究開始時の研究の概要 |
有機半導体薄膜は軽量で安価かつ環境負荷が低く簡便に作製できることから、太陽電池やLEDなどへの応用が期待されているが、無機半導体と比べて電気が流れづらいなど不利な点が多く、メカニズム解明のための基礎研究が重要である。本研究では有機半導体中を流れる電子が磁石としての性質(スピン)を持っていることに注目する。有機半導体の中で生じた電子の「数」と「動きやすさ」をリアルタイム観測できる独自の先端計測装置を用いて、電子がどれだけ生まれ、どのように動いて、無くなっていくかを磁気的に制御する機構を解明する。ここから無機半導体に匹敵する、または無機半導体では実現できない技術創生のための知見を得る。
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研究実績の概要 |
有機半導体薄膜の光スピントロニック制御へ向けた基礎研究を行った。PTB7:PC71BMバルクヘテロ薄膜を用いた有機薄膜太陽電池は、比較的高効率であることが報告されている。PTB7:PC71BM薄膜の光照射によって生じる電荷に関して、吸光度(電荷濃度に比例)と電流(電荷の濃度と流れやすさに比例)の時間変化を同時計測する独自の先端装置を用いた研究を行った。短寿命中間体の電子スピンを磁場によって制御し、その効果を観測したところ、吸光度、光電流ともに10%程度増大したことから、電荷の濃度が磁場により増大することが明らかになった。つまり、スピントロニック制御により、太陽電池の発電効率をさらに高効率化できる可能性が強く示唆された。 PTB7:PC71BM膜の電荷濃度に対する磁場効果は、PTB7単膜に対する磁場効果の報告例とよく一致した。また、磁場効果のは比較的高磁場で飽和し、従来の電子正孔対再結合(電子と正孔がくっついて消滅すること)に対する磁場効果では説明できなかった。ここから新規な磁場効果機構として、PTB7高分子に生じる短寿命励起三重項状態のスピン副準位選択的な失活に対する磁場効果が考えられる。すなわち、有機薄膜太陽電池において従来は無視されてきた三重項状態経由の電荷生成経路の存在を強く示唆している。三重項状態のスピントロニック制御に基づく太陽電池高効率化は全く新しい制御指針であり、磁場効果の詳細な機構解明が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実際に太陽電池に用いられている材料においてスピントロニック制御に成功したことは、頭書の計画以上の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
吸光度-電流同時計測を用いた検討を継続し、温度依存性測定等から磁場効果の詳細な機構解明を行う。また、時間分解EPRやフェムト秒過渡吸収などを用いた多角的測定から、スピントロニック制御の鍵となる三重項状態に関して、詳細な検討を行う。これにより、高効率化に向けた指針を得る。
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