研究課題/領域番号 |
22K05117
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小出 太郎 九州大学, 工学研究院, 助教 (60771920)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 反芳香族配位子 / 金属錯化 / 酸化還元 / 触媒反応 / 反芳香族 / 配位子 / 計算化学 / 反芳香族化合物 / 金属錯体 / 触媒 / 反応機構 |
研究開始時の研究の概要 |
金属錯体触媒は、広範な物質変換に用いられており、工業、医療、製薬、食品その他多くの分野で必須ともいえる反応である。近年、「酸化還元活性配位子」を用いることで、金属の酸化還元だけでなく配位子の酸化還元特性を利用する新たな反応開発に注目が集まっている。本研究では、特にこれまでに触媒反応の例のない「反芳香族化合物」の多電子酸化還元特性に着目し、金属錯体触媒の配位子として用いることで新たな触媒系の開拓を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度中には、合成した反芳香族配位子を用いた金属錯体の合成に取り組むとともに、芳香族金属錯体からのニ電子還元を利用した反芳香族金属錯体の生成を利用した触媒反応について研究を行った。 金属錯化については、主に第4周期の遷移金属の塩を用いて反応を試みた。グローブボックス中で吸収スペクトル変化を伴う錯化挙動が観測されたが、その後脱メタル化しながら配位子が酸化された芳香族性の化合物が得られた。これは金属錯体になった後に配位子の酸化、もしくは配位子から金属への電子移動によって電子状態が変化し、結果として配位力がなくなり脱メタル化しているものと考えられる。 そこで、芳香族金属錯体を用いて、電気化学的に配位子を二電子還元して反芳香族錯体として系中で利用することを考えた。これは、本研究で用いている金属錯体が中心金属よりも配位子還元が起こりやすいことを利用した手法であり、ニ電子還元体であるジアニオンが反芳香族性になることは電解吸収スペクトルから確認し、理論計算からも支持する結果を得た。 電気化学還元条件下で反応を行うことで、反芳香族性のニ電子還元体を触媒活性種として反応が進行し、水素発生反応や二酸化炭素固定反応が進行することが分かった。詳細な反応機構については今後の検討課題であるが、中心金属の価数ではなく配位子の電子状態を変えることで反応が進行することから、芳香族と反芳香族をスイッチングできる配位子が触媒反応にも有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反芳香族錯体の単離は難しいものの、不活性ガス下での錯化挙動は観測できた。また、酸化還元活性な環状共役配位子を利用することで電気化学的に反芳香族金属錯体を発生させて利用することができるという知見を得た。触媒反応における配位子還元体(反芳香族錯体)の利用は、新たな触媒反応デザインの手法の一つとなりうる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き金属錯化と錯体の反応性についての検討を行う。 特に反芳香族配位子からの金属錯化については、生成物が安定に単離できる錯体の合成を目指す。配位子の構造(ヘテロ原子の種類や数、導入位置)、金属の種類、反応条件の検討に加え、配位子への置換基導入も行う。配位子に電子求引性置換基を導入することで錯化後の配位子から金属への電子移動を抑制できると思われるが、それは同時に錯体自体の反応性(触媒性能)の低減にもつながってしまう可能性がある。単離できたら構造決定および反応性について検討する。 芳香族錯体からの電気化学的還元手法については、さらに検討を行うこととし、還元時の電子状態については、電解吸収スペクトルと電解ESR、理論計算を合わせた解析をさらに行うとともに、触媒反応における反応中間体や遷移状態の予測も行う。 また、化学還元剤による還元と反芳香族錯体の単離・同定を行い、得られた錯体を用いた触媒反応と、芳香族錯体からニ電子還元を経由して起こる電気化学条件の反応について比較を行う。
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