研究課題/領域番号 |
22K05145
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
中島 隆行 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (80322676)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 銅 / 多核錯体 / ヒドリドクラスター / 二酸化炭素 / 還元 / ヒドロシリル化 / ギ酸 / 水素 / 協同効果 / ヒドリド |
研究開始時の研究の概要 |
世界的規模で実現が期待される「水素をクリーンな二次エネルギーとする社会の構築」を念頭に,貴金属に代わる安価な銅ヒドリド錯体を用いて水素貯蔵や水素生成の開発を行う。水素社会を実現するうえで大きな課題となるのが水素の貯蔵である。この問題点を解決するために従来用いられてきた貴金属系材料に代わり,卑金属で安価な銅錯体を用いて検討しようとするのが今回の申請課題の趣旨である。具体的には,①銅ヒドリドクラスターを用いたギ酸の生成と分解を利用した水素貯蔵・生成プロセスの開発,②銅ヒドリドクラスターによる水素貯蔵材料の開発である。
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研究実績の概要 |
銅ヒドリド種は,銅錯体触媒反応の活性種として重要な中間体と認識されているが,錯体として単離し,構造や反応性など分子科学的に研究を行っている例はストライカー試薬Cu6H6(PPh3)6と関連する化合物に限られており,研究未開拓の領域となっている。また,最近では元素戦略の観点から貴金属に代わる水素貯蔵や電極材料の観点からも注目を集めている。当研究室では金属骨格の精密制御に伴う物性・反応開発の観点から直鎖状四座ホスフィン配位子を用いた多核錯体の合成をこれまで展開してきた。最近,これらの配位子が銅ヒドリド錯体の安定化に有効であることを見出し,また支持配位子が錯体の構造や二酸化炭素の還元反応特性に大きな影響を与えることを明らかにしている。そこで,今年度は銅2核錯体の反応性に与える配位子の影響を調べる目的で2種類の四座ホスフィン配位子dpmpppおよびdpmppmNBnを用いて非対称銅2核錯体を触媒とする反応性開発(ギ酸の分解反応、二酸化炭素の水素化反応およびヒドロシリル化反応)を行った。ギ酸分解反応では、dpmpppにより高い活性が見られることが分かった。さらに、リン上の置換基に電子供与性の置換基を導入すると活性の向上が見られた。一方、二酸化炭素の水素化反応およびヒドロシリル化反応では、dpmppmNBnを配位子とした錯体がdpmpppより活性の向上が見られた。今後、配位子に導入したペンダントアミンの触媒活性に及ぼす効果を検証する予定である。また、いずれの2核錯体でも対応する単核錯体に比べ触媒活性の大幅な向上が見られ、2核錯体反応場における協同効果が発現されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直鎖状四座ホスフィン配位子で支持された非対称銅二核錯体ではギ酸の分解反応や二酸化炭素の水素化反応・ヒドロシリル化反応において単核錯体と比較して、顕著な触媒活性の向上を見出すことができた。リン上のフェニル基に電子供与性の置換基を導入すると活性の向上が見られるが、電子吸引性の置換基を導入すると活性の低下が見られた。また、配位子内に導入したペンダントアミンの触媒活性効果もあり、研究で当初想定してした効果を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、銅ヒドリド錯体の合成と反応性に関する研究を推進する。ヒドリドクラスターの研究に関しては合成条件が大きな影響を及ぼすことが分かっており、還元剤、銅錯体、反応温度など精密に制御して検討する。また、触媒反応に関しては、配位子内に導入したペンダントアミンンの効果や置換基効果、他の共存配位子が触媒活性に大きな影響を与えることが分かっているので、これらの点を重点に研究を進める。以上の研究を通じて直鎖状四座ホスフィンの有用性を明らかにし、これらの配位子に支持された銅ヒドリドクラスターや銅2核錯体における物性開発や反応開発などを進めていく予定である。
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