研究課題/領域番号 |
22K05077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鶴巻 英治 東京工業大学, 理学院, 助教 (00772758)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アントラセン / ヘリセン / サーキュレン / 超短水素ー水素接触 / 高歪み化合物 / 環状化合物 / 立体圧縮効果 / 大環状化合物 / 多環式芳香族炭化水素 / 環化異性化 / 超分子 / 芳香族化合物 / ナノマテリアル / 分子内環化反応 |
研究開始時の研究の概要 |
新規π共役骨格を持つπ拡張サーキュレン類縁体を合成し、その構造と性質に関する基礎研究を行う。カップリング反応を用いて合成したアントラセンを基本ユニットにもつ環状前駆体に対し、分子内に導入したアルキン置換基の分子内環化異性化反応を行い、π拡張[8]サーキュレンをはじめとする種々の新規π拡張サーキュレン化合物を合成する。種々の分光測定や単結晶X線構造解析、電気化学測定により構造と基礎的な性質を明らかにする。また、内部空孔を利用する小分子やイオン等を包摂の検討や、空孔に由来する特異的な電子構造の考察解明を行い、機能性有機色素、有機半導体としての応用を検討する
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研究実績の概要 |
新規パイ共役骨格を持つパイ拡張サーキュレン類縁体を標的化合物として、合成および構造と性質に関する研究を行った。以前に報告したアントラセンをらせん形に縮合したパイ拡張ヘリセンの合成を応用し、アントラセンを基本ユニットとする大環状化合物を検討した。 3つのアントラセンが縮合したパイ拡張ヘリセンに対し、らせん内部の位置にクロロ基を導入したジクロロ誘導体を合成した。これに対し、Ni反応剤を用いる山本カップリングを施すことで、パイ拡張ヘリセンのらせん両末端を結合した環化化合物を得た。この環化化合物は環内に3つの水素原子を持ち、これらが非常に接近した特異的な構造を持つことを、単結晶X線構造解析により明らかにした。Hirshfeld Atom Refinement法を用いる精密解析により、結晶構造中における水素の位置を解析した結果、この分子内の非結合水素-水素間距離は最短で0.1648 nmとなることが分かった。これは、過去に報告された超短水素-水素接触の報告例の中でも最短に近い値であり、特に芳香環上に位置する水素同士の接触距離としては我々の知る限り最短の例である。また、赤外分光および量子化学計算により、水素同士の異常接近により、C-H伸縮振動が大きく高波数シフトすることを確認した。 また、上記の合成法を利用し、3つのアントラセンが縮合したパイ拡張ヘリセンの合成も行った。単結晶構造解析により、らせんの巻数が2を超える高度に伸長したらせん形構造であることを明らかにした。さらにキラルHPLCを用いてエナンチオマーの分割に成功し、高いキラル光学特性を示すこと見出した。また、CDスペクトルの減衰を追跡した結果、この化合物は巻数2を超えるらせん構造を持つにもかかわらず、室温、溶液中で、徐々にらせん反転によるエナンチオマー化が進行することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画したパイ拡張サーキュレン分子の合成には至らなかったが、より小さい内部空孔を持ち、より歪みの大きい環状化合物の合成に成功し、当初デザインした化合物よりも特異性の高い新規環状芳香族化合物の合成研究へ発展することができた。単結晶X線構造解析をはじめとする種々の測定により構造および性質を調査した結果、分子の環内部において非常に短い距離で3つの水素が異常接近する特異的な構造を持ち、その水素間距離は既存の結晶構造の報告例の中でも最短に近いことを明らかにすることができた。異常に接近した水素間の接触に伴う特異的な性質も見出すことができ、構造有機化学的に重要な知見が得られた。 また、上記分子の合成に関する知見を活かすことで、最大で7つのアントラセンがらせん形に縮合した新規π拡張ヘリセンの合成にも成功した。また、そのエナンチオマーの分割に成功し、高いキラル光学特性を示すことを明らかにすることができた。その一方で、らせんの巻数が2を超える高度に伸長したらせん形構造を持つにもかかわらず、溶液中では室温でも容易にらせん反転が進行することを見出した。これは大きならせん径を持つπ拡張ヘリセン独自の性質と考えられ、ヘリセンおよびキラル光学材料の化学においても重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
より短い水素-水素間距離を持つ特異的な環状化合物を設計および合成し、史上最短の水素-水素間接触の分子を目指す。アントラセンを基本ユニットに用いて、エチニル基を導入したベンゼンユニットとのカップリングおよびアルキンの環化異性化を行うことで、3つのアントラセンが環状に縮合した化合物を合成する。単結晶X線構造解析や量子化学計算、各種分光測定を行い、異常接近した水素を持つ環状化合物の構造および性質を明らかにする。 また、当初計画したパイ拡張サーキュレンについても、合わせて合成検討を進める。
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