研究課題/領域番号 |
22K05050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅原 武 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (20335384)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | クラスレートハイドレート / 潜熱蓄熱材 / プロトン伝導 / 電気伝導 / イオン伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
セミクラスレートハイドレートは、アンモニウム塩などの電解質から生成するためイオンハイドレートとも呼ばれる包接水和物の一種である。大気圧下で生成することが可能で、カチオンやアニオンの選択によって相変化温度を変化させることができるため、潜熱蓄熱材料として期待されている材料の1つである。 本研究課題では、潜熱蓄熱材料として産業利用する際に必要不可欠なモニタリング技術開発のため、セミクラスレートハイドレートのもつイオン伝導性について研究を展開し、固体電解質としての特性・機能を明らかにする。
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研究実績の概要 |
セミクラスレートハイドレート(SCH)は潜熱蓄熱材料として期待されている材料の1つである。本研究課題では、昨年度に引き続き、SCHの生成モニタリング技術の開発を目指し、SCHの基礎的な電気化学的物性および特性、機能を明らかにする研究に取り組んだ。 昨年度の成果で、臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB) SCH結晶を構成する水分子間をプロトンがホッピングする、すなわちプロトン伝導がSCH結晶内で起きていることを実験的に確認した。本年度は、テトラブチルアンモニウムイオンをカチオン種として固定し、ハロゲン化物イオンをアニオンとする各種SCH単結晶を電極間に調製し、結晶粒界の影響など別要因を排除したSCH結晶内の電気伝導性を測定した。結果、アニオンによって電気伝導度が大きく異なり、とくにハロゲン化物イオンの中で、フッ素アニオンを用いた場合に、電気伝導度が小さくなった。そこで、SCH結晶内の水分子のダイナミクス、特にアニオン種と水分子の相互作用に注目して、SCHを構成するアニオン種がプロトン伝導にどのように影響するのか、研究に注力した。これらの結果から、水分子とハロゲン化物アニオン間の相互作用にともなう水分子のダイナミクスの変化はプロトン伝導にわずかに影響するものの、アニオンによって電気伝導度が変化する主要因は、水溶液内からSCH結晶へ生成する際にSCH内に取り込まれるプロトン量であることを明らかにした。得られた成果は、原著論文で本年度も複数報発表した。 また、ハロゲン化物イオン以外のアニオンを用い調製した各種SCHにおいても同様に、電気伝導性を測定し、ハロゲン化物イオンで得られた研究成果との整合性を確認するため研究を継続している。今後、モニタリング技術だけでなく、プロトン伝導性を活かした技術への展開も視野に入れ、研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハロゲン化物イオンをアニオンとするテトラブチルアンモニウム塩を用いて、セミクラスレートハイドレート(SCH)単結晶を調製し、アニオン種によって大きく変化する各SCH結晶内の電気伝導性を明らかにした。SCHの結晶骨格をになう水分子の間をプロトンが移動していくプロトン伝導により固体内を電気が伝導しているが、そのメカニズム、アニオン種がどのように電気伝導性に影響しているのかを明らかにした。特に、水分子のダイナミクスについて、中性子準弾性散乱測定(QENS)によりハロゲン化物イオン周囲の水分子のダイナミクスを、NMRによりバルク結晶内の水分子の平均的なダイナミクスを測定した。これらの成果は、原著論文誌上で発表した。 ハロゲン化物イオンだけでなく、カルボン酸イオン、無機イオンなどSCHを構成する異なるアニオン種についても、順調に測定を進めており、来年度中に論文投稿を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、カルボン酸イオン、無機イオンなど異なるアニオン種を有するSCHのプロトン伝導性の違いについて精査を完了し、伝導性に対するアニオン種の影響について総合的に考察したい。また、モニタリング技術で必要となる単結晶体と多結晶体の違いなどについても測定を行う。特に、多結晶体の結晶粒界の効果、アニールによる変化などに注目する。 また、本年度の研究によって明らかにした高いイオン伝導性を利用することを考え、環境親和性が高く、ハンドリングが容易な、より高いプロトン伝導度を有するSCHの開発へとつなげたい。 これら得られた研究成果を、論文誌上、国際会議、国内学会などで積極的に発信していく予定である。
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