研究課題/領域番号 |
22K05168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山口 央 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10359531)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ナノポーラス / 呼気センサー / ナノチャンネル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,『ナノ空間での高収率酵素反応と電気信号変換』に立脚した設計から,新しい呼気センサー要素技術開発を行う。具体的には,申請者が独自開発しているナノチャンネル集積膜をベースとしたナノ材料開発研究,ナノ空間における物質輸送・反応に関わる学際的研究から,目的とするセンサーを作製し,呼気成分の簡易計測を実証する。
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研究実績の概要 |
呼気は採取容易な非侵襲試料であり,揮発性バイオマーカー(VBM),呼気エアロゾルに含まれる不揮発性バイオマーカー(N-VBM)をターゲットとしたバイオセンサー開発が進められている。呼気センサー開発では,呼気試料を迅速かつ簡便に捕集するための方法論,呼気中微量成分を高選択かつ高感度に計測する方法論が主要な開発項目である。本研究の目的は,『ナノ空間での高収率酵素反応と電気信号変換』に立脚した設計から,上記要求を解決する呼気センサー要素技術を開発することである。具体的な研究課題は①VBM計測系の開拓と実証,②N-VBM計測系の開拓と実証,③センサー部位の集積化と高度化であり,本年度は①と②について主に遂行した。①については,目的としたナノホール電極における気液界面形成,メタノールをモデルVBMとした実証実験を行い,試作したセンサーの検出感度を検証した。その結果,呼気中VBM計測のためには1桁程度の検出限界の改善が必要であることが分かった。②についてはタンパク質封入メソポーラスシリカについて,モデル酵素であるミオグロビンをメソポーラスシリカ細孔内に格納し,その構造とダイナミクスの関係について検討した。その結果,封入ミオグロビンの内部運動(ペプチド鎖の揺らぎなど)の緩和時間が数百psレベルであり,細孔壁や水和状態によって影響されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,以下の研究課題を遂行した。 ①VBM計測系の開拓と実証:アルキルシランで疎水化した陽極酸化アルミナ膜(PAA膜:開口率40%,ナノチャンネル径200 nm)に白金のナノホール電極を形成したセンサー電極を作製した。また,VBMガスの濃度を制御できるシステムを自作し,メタノールをモデルVBMとしてセンサー性能の検証を行った。メタノールガス導入によるクロノアンペロメトリー変化をセンサー応答としたところ,開発したセンサーは150 ppm以下の濃度範囲で線形応答を示し,検出限界がppmレベルであった。一方,ストリッピングボルタンメトリー変化をセンサー応答としたところ,2桁程度の検出限界の改善が可能であることが分かった。 ②N-VBM計測系の開拓と実証:昨年度までに,グルコースオキシダーゼ(GOD)封入メソポーラスシリカを用いた実証実験を行ってきた。本年度内においては,封入による酵素の構造・機能変化を解明するために,モデル酵素としてミオグロビンをメソポーラスシリカ細孔内に封入し,その構造とダイナミクスを中性子散乱測定から検証した。その結果,封入ミオグロビンの内部運動(ペプチド鎖の揺らぎなど)の緩和時間が数百psレベルであることを確認した。また,細孔壁と相互作用したポリペプチド鎖の緩和時間は数百psよりかなり長いこと,内部運動が水の並進拡散によって影響されることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
3つの研究課題について,今後の方策は以下の通りである。 ①VBM計測系の開拓と実証:呼気中VBMの濃度はppm以下(メタノールだと0.1 ppm程度)である。これまでに実証した検出限界(数ppm)の改善が必要であるため,昨年度までに確認したストリッピングボルタンメトリーによる検出限界改善の精査を行う。最終的に,アルコール発酵過程におけるエタノール生成量評価に開発したセンサーを適用し,実サンプルへの適用性を検証する。これによって,将来的なヒト呼気に適用する際の改良点を精査する。 ②N-VBM計測系の開拓と実証:昨年度までに,グルコースオキシダーゼをメソポーラスシリカに格納した触媒を用いたグルコース計測への適用性を実証した。この際に,格納した酵素活性の検証が,センサー高感度化に必要であると認識し,格納による酵素の構造とダイナミクス測定も進めてきた。本年度は,特に格納した酵素ダイナミクスに及ぼす水和の影響を中性子準弾性測定などから解明していく。特に,表面電気二重層と水和状態の関係性を中心に検討していく。 ③センサー部位の集積化と高度化:これまで詳細に検討してきたメタノールの他に,エタノールやホルムアルデヒド,アセトアルデヒドに対するセンサー性能の検証も行う。これまでの実験から,計測する電位によってメタノールとホルムアルデヒドの選択的計測の可能性が示されている。そこで,計測電位による2成分VBMの同時計測を検討していく。
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