研究課題/領域番号 |
22K05199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
南齋 勉 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (20563349)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | アクティブマター / ソノケミストリー / 非線形 / イオン液体 / マランゴニ効果 / 非平衡 / ソノルミネッセンス / ソフトマター |
研究開始時の研究の概要 |
イオン液体を溶媒とした,水中の環境汚染物質を回収しながら自走する液滴系を設計する。この液滴系は,水中の溶質を内部に取り込む際に走る力が生み出されることから,『汚れセンサーを搭載したロボット掃除機』のように,水中に存在する汚染物質を自発的に回収する環境浄化システムに応用できると考える。本研究では,実用化を念頭に置いた低環境負荷の自走液滴系として,極性が非常に高いにもかかわらず,水には難溶の『イオン液体』を用いる。イオン液体のガラス基板に対する濡れ性や,イオン液体中の溶質間反応について検討する。
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研究実績の概要 |
我々がこれまでに報告してきた界面活性剤水溶液中の自走油滴現象は、ガラス基板に吸着している陽イオン界面活性剤と油滴中の陰イオン種との会合反応により、油滴周囲の界面張力が変化することで起こる。その中で、極性が高い油滴溶媒ほど走行速度が大きくなることが分かってきたが、極性の高い溶媒は水相と相互溶解するため、水中で液滴系を形成することが難しい。 本研究では、極めて高極性で、かつ水に難溶性の液体である常温溶融塩(イオン液体(IL))を液滴溶媒として使用し、液滴自走現象の走行機構を支配するガラス基板上での濡れ性について、イオン液体と界面活性剤の種類を変えて検討した。 アンモニウム系とイミダゾリウム系のいずれのイオン液体においても、炭素鎖が短い方が水相中の接触角は高くなり、時間の経過とともに接触角の低下が見られた。これは、イオン液体と界面活性剤の疎水基同士が疎水性相互作用により親和することで、接触角が低下したと考えられる。更に、塩基性条件の水相中の方が接触角の低下が見られた。これは、界面活性剤が非解離状態になることでイオン液体との疎水性相互作用がより強く作用したと考えられる。接触角の経時変化を測定する中で,あるアンモニウム系イオン液体のみ、自走現象が確認された。これまでの研究から、液滴の自走現象には、濡れ現象と脱濡れ現象の繰り返しが重要であることがわかっているが、イオン液体の液滴の自走時においても、濡れ(接触角が低くなる)現象と脱濡れ(接触角が高くなる)現象が繰り返し起こっていることが確認された。また,水相中のイオン液体の界面張力の測定結果から,水相に界面活性剤や塩基が含まれる系では,界面の不安定性が確認され,この不安定性が自走現象のトリガーとなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水相中の油滴系と同様に,イオン液体系においても自走現象が確認された。油滴の自走現象は、油滴内の溶質とガラス基板上に吸着した界面活性剤分子がイオン会合反応することで、界面活性剤の脱離が引き起こされ、これに伴う界面自由エネルギー変化により、濡れ現象と脱濡れ現象が繰り返され、自発的走行をしていた。一方で,イオン液体系では,イオン液体中に溶質を含まない系においても自走が確認されたため,異なるメカニズムが存在することが考えられる。このイオン液体の自走現象は,まったく新しい知見であり,「イオン液体と水相」,「イオン液体とガラス基板」という非平衡状態の界面における新たな研究の基礎となることが期待される。 また,回収した汚染物質の無害化に向けた取り組みも並行して進んでおり,有機溶媒中におけるフッ素系界面活性剤の超音波分解反応の検討が進行中である。また有機溶媒中の超音波化学反応場の効率化に向けた検討も並行して進めている。 以上のことから,研究の進捗は当初の予定通りであり,おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
水相中のイオン液体の走行性について,水相に含まれる,界面活性剤や塩の種類が影響する可能性が示されていることから,これらを系統的に変化させることで,走行性の支配要因について解明を目指す。 有機溶媒中のフッ素系界面活性剤の超音波分解について,溶媒種を最適化させることで 分解の促進が期待できる。今後,溶質の濃度依存性をはじめ,有機溶媒中の超音波化学反応場の気液界面の状態について物理化学的に解析することで,反応場の解明と,効率化の検討を行なう。 有機溶媒中における超音波化学反応場の高温状態は,雰囲気ガスの調整と気泡核形成によって大きく影響されることが分かってきたため,この支配要因の解明と,反応場の高温化と,分解効率の向上を目指して引き続き検討していく。
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