研究課題/領域番号 |
22K05184
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
清野 秀岳 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (50292751)
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研究分担者 |
岡崎 雅明 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (20292203)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 金属-硫黄クラスター / 水素化触媒 / 官能基選択性 / クラスター拡張 / 架橋配位子 / 一酸化炭素脱水素酵素 / 不活性小分子 / 金属酵素モデル / 二酸化炭素還元 / 窒素固定 |
研究開始時の研究の概要 |
化石資源に依存せずに二酸化炭素と窒素を資源として利用する方法が、資源循環型社会において必要である。これらの不活性な小分子は、自然界では金属酵素によって温和な条件下で還元されている。本研究では、それらの酵素の活性点にある金属-硫黄クラスターの構造を手本として、人工のクラスター触媒を開発する。クラスター反応場では、複数の金属中心が協同的に基質分子に作用するとともに、基質分子が多電子の供給を受けることが期待される。二酸化炭素や窒素の他に有機化合物を基質として還元反応を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、高度な活性化による小分子の還元を目的として、高次の多核構造を持つ金属-硫黄クラスターを創出する。計画2年目では、貴金属からなるキュバン型クラスターを触媒とする還元反応を継続して検討するとともに、キュバン型クラスターに金属原子を追加することによってクラスター骨格を拡張する手法を開発した。 前年度に見出したカチオン性キュバン型Ru4S4クラスター触媒によるニトロアレーンの常圧水素化について、添加物の効果を検討した。一連の二座配位子Ph2P(CH2)nPPh2を添加したとき、n = 2で触媒活性が最も向上したが、n = 1, 3では触媒活性が著しく抑制された。また、触媒の対アニオンであるPF6が活性発現の鍵となっており、他のアニオンとの塩は触媒活性がない。触媒活性種を明らかにするため、Ru4S4クラスターに上記の二座リン配位子が結合したものを合成したところ、それらの触媒活性は上記の結果とよく相関した。クラスターへの配位様式は、リン原子間を繋ぐ炭素鎖長によって大きく変化することを確認した。 CO2をCOへと可逆的に還元する一酸化炭素脱水素酵素は、活性部位にCクラスターと呼ばれる[Ni-4Fe-4S]の五核構造を有する。Cクラスターは擬立方体型の[Ni-3Fe-4S]骨格を土台としており、その硫黄原子の1つにさらに別の鉄原子1つが結合した構造を持つ。このような骨格のクラスターは未だ合成例がないため、新たな合成経路の開発を行なった。キュバン型RuIr3S4クラスターをテンプレートに用い、唯一置換活性な金属サイトであるルテニウム上にPh2PCH2PPh2 (dppm)配位子を導入した。これにPd(0)錯体を作用させると、dppmがルテニウムとパラジウムとの間を架橋する配位様式に移行し、さらにPd-S結合も形成されてPdRuIr3S4骨格へとクラスターが拡張された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画のうち、キュバン型M4S4クラスターにもう一つの金属を加えて五核クラスターに拡張する合成経路の開発が達成された。形成されたPdRuIr3S4のクラスター骨格は、Ru-S結合が一つ多いことを除けば、モデルとした一酸化炭素脱水素酵素のCクラスターによく似た構造であり、期待した方向に研究が進んでいる。Ru4S4クラスターによるニトロアレーンの触媒的水素化については、触媒活性を向上させる補助配位子や添加物をいくつか確認し、触媒活性種の候補に挙げられるキュバン型クラスターの配位化合物を合成した。その構造決定を進めたが、複数のクラスターが集積したと考えられるものは今のところ見出せていない。これらの検討に集中したため、硫黄原子を反応点として複数のクラスターを連結する手法の検討は次年度に行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果を学術論文にまとめるとともに、新たに進める研究として、新規な五核クラスターの反応性の解明、硫黄原子を反応点とするクラスターの連結、およびそれによって得られる集積体の触媒反応の開発を行う。 五核クラスターPdRuIr3S4の骨格構造は、Ru-S結合が一つ多いことを除けば、一酸化炭素脱水素酵素のCクラスター([Ni-4Fe-4S])との相関性が高い。CクラスターはFeとNiの間でCO2を活性化してその脱酸素を進行させると推定されているが、これらの金属と対応する位置にRuとPdがあることから、PdRuIr3S4クラスターはCクラスターの機能モデルとなる可能性がある。そこで、CO2やCOおよびこれらの類縁分子に対するこのクラスターの反応性を調べ、反応点となる金属サイトを明らかにする。また、この五核クラスターの合成経路に倣ってRuとPdのサイトを別の金属に置き換えたもの(例えば、Cクラスターと同じFeとNiを持つもの)の合成を試み、それらの間で物性や反応性を比較する。 金属-硫黄クラスターの集積方法として、求核性の強い硫黄原子を含むM4S4クラスター(M = Ru, Ir)に対してジハロアルカンを作用させ、有機基を介して硫黄原子間を連結する方法を検討する。有機基を系統的に変えて集積体を合成し、クラスター同士の配置と電子的相互作用の相関関係を明らかにする。さらに、Ru4S4クラスターの集積体についてはニトロアレーンの水素化触媒活性を調べ、単一のRu4S4クラスターと比較して、集積化による効果を検証する。
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