研究課題/領域番号 |
22K05100
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小椋 章弘 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (70707843)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 有機合成化学 / 光反応 / 赤色LED / ワンポット反応 / SDGs |
研究開始時の研究の概要 |
赤色光は低コストや高エネルギー変換効率、安全性といった明確な利点を有するにもかかわらず、その有機合成化学における利用は見過ごされてきた。本研究では、注目されてこなかったこの未開拓のエネルギー源である赤色光の可能性を最大限引き出し、真に持続可能な社会にふさわしい反応の開発を目指すため、青色光との波長選択的なラジカル反応を実現する。具体的には、赤色光を用いたBarton脱炭酸的官能基化反応の開発、赤色光→青色光の照射によるワンポットでの炭素-炭素結合の自在な生成と切断に取り組み、最終的にはこれらを光フロー反応に展開する。
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研究実績の概要 |
Bartonエステルとして知られるチオキソピリジニルエステルに対し、光触媒としてテトラフェニルポルフィリン亜鉛錯体の存在下、LEDにより赤色光の照射を行った。この際、様々な試薬を反応溶液中に共存させることによって、酸素や窒素をはじめとしてハロゲンや硫黄、ホウ素などの各種官能基を、脱炭酸を伴いながら効率よく導入できる条件を確立することができた。さらに、アクリル酸誘導体を共存させて反応を行うことで、赤色光による自在な炭素-炭素結合の切断と生成を一挙に行うことにも成功した。特に、次年度以降に青色光とのワンポット反応を行う際に反応の足がかりとすることを想定していた、フタルイミジルエステルとの反応は目的物を与えなかったものの、無保護のアクリル酸との反応生成物であるカルボン酸は高収率で得ることができた。この反応は種々の基質に由来するチオキソピリジニルエステルに対しても、高効率で進行することを確認している。さらに、得られたアクリル酸付加体を一度単離した後、青色光による脱炭酸条件に付したところ、目的の脱炭酸体を中程度の収率ながら得ることに成功した。 また、光量測定や電気化学測定、各種の対照実験や計算化学等の手法により反応機構の解析を行った。その結果、赤色光による本脱炭酸反応は、青色光でよく見られる光酸化還元機構では進行しておらず、触媒による3重項増感機構による活性化を経たラジカル連鎖機構によることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定した赤色光による脱炭酸的官能基化反応や、炭素-炭素結合の組み換え反応の進行を確認し、また波長選択的なワンポット反応に向けた青色光による脱炭酸反応をおこなうこともできたことから、研究上の知見としては想定通り順調に進行したと考えている。 一方で、溶媒類や試薬類、器具類の価格や液体ヘリウムなど装置のランニングコストの急激な上昇により、研究体制の拡張や出張を伴う学術発表への展開は縮小せざるを得ず、想定通りに進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
赤色光反応によりアクリル酸を導入した中間体に対して、ワンポットにて青色光反応を行うことで、波長の使い分けによる連続的官能基化を試みる。青色光による脱炭酸的官能基化反応としては、水素化や酸素化、再度のラジカル的増炭反応や、ニッケル触媒を共存させたクロスカップリングを試みる。また、分子内にBartonエステルとカルボン酸または酸化還元活性エステルを両方有する基質に対して、順次赤色光と青色光を照射することで反応を起こし分ける検討も行う。
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