研究課題/領域番号 |
22K05109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
村井 利昭 岐阜大学, 工学部, 特任教授 (70166239)
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研究分担者 |
布施 新一郎 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (00505844)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ビナフチル基 / セレノリン酸クロリド / ホスホン酸エステル / キラリティー転写反応 / P-キラルホスフィンオキシド / P-ホスホン酸エステル / チオホスホン酸エステル / P-キラル化合物 / 連続置換反応 / フロー反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、リン原子がキラル中心である四配位五価リン化合物群のうち、生理活性、薬理活性を示すものも多く含まれる、リン原子上に少なくとも炭素置換基が一つと、窒素、酸素あるいは硫黄置換基を有する化合物群を標的化合物として、われわれが独自に発見したビナフチル基のキラリティー転写反応、リン原子上置換反応を経由して、それらを高効率かつ高い鏡像異性体比で導く系を構築する。さらに鍵出発化合物への異なる二つの求核剤の付加を連続で行い標的化合物を得るとともに、ビナフトールを回収再利用できる系を、フロー合成法を駆使して提供する。
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研究実績の概要 |
少なくとも二つのヘテロ原子置換基を有するP-キラルな有機リン化合物や、三つの異なる炭素置換基を組み込んだ有機リン化合物は、医薬品前駆体や農薬への応用も期待できる重要な化合物群の一つである。そこで本研究では、キラリティー転写反応さらにリ ン原子上での置換反応を行い一連の化合物群を導く新反応を開発した。まず初めにビナフチル基を有するセレノリン酸クロリドを合成した。ここにGrignard反応剤を作用させることによって、セレノホスホン酸エステルを得た。同様の反応をリン酸クロリドに対して適用した場合には、2当量以上のGrignard反応剤が組み込まれた化合物も得られて選択性が低下する。さらにチオリン酸クロリドを用いると反応性は低下し、同じ条件では原料の回収にとどまった。得られたセレノホスホン酸エステルは、酸化反応によってホスホン酸エステルに変換できる。またセレノホスホン酸エステルを三価リン化合物と反応させた後に、粉末硫黄を加えるとチオホスホン酸エステルも導かれる。得られた一連の化合物に先とは異なるGrignard反応剤を加え、キラリティー転写反応の適用範囲とその拡大を行なった。セレノホスホン酸とGrignard反応剤との反応は、リン原子上での置換反応だけでなく、P=Se基のセレン原子上にも炭素求核剤の付加が進行し、単一の生成物を得ることはできなかった。一方でホスホン酸エステルとの反応では、リン原子上での選択的な置換反応が進行し、一当量の炭素求核剤が組み込まれたP-キラルホスフィン酸エステルを中程度から高収率で得た。得られた化合物にさらに異なる置換基を有するGrignard反応剤を作用させると、リン原子上での置換反応が良好に進行し、P-キラルな光学活性ホスフィンオキシドを高い鏡像体過剰率で与えた。また三段階目の置換反応は、リン原子上での立体反転を伴って進行していることも明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン原子上に三つの異なる置換基を有するP-キラルな化合物群は、医薬品や医薬品前駆体として広く用いられている。ただしそれらの化合物を導く反応は、多段階を要するとともに、高選択的に目的化合物を得ることは容易ではなく、反応条件の正確な制御も必要であること、反応途中で同じ置換基が組込まれる反応が優先することも多く、導入できる置換基は限定的である。そこでリン原子上に三つの異なる置換基を選択的に導入できる反応の開発は有機合成化学における重要な課題の一つである。このような背景の中われわれは、ビナフチル基を有するリン酸誘導体に関する研究を展開してきた。ここではこのリン酸誘導体に対して、異なる複数の炭素求核剤を反応させることによって、リン原子上への三つの炭素置換基の導入を達成した。しかも三段階を経由する反応のうち、二段階目と三段階目は、立体異性体を与え得る反応であるが、いずれも高選択性を示した。加えて三段階目の反応の立体化学については、出発化合物および生成物のX線構造解析を行い、反応が立体反転を伴って進行することも明らかにできた。最後にいずれの段階もGrignard反応剤を用いているため、段階ごとに生成物を単離するのではなくて、フラスコ内に連続で異なるGrignard反応剤を加える系も検討した。その結果、Grignard反応剤の反応性の差が反映されて、P-キラルホスフィンオキシドを高選択的かつ高収率で与える系も確立した。てこれらのことから本研究は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
リン原子上に導入する三つの異なる置換基としては、三つの異なるアルコキシ基、あるいはそのうち一つまたは二つを炭素置換基や窒素置換基で置き換えた誘導体を描くことができる。さらに三つの異なる炭素置換基を導入した誘導体も存在する。これまで、一つのアルコキシ基と二つの異なる炭素置換基を導入した化合物さらに異なる三つのアルコキシ基や炭素置換基を導入した化合物を導く新反応の開発に成功している。さらにこの系を発展させて、別のタイプの置換基の組合せでも光学活性なP-キラル化合物を導くことができる反応開発を行う。とりわけ今後は、含窒素置換基の導入に伴う反応の立体化学の解明と、高選択的反応を達成できる条件最適化を行う。
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