研究課題/領域番号 |
22K05133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
越山 友美 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (30467279)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 細胞膜 / 触媒反応 / 機能性分子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非対称な細胞膜構造を利用することで機能性分子を階層的に集積化し、① エネルギー移動反応、② 電子移動反応、および ③ 触媒反応が連動した触媒反応システムの構築とその反応機構解明を目指す。本研究の達成により、細胞膜空間を新たな反応場として利用するための分子設計指針を確立し、異なる化学反応が連動した高度な触媒反応システムの創製につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究では、細胞膜である赤血球膜への機能性分子の空間配置と触媒反応システムの反応機構解明により、細胞膜空間を反応容器として利用するための分子設計指針の確立を進めた。近年、高活性、高機能な多種多様な機能性分子が開発されている。しかし、単独分子による機能には限りがあることから、それらを複合化し、異なる化学反応が連動したより高度な触媒反応システムの創製が求められている。各々の化学反応に関与する種々の機能性分子を集積化するための空間が必須であり、機能性分子を集積化する場としてリポソームなどの球状人工膜空間は有用であるものの、対称膜であるため分子配向や配置の制御が難しい。本研究では、「網目状蛋白質ネットワーク」と「脂質膜」からなる非対称な赤血球膜構造を利用することで機能性分子を階層的に集積化し、① エネルギー移動反応、② 電子移動反応、および ③ 触媒反応が連動した触媒反応システムの構築を目指す。本年度は (1) 赤血球膜への機能性分子の空間配置制御法の探索、(2) 光誘起エネルギー移動反応の制御、(3) 光触媒反応システムの反応評価を進めた。(1) では網目状蛋白質ネットワークへの異なる機能性分子の修飾、(2)では網目状蛋白質ネットワークに修飾した二種類の蛍光分子間の光誘起エネルギー移動反応の評価、(3)では光増感剤、電子メディエーターと触媒を赤血球膜に集積化することで光水素発生反応を検討した。これらの結果より、赤血球膜が化学反応を制御する反応容器として有用であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、赤血球膜への機能性分子の空間配置制御法の確立を初年度に進める予定であったが、それに加えて、光誘起エネルギー移動反応と光水素発生反応の検討まで進めることができた。(1)の赤血球膜への機能性分子の空間配置制御法の探索では、網目状蛋白質ネットワークのリシン残基とシステイン残基への機能性分子の化学修飾、および、網目状蛋白質ネットワークを足場としたナノ粒子合成を進めた。修飾・合成時の各々の機能性分子の添加量、温度、反応時間、pH等を変化させることで、修飾・合成条件の最適化を進めた。(2)の光誘起エネルギー移動反応の評価では、(1)の手法を用いて、網目状蛋白質ネットワークのリシン残基とシステイン残基へ異なる蛍光分子を化学修飾した赤血球膜を作製し、蛍光分子の修飾量や比率などによりエネルギー移動効率が変化することを確認した。さらに、(3)の光触媒反応システムの反応評価では、(1)の手法を用いて、網目状蛋白質ネットワークのリシン残基にRu(bpy)3錯体を化学修飾し、さらに、網目状蛋白質ネットワーク上に白金ナノ粒子を固定化した赤血球膜を作製した。そこに電子伝達体と犠牲還元試薬を添加し光を照射すると水素が発生することを確認した。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度検討した光誘起エネルギー移動反応と光水素発生反応に関して、より詳細な反応機構の解明を進める。例えば、光誘起エネルギー移動反応の解析では、定常蛍光スペクトル測定による蛍光強度の変化と蛍光寿命測定によりエネルギー移動効率と反応経路を解析する。また、光水素発生反応の解析では、水素発生量の時間追跡や反応途中の溶液の分光測定を行うことで、反応の律速段階や失活過程などの反応機構を明らかとし、分子の導入量や溶液のpHなどの反応条件の最適化を図る。さらに、赤血球膜の網目状蛋白質ネットワークへの光増感剤である亜鉛ポルフィリンと電子メディエーターであるメチルビオロゲンの部位特異的な化学修飾、エネルギー供与体である BODIPY の膜中への導入、および水素発生触媒である白金コロイドの内包した光水素発生システムの構築も進める予定である。
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