研究課題/領域番号 |
22K05202
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
阿部 勝正 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 准教授 (40509551)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 環境浄化 / 微生物分解 / 有機リン化合物 / バイオレメディエーション / 遺伝子組換え / 難分解性環境汚染物質 |
研究開始時の研究の概要 |
Sphingobium sp. TCM1は毒性を有する難分解性含塩素有機リン化合物tris(2-chloroethyl) phosphate(TCEP)を分解可能であるが,その代謝産物である2-クロロエタノール(2-CE)を分解することができない.この2-CEも毒性化合物であり,TCEPを完全無毒化するためには2-CEのさらなる分解が必要となる.本研究ではTCM1株を分子生物学的手法で改変することでTCEPの完全無毒化が可能な新規菌株の創出を行い,その実用可能性について検討することを目的としている.
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研究実績の概要 |
Tris(2-chloroethyl) phosphate(TCEP)などの塩素を含む有機リン化合物は,可塑剤や難燃材として世界各地で大量に用いられているが,難分解性であり,種々の毒性を有する.研究代表者はこれまで,含塩素有機リン化合物分解システム構築のため, TCEP分解菌 Sphingobium sp. TCM1を単離し,その分解メカニズムについて詳細に解析してきた.それら研究においてTCM1株はTCEPを分解し2-クロロエタノール(2-CE)と無機リン酸を最終産物として生成するが,2-CEを分解できないことが明らかになっている.この2-CEも毒性化合物であり, TCEPの完全無毒化を行うためには2-CEのさらなる分解が必要となる.本研究ではTCM1株に2-CE分解酵素遺伝子を導入・生産させることで,TCEPの完全無毒化が可能な新規菌株の創出を目的としている.令和5年度は以下の業績を上げた. 昨年度同定したグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素遺伝子プロモーター,または,TCM1ホスホトリエステラーゼ遺伝子(had遺伝子)プロモーター下流にAgrobacterium radiobacter AD1株のハロアルコール脱ハロゲン化酵素遺伝子(hheC遺伝子)を組み込んだ2-CE分解酵素遺伝子発現ベクターを構築した.本ベクターをTCM1株に導入し,2-CE分解を試みたが分解は確認されなかったことから,より分解しやすいとされる含塩素アルコール1,3-dichloro-2-propanol(1,3-DCP)を用いた解析を行なった.その結果,空ベクター導入TCM1株では1,3-DCP濃度, 塩化物イオン濃度には変化が見られなかったが,2-CE分解酵素遺伝子発現ベクター導入株においては培養開始から1,3-DCP濃度の減少が見られ,24時間後には完全に分解されることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載したとおり,昨年度同定したグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素遺伝子プロモーターとTCM1ホスホトリエステラーゼ遺伝子(had遺伝子)プロモーターを用いて2-CE分解酵素遺伝子発現ベクターを構築した.本遺伝子発現ベクター導入TCM1株において2-CEの分解は確認されなかったものの,同じ含塩素アルコールである1,3-dichloro-2-propanol(1,3-DCP)は分解可能であった.以上の結果は,Agrobacterium radiobacter AD1株のハロアルコール脱ハロゲン化酵素遺伝子(hheC遺伝子)がTCM1株の遺伝子プロモーター制御下で発現可能であることを示すものであり,TCEPの完全無毒化が可能な新規菌株の創出のために必須な成果である.以上のことから本研究は概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度はTCEPの完全無毒化が可能な新規菌株の創出を目的としたTCM1株中でのハロアルコール脱ハロゲン化酵素遺伝子の発現,そして,遺伝子組換えTCM1株での1,3-DCPの分解に成功した.しかしながら、今回の検討では1,3-DCP の完全分解で確認されるはずの塩化物イオン濃度が確認されていないことから,反応が途中段階で止まっている可能性が考えられた.そこで次年度は1,3-DCP分解における中間代謝物を解析することでどの段階で反応が停止しているのかを明らかにする.また,必要に応じて他の遺伝子を導入することで含塩素アルコールを完全分解可能なTCM1株を創出する.最終的には上記のように得られた遺伝子組換えTCM1株を用いて,TCEPやtris(1,3-dichloro-2-propyl) phosphateなどの含塩素有機リン化合物の完全無毒化が可能であるかの検討を行う.
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