研究課題/領域番号 |
22K05112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉永 健史 京都大学, 薬学研究科, 助教 (70625201)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 有機合成化学 / ペプチド / 天然物化学 / グリーンケミストリー / サステナブルケミストリー / 生合成 |
研究開始時の研究の概要 |
小分子と抗体の中間的性質を持つペプチド中分子は、双方の利点を併せ持ち、また欠点を克服しうる次世代の創薬シーズとして非常に大きな注目を集めている。 ペプチド化学合成では様々な縮合剤が用いられるが、異性化ペプチドの生成など種々の問題が発生する。なるべく高性能な縮合剤を用い、さらに生合成と逆向きの「ペプチドC末端→N末端」の順でアミノ酸を連結することで問題を「回避」することが当然となっている現在のペプチド化学合成に対し、本研究では高性能な縮合剤の開発を目的としてきた従来のアプローチとは大きく異なる、研究代表者独自のアミド化により問題を「解決」することを目的とする。
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研究実績の概要 |
アミド結合生成反応は医薬品・化成品合成だけでなく、タンパク質を合成する反応であるなど人類にとって最重要反応の1つである。縮合剤を用いるアミド化では異性化ペプチドの生成など種々の問題が発生するため、現在のペプチド化学合成ではなるべく高性能な縮合剤を用い、さらに生合成と逆向きの「ペプチドC末端→N末端」の順でアミノ酸を連結することで問題を回避することが一般的となっている。本研究では高性能な縮合剤の開発を目的としてきた従来のアプローチとは大きく異なる、研究代表者独自のアミド化により問題を解決することを目的とし、研究を行っている。 前年度は塗料の安定化剤等として工業的にも広く利用されているトシルイソシアネートと、活性化剤としてペンタフルオロベンジルブロミドを用いるアミド化反応の開発に取り組み、多数の基質で本反応によるアミド化が可能であることを確認していた。2023年度はその基質適用性の広さの実証実験として、様々な中分子環状ペプチド化合物の合成に取り組んだ。大環状ペプチド天然物チロシジンAやアシルスルガミドAの全合成、人工大環状ペプチドの合成などいずれも効率的な環化が確認され、本反応の有用性が示された(エピメリ化を抑制するペプチドC末端修飾法と中分子環状ペプチド合成への応用. 第65回天然有機化合物討論会など)。さらに、アミド化反応時の活性化剤としてペンタフルオロベンジルブロミドの代わりに、より安価なブロモ酢酸エステルを用いたアミド化でも同等の反応性および異性化抑制能が確認され、論文投稿に先立ち低コストアミド化反応として特許出願(特願2023-147238)を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
縮合剤を用いないアミド化反応への挑戦として、前年度は塗料の安定化剤等として工業的にも広く利用され安価なトシルイソシアネートを用いるペプチド鎖C末端の修飾、生成するアシル化スルホンアミドのペンタフルオロベンジルブロミドを用いた活性化、得られた活性化体とアミンとの反応によるアミド化反応の開発に取り組んだ。 2023年度はまずペンタフルオロベンジルブロミドを用いたアミド化の有用性の実証実験として様々な中分子環状ペプチド化合物の合成に取り組んだ。大環状ペプチド天然物チロシジンAやアシルスルガミドAの全合成、人工大環状ペプチドの合成などいずれも効率的な環化が確認され、天然物化学・生物有機化学分野における最高峰の国内学会 (エピメリ化を抑制するペプチドC末端修飾法と中分子環状ペプチド合成への応用. 第65回天然有機化合物討論会)や、ペプチド関連分野の国際学会(Acyl sulfonamide-mediated amidation and its application to the synthesis of middle molecular natural peptidic molecules. The 60th Japanese Peptide Symposium)で発表を行なった。 さらに、2023年度は開発したアミド化反応の低コスト化、廃棄物の削減研究にも取り組み、アミド化反応時の活性化剤として比較的高価なペンタフルオロベンジルブロミドの代わりに、より安価なブロモ酢酸エステルを用いたアミド化でも同等の反応性および異性化抑制能が確認された。本成果は現在広く用いられる縮合剤を用いたアミド化のコストや廃棄物の問題を解決しうる手法となることが期待されるものであり、論文投稿に先立ち低コストアミド化反応として特許出願(特願2023-147238)を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
縮合剤を用いるアミド化ではまずカルボン酸が縮合剤により活性化合物となり、次にその活性化体に対してアミンが反応することで、アミドが縮合剤由来の共生成物とともに得られる。しかし活性化体の不安定性により様々な副反応を生じるため、それを抑制するための添加剤も同時に加えることが一般的となっている。アミンに対し過剰量の高性能な縮合剤・添加剤を過剰のカルボン酸とともに用いるほどアミド化反応の収率は高くなるものの、試薬自体のコストのみならず精製や廃棄物の処理も含め生産コストがより高くなることがアミド化合物合成の工業化の際に問題となる。医薬品や化成品等の有用アミド化合物の大量供給のためにはカルボン酸の異性化等の副反応を抑制可能で、かつ精製や廃棄物の処理コストも低減したアミド化反応の開発が大きな課題となっている。2022年度に見出した、カルボン酸の活性化に用いるトシルイソシアネートは塗料の安定化剤等として工業的に広く利用されている化合物であり、2023年度に見出したハロゲン化酢酸エステルも様々な有機化合物や有機合成用試薬の原料として利用される単純低分子化合物であり、ともに非常に安価である。2024年度は本研究で見出した低コストアミド化反応のより多様な基質を用いた一般性の確認を行い、さらにアミド化反応時のコストのみならず、廃棄物低減や簡便な精製方法の確立など、反応後の処理・精製の低コスト化研究にも取り組む。
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