研究課題/領域番号 |
22K05143
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷藤 一樹 京都大学, 化学研究所, 助教 (80911776)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | クラスター / 卑金属 / モリブデン / 硫黄 / 二酸化炭素 / 還元 / CO2還元 / 金属-硫黄クラスター / 第一遷移金属 |
研究開始時の研究の概要 |
人間活動による温室効果ガスの排出は、地球温暖化に伴う気候変動の主要因と考えられている。中でも二酸化炭素(CO2)は大気組成を変化させるレベルで排出されており、その有効利用へかけられている期待は大きい。申請者は最近、化学合成した金属-硫黄クラスターが、 CO2やCOといったC1基質を短鎖炭化水素へ還元する反応を見出しているが、現在までその 詳細な理解は進んでいない。そこで本研究では、この反応に関わる金属の種類、数を制御可 能な立方体型[M4S4]プラットフォームを用いて、まず反応に適した金属は何か?またC-C結 合形成に必要な反応サイトはいくつか?を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、代表者らが過去に見出した金属-硫黄クラスターを用いたCO2/COから短鎖炭化水素への還元反応をベースとして、反応点となる金属の数、種類が制御可能な立方体型[M4S4]クラスターを用いてCO2/CO還元の生成物を制御しようとするものである。昨年度までの結果を踏まえ、今年度はすでに見出している触媒反応に対するプロトン源と添加物の検討による生成物の制御と、反応点となる金属を増やしたクラスター触媒の活性評価を試みた。 プロトン源として様々なアルコール類、添加物として各種アミンなどを検討したが、いずれの場合においても、CH4の選択性が水をプロトン源とした場合を越えることはなく、C2以上の炭素数を持つ生成物の選択性向上にも繋がらなかった。一方で水をプロトン源とした場合についても条件検討を進めたところ、CH4生成の触媒回転数は最大1000を越えることを明らかにしている。 また、[M4S4]骨格に反応点となるFeを2つ導入した[Mo2S4Fe2]型のクラスターを新たに合成し、そのCO2/COに対する触媒活性についても検討を行った。反応点が増えることによりC-C結合形成が起こりやすくなると期待したが、観測された生成物は[Mo3S4Fe]クラスターを用いた場合と同じくCH4であり、その選択性は低下した。一方で、CH4を生成する速度については顕著な上昇が見られ、[Mo2S4Fe2]クラスター触媒の大きな特徴である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目となる今年度は、昨年度見出したCO2からCH4への直接還元反応に対して、プロトン源、添加物、触媒となるクラスターの構造、という3つの観点から反応生成物の制御に取り組んだ。この検討からはいずれの場合もCH4の選択性向上は確認できず、C2以上の炭化水素の生成についても有意な上昇は認められなかったが、プロトン源を水に限定してさらに触媒検討を進めたところ、クラスター触媒が非常に高い触媒回転数を示すことを見出している。前例のない触媒活性・安定性を見出した点で、研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で見出したCO2還元反応を成果発表するため、次年度は以下の方針のもとで反応活性種や反応メカニズムに対する理解を深める。 1)錯体化学的アプローチによる触媒活性種の同定 これまでの検討により、[Mo3S4Fe]クラスターが触媒として機能していると確信しているが、未だに基質の結合状態や中間体に関する情報は少ない。そこで、反応の構成要素を限定した条件(例えば、プロトン源を除いてCO2雰囲気下で還元剤をクラスターに作用させる、など)においてどのような化学種を生成するか確認する。また還元剤として用いているヨウ化サマリウムについても、反応条件下や反応後にどのような化学種が生成しているか、結晶構造解析や分光分析によって同定を試みる。 2)速度論的解析による反応の理解 本反応はH2の副生を伴ってCO2からCH4への還元反応が進行する。現在までのところCOの生成は見られていないものの、時間経過に伴う反応性生物の定量や速度論的な解析は未実施である。触媒として用いている[Mo3S4Fe]クラスターだけでなく、かさ高い配位子を持つクラスターや反応点としてCoやNiを持つクラスターに対しても速度論的な解析を行い、[Mo3S4Fe]クラスターが触媒として優れている理由を明らかにする。また、[Mo3S4Fe]クラスターについてはさらに詳細に解析して、反応の触媒に対する次数やH2生成に対するCO2の阻害効果などを定量的に評価することで、更に高活性な触媒を得るための知見を得たいと考えている。
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