研究課題/領域番号 |
22K05061
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
一戸 雅聡 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271858)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 有機ケイ素化合物 / ケイ素-ケイ素三重結合化合物 / ジシリン / ヒドロシリル化反応 / 高周期典型元素 |
研究開始時の研究の概要 |
比較元素論の観点から、基本的な有機化合物の構成元素を同族の第3周期以降の高周期元素に置き換えた化合物の化学が展開されており、その構造や反応性には類似性と共に著しい差異も認められている。本研究では、アルキン(炭素-炭素三重結合化合物)の骨格元素を同族高周期元素であるケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛に置き換えた高周期典型元素三重結合化合物などの合成を行い、その構造や物性、反応性の解明を行う。
|
研究実績の概要 |
筆者らが世界に先駆けて合成、単離、構造解析に成功したケイ素-ケイ素三重結合化合物ジシリンはトランス折れ曲がり構造を持ち、直線構造を持つ炭素-炭素三重結合化合物とは構造化学的にも、反応化学的にも大きく異なっていることを明らかにしてきた。特に、B-H、N-Hなどのヘテロ元素-水素の結合を有する有機小分子がジシリンに1,2-付加して、対応するヘテロ元素置換基と水素が結合したケイ素-ケイ素二重結合化合物ジシレンを与える反応は、ジシリンの反応性として興味深いのみならず、従来法では合成が困難なヘテロ元素置換ジシレンの合成法としても有用である。 本年度は、継続的に行っているジシリンの新規な反応性の開拓を目的として、Al-Cl、Si-Clなどの高周期典型元素ハロゲン化物との反応を検討した。その過程で、クロロジメチルシラン(ClMe2Si-H)のSi-H結合がジシリンに1,2-付加して、水素およびクロロジメチルシリル基が結合したジシレンを与えることを見出した。炭素-炭素多重結合にSi-H結合が1,2付加する反応はヒドロシリル化反応として知られており、一般的にはSi-H結合の活性化のため白金などの遷移金属触媒を必要とする反応であるが、前述のジシリンに対するヒドロシリル化反応は遷移金属触媒無しで進行する特異な反応である。基質であるヒドロシラン、反応条件を詳細に検討した結果、ヒドロシランのケイ素上にハロゲン(塩素)が必須であり、配位性溶媒中でのみ進行する反応であることが分かった。反応機構の詳細は検討中であるが、ジシリンは極めて低い軌道準位の非占有軌道(LUMO)を持つことから、ジシリンの一方の三重結合ケイ素に配位性溶媒が求核的に配位して生じるジシレニド種が、電子不足なヒドロシランケイ素原子に求核攻撃し、次いで水素移動が起こることで、ジシリンに対するヒドロシリル化反応が進行していると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)新規なケイ素三重結合化合物の合成と構造に関する研究、(2) ケイ素三重結合化合物の反応性および得られるケイ素多重結合化合物の構造、反応性に関する研究 の2つのテーマを掲げているが、本年度は直接研究指導する学生数の都合で、テーマ(2)に関連してケイ素-ケイ素三重結合化合物ジシリンの反応性に関する研究を重点的に行った。その結果、配位性溶媒の関与によるケイ素-ケイ素三重結合へのヒドロシランの1,2-付加(ヒドロシリル化反応)というケイ素-ケイ素二重結合にも見られない新規な反応を見出すことができたことから、おおむね順調に進展できていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度の成果として見出したケイ素-ケイ素三重結合のヒドロシリル化反応に関して、反応機構の研究、ケイ素-ケイ素三重結合のヒドロシリル化で得られる水素とシリル基が結合したケイ素-ケイ素二重結合化合物の構造、反応性に関する研究を展開すると共に、ケイ素三重結合化合物の新規合成法の開拓を進める予定である。
|