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脂肪滴の動態制御を志向した発光性超分子ポリマーの創製と機能開拓

研究課題

研究課題/領域番号 22K05079
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
研究機関名古屋大学

研究代表者

大城 宗一郎  名古屋大学, 学際統合物質科学研究機構, 講師 (90793323)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2022年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード超分子化学 / 超分子ポリマー / アミノ酸ジアミド / 脂肪滴 / トリオレイン / 蛍光イメージング / 自己集合 / 耐光性蛍光色素
研究開始時の研究の概要

真核細胞の活動において,脂肪滴は種々のオルガネラと相互作用し,多彩な役割を果たす動的なオルガネラであることが明らかになってきた.本研究では,分子集合体による脂肪滴の動態制御を目的に,脂肪滴への高い選択性と自己集合特性を併せもつ蛍光色素を創出する.そして,脂肪滴内部に超分子ポリマーを形成させる手法と,超分子重合に伴う脂肪滴の動態変化を評価する手法を確立する.さらに,確立した技術を結集し,生細胞に内在する脂肪滴中において超分子ポリマー化を行い,脂肪滴の動態と細胞活動を操る新たな分子技術の開発を目指す.

研究実績の概要

2022年度は,脂肪滴内部に超分子ポリマーを形成させる手法の確立に向けて,脂肪滴への選択性と自己集合特性を併せもつ蛍光色素の開拓に取り組んだ.脂肪滴への選択性を決める指標のひとつである脂溶性を保ちつつ,いかに自己集合性の分子ユニットを導入するかが重要となる.この点において,申請者らは脂肪滴を染色できる蛍光プローブに自己集合を促すアミノ酸ジアミド骨格を導入すれば,アミノ酸残基と側鎖を変えることで脂溶性を調節できると考えた.申請者が所属する研究室では,脂肪滴の染色に適した蛍光プローブとして,電子供与性のジフェニルアミノ基を有するドナー・アクセプター型蛍光色素が有用であることを報告している.そこで,ジフェニルアミノ基部位にアミノ酸ジアミドを導入した蛍光分子を合成した.自己集合特性について知見を得るため,脂肪滴の構成成分の一つであるトリオレインを用いて種々のスペクトル測定を行った結果,時間の経過とともに吸収帯が短波長側にシフトし,誘起CDシグナルを観測した.これらのスペクトル変化は,エネルギー的に安定な会合状態への転移を示す結果である.集合体の形成機構を調べるため,会合状態から単分散状態への転移にともなう吸光度の温度変化を追跡し,臨界温度を伴う核形成・伸長モデルに基づいた解析により伸長過程に関する熱力学パラメータを決定した.続いて,トリオレイン中における発光特性を評価したところ,会合状態においても中程度の蛍光量子収率を示した.そこで,集合体のモルフォロジーについて知見を得るため,蛍光イメージングによる観察に取り組んだ結果,繊維状の集合体の形成を観察することに成功した.さらに,脂肪細胞の染色実験を行ったところ,脂肪滴に局在することを共焦点レーザー顕微鏡により確認し,合成した蛍光色素は脂肪滴への選択性を有することを明らかにした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り,脂肪滴への選択性と自己集合特性を併せもつ蛍光色素を創出に取り組んだ.脂肪滴染色用の蛍光プローブとして開発されたドナー・アクセプター型蛍光色素のジフェニルアミノ基部位に自己集合を促すアミノ酸ジアミドを導入した分子を合成した.脂肪細胞の染色実験を行ったところ,脂肪滴に局在することを共焦点レーザー顕微鏡により確認した.
次に,脂肪滴の構成成分の一つであるトリオレインを媒体として用い,自己集合特性について知見を得るため,種々のスペクトル測定により評価した.その結果,単分散状態と比べ,会合状態は短波長側にシフトした吸収帯を示し,誘起CDシグナルが発現することがわかった.また,紫外可視吸収スペクトルの温度変化を追跡し,集合体の形成機構を解明した.
続いて,トリオレイン中で形成した集合体の構造に関する知見を得るため,透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を試みた.しかし,トリオレインの沸点が高いため,乾燥させた試料を作成できなかった.そこで,トリオレインと同じ誘電率を示し,比較的沸点の低いジブチルエーテルを用いて同様の実験を行った.その結果,ジブチルエーテル中において形成した集合体は,トリオレイン中の集合体と同様の紫外可視吸収スペクトルとCDスペクトルを示すことがわかった.また,TEM観察を行った結果,一次元に分子が配列した超分子ポリマーの形成を確認した.さらに,トリオレイン中で形成した集合体の蛍光特性を調べたところ,中程度の蛍光量子収率を示すことがわかった.この発光特性を活かし,蛍光イメージングにより繊維状集合体の観察に成功し,トリオレイン中において優れた集合特性を有することを明らかにした.
以上の成果から,脂肪滴への選択性と自己集合特性を併せもつ蛍光色素の創出に成功しており,おおむね順調に進展していると考えられる.

今後の研究の推進方策

2023年度は,脂肪滴内部における超分子重合法と,超分子重合に伴う脂肪滴の物性に関する評価法の確立を目指し,これまでに得られた成果を基に研究を推し進める.具体的には,2022年度に合成したアミノ酸ジアミドを有するドナー・アクセプター型蛍光色素を用い,トリオレイン中における集合特性に関する知見を活かし,人工脂肪滴内における超分子ポリマー化に取り組む.単分散状態の蛍光色素を含む人工脂肪滴を調製するためには,トリオレイン中において自発的な集合化を抑制する必要がある.申請者は,アミノ酸ジアミド誘導体が分子間水素結合により一次元集合体を形成する初期過程において,分子内水素結合により折りたたまれた構造を形成し,一時的に集合化が抑制されることを見出している(Angew. Chem. Int. Ed. 2108, 57, 2339-2343).そこで,トリオレイン中でこの準安定状態を発現させ,得られた溶液を界面活性剤を含む水溶液に添加することで人工脂肪滴を調製する.得られた人工脂肪滴の内部において,単分散状態から会合状態へ転移する様子を蛍光イメージングにより観察する.単分散状態と会合状態における蛍光スペクトルの波長がほぼ同じであり,単分散状態からの発光により集合体の形状を観察できない場合は,蛍光寿命イメージングにも取り組む.次に,超分子ポリマーを生長させたトリオレイン溶液に超音波処理を施し,得られた断片を種として用い,人工脂肪滴内の超分子ポリマー化を開始できるか検討する.種を含む人工脂肪滴の調製には,飽和脂肪酸が結合したリン脂質を用いる.これにより,準安定状態の蛍光色素を含む人工脂肪滴との膜融合を引き起こし,脂肪滴内での種重合を実現する.さらに,種と準安定状態の濃度比を変えて,形成する集合体の数やサイズについて超解像蛍光顕微鏡により精査する.

報告書

(1件)
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] トリオレイン中における超分子集合体の蛍光寿命イメージング2022

    • 著者名/発表者名
      成瀬 美玖,大城 宗一郎,梶原 啓司,深谷 菜摘,多喜 正泰,山口 茂弘
    • 学会等名
      第32回基礎有機化学討論会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 人工脂肪滴中における縮環チエノチオフェン蛍光色素の種重合と蛍光イメージング2022

    • 著者名/発表者名
      成瀬 美玖,大城 宗一郎,梶原 啓司,深谷 菜摘,多喜 正泰,山口 茂弘
    • 学会等名
      第49回有機典型元素化学討論会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2023-12-25  

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