研究課題/領域番号 |
22K05122
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 (2023) 国立研究開発法人産業技術総合研究所 (2022) |
研究代表者 |
中島 裕美子 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (80462711)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 金属-配位子協働効果 / エステル / 水素化分解 / 遷移金属錯体 / 水素活性化 / 触媒反応 / 平面四座PNNP配位子 |
研究開始時の研究の概要 |
四座PNNPに支持された鉄およびコバルト錯体を触媒プラットフォームとし、「水素貯蔵」機能を活かして、これまでにない反応形式に基づく、新しい触媒反応を開発する。特に、SDGsに資する工業的に重要な課題に積極的に取り組むことで、従来の金属錯体触媒開発分野に技術革新をもたらすことを目指す。具体的には、ケイ素化学産業において安価かつ大量に供給可能なクロロシラン類の水素化分解反応によるヒドロシラン合成、およびポリマーの解重合に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究では、主催する研究室が独自に見出した四座PNNP配位子に支持されたコバルト(I)錯体が示す新しい金属-配位子協働効果である「水素貯蔵」機能を用いて、新規触媒反応の開発に取り組む。これを応用することで、強固な結合切断を伴う不活性分子の資源利用やポリマーの解重合など、学術的および工業的観点の両面から重要な課題である、種々の高難度触媒反応の達成を目指す。 2022年度の取り組みでは、四座PNNP配位子に支持されたコバルト(I)錯体が、水素活性化を達成した後に、基質に対して効率的な電荷移動を起こすことを見出した。さらにこれをエステル類の還元反応に利用することで、エステル類のベータ位C-O結合が切断され、アルカンが触媒的に進行することが分かった。本年度は、本反応の基質適用範囲を調べることで、種々のエステル類の水素化分解によるアルカン生成を達成した。また、反応中間体の単離にも成功し、速度論的解析を重ねることで、反応の律速段階に金属から基質への電荷移動過程が含まれることが示された。さらに反応途中でアルキルラジカルが発生し、これが分子内におけるHydrogen Atom Transfer (HAT)を受け、アルカンへと変換されることを明らかにした。以上の成果をまとめ、英国化学会誌Chemical Communicationsに論文発表した。本論文は同雑誌のバックカバーとして紹介されるに至った。 本研究により、ポリエステル類などのポリマー分解反応を最終目標に掲げる本申請研究の重要な基盤技術を確立することが出来たと言える。以上の理由から、(2)おおむね順調に進展している と評した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、主催する研究室が独自に見出した四座PNNP配位子に支持されたコバルト(I)錯体が示す新しい金属-配位子協働効果である「水素貯蔵」機能を用いて、新規触媒反応の開発に取り組む。これを応用することで、強固な結合切断を伴う不活性分子の資源利用やポリマーの解重合など、学術的および工業的観点の両面から重要な課題である、種々の高難度触媒反応の達成を目指す。 2023年度の取り組みでは、四座PNNP配位子に支持されたコバルト(I)錯体が、水素活性化を達成した後に、基質に対して効率的な電荷移動を起こすことを見出した。 本年度は、本反応の基質適用範囲を調べることで、四座PNNP配位子に支持されたコバルト(I)錯体が、種々の置換基を有する安息香酸ベンジル類の水素化分解によるアルカン生成を達成した。また、反応中間体の単離にも成功し、四座PNNP配位子に支持されたコバルト(I)錯体が水素活性化後に生成する錯体種が、金属を介して基質へ電荷移動を行うことを明らかにした。また、速度論解析を行い、基質濃度に関して反応の初速度をプロットすると、飽和挙動が見えられたことから、反応には基質との会合体を生成する前駆平衡が含まれることが示された。最終的には、Hammet plotを作成し、律速段階に錯体から基質への電荷移動過程が含まれることが示された。別途実験により、反応途中でアルキルラジカルが発生することも確認したことから、これが分子内におけるHydrogen Atom Transfer (HAT)を受け、アルカンへと変換されると結論付けた。 本研究により、ポリエステル類などのポリマー分解反応を最終目標に掲げる本申請研究の重要な基盤技術を確立することが出来た。以上の理由から、(2)おおむね順調に進展している と評した。
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今後の研究の推進方策 |
開発した触媒は、基質への電子移動を鍵として、水素化分解を達成することを見出した。今後は、触媒の電子供与能を向上させるべく、支持配位子への電子供与基の導入など、触媒構造に検討を加える。理論計算を用いた機構解析を行い、最適な触媒構造を迅速に導出することを目指す。最終的には、改良した触媒系を用いてポリエステル他、種々の安定化合物の水素化分解反応の達成を目指す。
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