研究課題/領域番号 |
22K05125
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 慧 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80755835)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | パラジウム錯体 / 集積体 / 光反応 / 光触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、Pd(II)集積体の励起状態を分子活性化に活用する新しい光触媒系の構築を目的とする。第一に、カチオン性Pd(II)錯体の集積による寡量体・重合体を合成し、その構造と光物性との相関について調べる。第二に、これら集積体の光励起による結合活性化を鍵とする、種々の光触媒的C-H結合官能基化反応を開発する。本研究を通して、Pd(II)集積体の光反応化学に関わる新しい学理の開拓を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究は、有機パラジウム錯体の金属-金属間相互作用を伴う集積体における光物性および光反応性を調べ、これを用いる新奇光触媒反応を開発することを目的とする。本年度は、支持配位子としてターピリジンを有するパラジウム(II)アセチリド錯体の溶液中における集積挙動と光反応性について調査した。 まず、様々な溶液中における錯体の紫外可視吸収スペクトルを調べたところ、溶液の濃度上昇あるいは貧溶媒の添加により、可視領域にMMLCT(Metal-Metal-to-Ligand Charge Transfer)遷移に帰属される幅広な吸収帯が現れることが分かった。この結果より、錯体は適切な溶液条件下で金属-金属間相互作用を伴って集積することが示された。 次に、集積条件下における錯体の光反応性を調べた。空気下あるいは窒素雰囲気下でMMLCT吸収帯に対応する可視光を照射したところ、錯体が転化し、アセチリド配位子の二量化生成物であるジインが得られた。ジインの生成は、錯体の光励起を契機とするパラジウム-炭素結合の開裂と二つのアセチリド配位子間の炭素ー炭素結合形成の進行を示している。そこで、本反応における生成物の経時変化を調べたところ、反応初期において錯体の寡量体が生成することが分かった。さらに、この反応液を再結晶すると、配位子にベンゾフルベン骨格を有するパラジウム三核錯体が得られることが単結晶X線構造解析より明らかとなった。以上の結果より、有機パラジウム錯体集積体の光励起は分子間の炭素ー炭素結合形成を誘起することが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究の第一段階としてアセチリド配位子を有するパラジウム(II)錯体の溶液中における集積挙動と光反応性について調査した。種々の実験より、同錯体が適切な溶液条件下で集積すること、また可視光照射下で炭素-炭素結合形成を伴う分子間反応を誘起することを見出した。これらの結果は、パラジウム錯体集積体の光励起が炭素-炭素結合形成に基づく新奇炭素骨格の構築に有用であることを示しており、本研究の目指す集積体を用いる光触媒的有機分子変換の端緒となるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度見出したパラジウム(II)アセチリド錯体の光反応について、単量体と集積体の反応性の違いを念頭に置きながら、配位子上の置換基効果や溶液/光照射条件依存性など詳細を調べる。これら実験的なアプローチと並行して、計算化学的なアプローチから錯体の基底/励起状態の電子構造や各素過程の遷移状態を調べ、その光反応機構を明らかにする。さらに、光反応に伴って生成するパラジウム種からもとのアセチリド錯体を再生する過程について検討し、これを光反応過程と融合することで、パラジウム錯体集積体を光触媒とする有機分子変換反応の開発に取り組む。
|