研究課題/領域番号 |
22K05177
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
山本 敦 中部大学, 応用生物学部, 教授 (60360806)
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研究分担者 |
松島 充代子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (10509665)
川部 勤 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (20378219)
小玉 修嗣 東海大学, 理学部, 教授 (70360807)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 呼気TDM / ヒト用呼気捕集装置 / エピガロカテキンガレート / ヒト用呼気回収装置 / 治療薬物モニタリング |
研究開始時の研究の概要 |
ラットを使った予備実験において、呼気中の薬物量と高い相関があったのは肺での薬物濃度であった。EBAは肺胞被覆液が飛沫化して生成されるというのは定説となっており、本来は同じ濃度を示すはずである。ラットエアロゾル体積が不明なため濃度が算出できていないだけのことである。まず、ヒト呼気を使い、パーティクルカウンターで測定されたEBAの粒度分布から求まるEBA体積の妥当性を検証する。次いで、ラットEBAが測定可能な装置、あるいは測定手法を確立することで、呼気中薬物濃度の算出法を確立する。最終的には、ヒト呼気中の薬物濃度を測定することでTDMの可能性を見出す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、排気量の大きなヒト実験によるパーティクルカウンターを使った呼気エアロゾル (EBA) 体積の測定を伴う呼気薬物排泄濃度の算出を試みた。検討薬物は昨年度と同様のエピガロカテキンガレート (EGCG) とした。呼気中の微量EGCGを高感度、高精度に求めるため、化学発光検出法に基づくHPLC分析法の確立から開始した。先行研究を参考に、アセトアルデヒドの高エネルギー中間体を用いる化学発光系を採択した。ポストカラム反応で用いる化学発光試薬の低減より、過酸化水素は液性をアルカリにすることで、ペルオキシダーゼを使用せずとも酸素を発生することが判明した。移動相中にキレート剤、EDTAを添加することで、絶対量1 ng以下のEGCGの検出系を確立できた。 本分析系でヒト呼気及び血漿中のEGCG測定を試みた。血漿中のEGCG妥当性試験結果において回収率が極めて低いことが判明した。先行研究に基づいた溶媒抽出法や、一般的な強酸における除たんぱく質法では回収率が50%を超えなかった。BSAを使った模擬血漿実験の結果、強酸条件下でのEGCGはアルブミンに包摂されて共沈していることが判明した。そこで、アセトニトリルでたんぱく変性させた後に強酸除たんぱく質を試みることで80%近い回収率を得ることができた。呼気は、吸着剤に捕集したEBAをアセトニトリルで溶出、留去後にEDTA含有水溶液で調製した試験溶液を化学発光検出HPLCに注入することでEGCGが検出された。パーティクルカウンターより算出されるEBA体積を元に得られる呼気EGCG濃度は、血漿中の濃度に比べて5桁ほど高くなった。これは排泄直後からEBAの水分は揮散されて、パーティクルカウンターで検知される頃には極めて小さくなっていることが主原因と考えられたが、濃度としての比較には充分対応できるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでヒト呼気EBA体積を正確に求めることができずに、呼気中薬物濃度を算出することができなかった。パーティクルカウンターで求められるEBA粒度分布は、呼気中でのEBA分布を正確に反映することはできないが、EBA体積を反映した指標とみなして良いことが明確となった。呼気分析においては、内因性の指標物質による体積測定が大きな課題となっていたが、これによって体積問題が解決できる可能性を明らかとした。今後は、この可能性を証明して報告したい。 対象物質としての生体中のEGCG測定は、報告例が数多存在するが妥当性まで検証したものは少ない。今回我々が得た値は、既報値より一桁程度高く出ている。これは化学発光法という高感度、高精度検出法によって明らかとなった真実かもしれない。呼気-血中間の相関を求めることが本課題のテーマであり、本手法の確立によってゴールが見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度は、対象化合物EGCGの呼気-血中濃度の相関を求める。具体的には、ヒト体内での消失半減期が3-5時間のEGCGを摂取した被験者の呼気と血液採取を時間単位で行う。被験者数も増やして、できるだけ多くの測定値より相関を求め、呼気が血液の代替治療薬物モニタリング (TDM) 体液となりうることを証明する。 一方で、パーティクルカウンターでのEBA粒度分布が、正確にEBA体積を表す指標になりうるかの証明も行っていく。これには内因性の標準物質として尿素を用いる。呼気と血中の尿素濃度の相関を求める。そこでの傾きをEGCGでの相関式の傾きと比較することで、指標になりうることを証明したい。以上の成果は論文として発表して呼気を使ったTDMの有用性を広く認知させたい。
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