研究課題/領域番号 |
22K05124
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鍋島 達弥 筑波大学, 数理物質系(特命教授), 特命教授 (80198374)
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研究分担者 |
吾郷 友宏 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90466798)
中村 貴志 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90734103)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 錯体 / 典型元素 / アンチモン / 機能性分子 / ジピリン / 超分子 |
研究開始時の研究の概要 |
様々な錯体を形成するジピリンを多量体にすると、その錯体は、複数の部位が同時に働くことで実現する協働的な分子認識など、単量体では実現困難な機能を発現する。本研究では、多様な化学修飾が可能なジピリン環状三量体を主要な基本骨格に選び、平面型、お椀型、ベルト型構造の作り分けとその錯体を用いた新規機能の創製を行う。以上の体系的な基礎研究により、ジピリン錯体の化学の未踏領域を開拓する。
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研究実績の概要 |
ジピリンの多核錯体は多様な機能が期待されるため、近年注目を集めている。本研究課題ではその可能性をさらに広げ、新機能の開発を目指して、環状構造をもつ高機能なジピリン多核錯体の合成などを目的としている。令和5年度は、前年度に行ったジピリンのプニコゲン錯体の合成および構造、機能についてより詳細な検討を行った。令和4年度の検討では、目的のアンチモン錯体の生成が示唆されるものの、収率が非常に低く、再現性が乏しかった。しかし種々の検討から、この反応は反応器に混入していた微量の酸素と室内灯の光によって進行していることを突き止め、反応を酸素下、白色LEDライト照射下で行うと効率よく反応が進行することを見いだした。この反応ではSb(III)が酸化され、Sb(V)の正八面体型錯体が生成することを、各種スペクトル、X線結晶構造解析により明らかにした。既知のジピリンSb(III)錯体は、空気中では非常に不安定であるが、今回合成した錯体は、初めてのジピリンSb(V)錯体であり、空気下でも安定で、室温では加水分解も受けにくい。さらに、アピカル位が塩素原子の場合は発光性を示さないが、これを水酸基とすると非常に高い発光性を示すことを見いだした。この知見は、発光性の制御を、簡便なリガンド交換により達成できることを示しているばかりでなく、この錯体が多量体の基本単位として利用可能であることも示唆している。また、その他の環状ジピリン錯体についての検討は上記の研究に注力したため、令和5年度は基本的な骨格合成と簡単な金属導入の検討のみ行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度においては、得られたアンチモン錯体の合成収率が非常に低いことや、構造解析が十分に行えていないなどの問題点が残っていた。しかし令和5年度において、当初全く予期していなかった酸素と光照射による、Sb(III)からSb(V)への酸化反応を利用した合成手法の確立により、収率の問題を解決することができた。この酸化反応を伴うジピリンへの中心元素の導入は、ジピリンの化学において全く知られていなかった新手法である。また錯体の構造をX線結晶構造解析により明らかにすると共に、最初に得られるジクロロ体を合成中間体として、リガンド交換反応によりOHを導入することで、全く発光を示さない錯体を強い発光性をもつ錯体へと変換する新手法も見いだすことができた。これらの成果は論文として国際誌で発表することができ、高い評価を得ることができた。またこのリガンド交換は、ジピリン錯体多量体の合成に利用できる可能性も持っており、当該分野において高い波及効果を有する成果と考えている。令和5年度は上記の研究に重点を置いたため、その他の多量体の検討については限られたものとなったが、最終年度につながる基礎的知見はいくつか得られており、総合的に判断して研究は概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
三塩化アンチモンとジピリンとの反応により得られた正八面体型のジピリンアンチモン(V)錯体は、塩素がリガンドとしてアピカル位に位置している。この錯体は全く発光性を示さないが、水酸基に変換すると強い発光性を示すようになる。そこで、この塩素錯体を合成中間体として、多種多様な配位子でリガンド交換を行うことで、発光性の変化について詳細に調べる。また電子移動やエネルギー移動、その他、様々な機能性部位となるリガンドをアピカル位に導入することで多彩な機能の実現を目指す。また、架橋が可能な二官能性化合物による配位子交換によって、ジピリンアンチモン錯体の多量化、および環状多量体の合成について検討して、さらなる機能化を検討する。また、最近検討を進めている、ビスマス錯体の合成についても検討して、プニコゲン錯体のもつ機能の探索を進める。さらに、すでに合成に成功しているその他の環状ジピリン多量体に複数の中心原子を導入して、多機能性の環状ジピリン錯体の検討を行い、目的の達成を図る。
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