研究課題/領域番号 |
22K05106
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
庭山 聡美 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (00742420)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 対称化合物 / 非対称化反応 / メカニズム / 水溶媒 / 実用的反応 / グリーンケミストリー / 選択的反応 / ハーフエステル / モノ加水分解 |
研究開始時の研究の概要 |
水は環境に優しく最も安価な溶媒であるが、有機化合物は一般に疎水性のため、水中での有機反応は成功例が限られている。対称化合物は一般に安価な材料から大量合成が可能であるが、等価な置換基を区別するのは困難である。しかし研究代表者らは、これらの困難点を同時に克服し、水中で対称ジエステルの二つの等価なエステル基を高選択的にモノ加水分解する、実用的な非対称化反応を見出している。本研究ではこの反応のメカニズムの解明研究とこの反応を利用した高分子合成への応用研究を行う。
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研究実績の概要 |
対称ジエステルの等価な2つのエステル基の片方のみを実用的条件下で高選択的にモノ加水分解する反応のメカニズム解明を実験と理論計算の両面から行っている。実験による探究として、本反応では一旦2つの等価なエステル基の一方が加水分解されると、残りのエステル基を含む疎水性部分が内側を向きミセル状のアグリゲートを水中で形成する事で高選択性を発揮すると考え、動的光散乱実験とゼータ電位測定により、表面に負の電荷を持つコロイド状粒子の中間体を検出した。この業績は出版したjournalの前表紙を飾った。理論計算によるメカニズム探究としては、対称ジエステルdimethyl maleateの一つめ及び二つめのエステル基が加水分解される際の遷移状態を真空中と水中で計算した。一つ目のエステル加水分解の遷移状態への活性化エネルギーは2つ目のエステルの加水分解の遷移状態への活性化エネルギーよりも小さいことがいずれの条件でも示された。特に真空中では二つめの加水分解の中間体は不安定で、加水分解後に生成物が枝分かれする現象も示唆された。さらに反応開始前に2つの等価なエステル基がどのように区別されているかを探るため、最安定コンフォメーションの量子化学計算も行った。 また本反応のメカニズムのように水中でのアグリゲート形成によって選択性が発揮されるなら、置換基の疎水性、親水性の変化による水中での非対称化が可能となると考え、対称ジアルデヒドの選択的モノ酸化反応を行い論文出版した。 本対称ジエステルのモノ加水分解反応の生成物とその誘導体から高分子合成を行い、5種類の合成高分子の細胞株パネルでの抗さらにがん活性評価でいずれも中枢神経系細胞に特異的に活性が見られた。また帝京大学との共同研究により、蚕を用いた評価で5種類の合成高分子に免疫促進作用も見られた。これらの構造―活性相関研究を続けるために、更なる種類の高分子を合成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にあったようなコロナ禍に由来する制約が緩和され、対面での学会参加も可能となった。対面での共同研究の打ち合わせもしやすくなった。結果として2年目は配分額以上の出費となり、論文を2報出版し、学会発表も対面で数種類行った。概ね研究も計画通り進めることができた上、我々の合成高分子に予想外の生物活性も見い出され、新しい方向に研究が発展される見込みとなった。以上を総合的に判断して“概ね順調に進展している“が妥当と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
理論計算による対称ジエステルのモノ加水分解反応のメカニズムの探究を続行し、対称ジエステルdimethyl maleateの一つめ及び二つめのエステル基が加水分解される際の遷移状態を真空中と水溶媒条件下で行う他、反応温度も反映させる。他に、基底状態での再安定コンフォメーションの計算を種々の溶媒で行って、反応開始前でどのようにして等価な置換基が区別されているのか確かめる。 さらに本反応のメカニズムによれば、置換基の疎水性や親水性の変化が伴う反応であれば、水溶媒中で他の対称化合物の非対称化反応も可能と考えられるため、他にも同様な反応の開発を行う。 また高分子合成も続行し、2年次に始めた構造―活性相関研究を続けるために、更なる種類の高分子を合成する。具体的には不飽和結合を還元して完全飽和高分子としたものを大量に合成する。これらの構造―活性相関研究の他にも合成高分子のドラッグデリバリーへの応用も目標としているが、エタノールに可溶な高分子を合成する必要があるため、エステル基とカルボキシル基の他、水酸基やアミド基を有する高分子合成も手がける。
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