研究課題/領域番号 |
22K05067
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
森末 光彦 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (40403357)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ポルフィリン / 近赤外発光 / 結晶核生成 / 励起子 / ビラジカロイド / エキシマー / エネルギーギャップ則 |
研究開始時の研究の概要 |
非晶性ポルフィリンが1000 nmの固体近赤外発光示す発光原理について解明を行う。ポルフィリン金属錯体が分子間でのπ電子と中心金属との間でのπー金属間で相互作用により特異な固体近赤外発光特性を示すという作業仮説に基づき、系統的な分子の合成とそれらの物性評価、ならびに理論計算により上述の目的を達成する。
|
研究実績の概要 |
非晶性ポルフィリンの分子間相互作用が強くなるほど結晶核の生成頻度が低下することによりガラス化しやすいことを明らかにした。ポルフィリン環が約1 nm程度のサイズであり、これは最小の結晶層のサイズに近いことから、分岐アルキル基を導入したポルフィリン環の中心金属の違いを鋭敏に反映して、バルクのモルフォロジーを制御できたと考えている。このことにより、分岐アルキル基を導入したポルフィリンのπ電子系を連結することにより分子間相互作用を大きくすることにより、結晶化は阻害されてガラス化する。その一方で、分子間相互作用を増幅すると超分子構造の形成も同時に促進され、ガラス状態でありながら周期秩序も併せ持つ構造を形成することが明らかとなった。これらの挙動を溶液中の会合体形成の熱力学的因子と微小角入射X線散乱測定から観察を行った。また複数の系統的な非晶性ポルフィリンの合成を行い、これらの固体近赤外発光特性の評価を共同研究を通じて実施することで、発光種の生成に至る励起子ダイナミクスの解明に迫りつつある。 このほか、非晶性ポルフィリンを構成ユニットとしたπ共役ポリマーが金属光沢を示す自立膜「ポルフィリンホイル」となり、この時の金属光沢がポルフィリンの強い共鳴吸収による異常分散効果によって屈折率が非常に大きくなることに由来することを確認した。この時の反射スペクトルは、屈折率と消衰係数を基板にドルーデモデルを基盤とする理論的に再現できた。このことはポルフィリンホイルの電子が金属の自由電子のような振る舞いを示す可能性を示しており、実際に電子スピン共鳴測定により自由電子の存在を確認した。この自由電子の生成は、狭バンドギャップポリマーに置いてπ共役主鎖のベンゼノイドーキノイド共鳴において、両端に生成する一重項ラジカル対が熱的に三重項ラジカル対になるビラジカロイドとして解釈して矛盾がないことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非晶性ポリフィリンが固体近赤外発光を示す動作原理について、構造と機能の関係性を解明するという視点から研究を進めた。この結果、特に通常結晶性の高いポルフィリンが非晶質になる分子動作原理を解明することができた。このことから自在な非晶質材料の設計が可能になった。加えて共同研究により、非晶性ポルフィリンにおける励起子ダイナミクスが明らかになりつつあり、この点で大きな進歩があった。
|
今後の研究の推進方策 |
非晶性ポルフィリンに関して、膨大な実験的観察結果を積み上げてきた。最終年度に当たる本年度は、これらの体系的な解析を行う。特に理論化学計算によりこれらの論理的な裏付けをすることにより、構造と機能の関係性を解明することができると考えている。特に励起状態での分子間相互作用により発光波長が長波長化することに関して、ポルフィリンの中心金属である亜鉛の近傍に、隣接分子のπ電子系が存在することによる金属ーπ相互作用の観点からの考察を試みる。
|