研究課題/領域番号 |
22K05211
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
松岡 真一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10432288)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ルイスペア触媒 / 極性ビニルモノマー / アニオン重合 |
研究開始時の研究の概要 |
アニオン重合は立体規則性制御や高分子量リビングポリマーの合成などに関して,リビングラジカル重合より優位性がある。しかし,開始剤や成長末端が酸性度の高い活性プロトンなどと副反応してしまうため,モノマーの適用範囲が狭い。そこで本研究では,この欠点を克服できる革新的なアニオン重合開始剤系を構築する。申請者が独自に開発してきた求核性の低いルイス塩基と耐水性ルイス酸からなる空気中でも安定なルイスペア触媒を用いることで,活性プロトン含有モノマー類のアニオン重合を達成し,得られた新構造ポリマーの基本的な特性を評価し,さらなる展開を探求する。
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研究実績の概要 |
今年度は,PPh3をルイス塩基,各種金属トリフラートをルイス酸として用いたルイスペア触媒を用い,(メタ)アクリル酸エステル類やジアルキルアクリルアミドの重合反応を行い,ルイス酸の遷移金属の種類による重合性や重合活性種の同定を行った。重合活性種の同定は,重合禁止剤の添加とMALDI-TOF-MS測定による末端基解析により決定した。これまで,Cu(OTf)2触媒はラジカル重合を進行させることを見出している。今回,Fe(OTf)3を用いたときにはラジカル重合が,Sc(OTf)3やY(OTf)3を用いたときにはアニオン重合が進行し,Zn(OTf)2, In(OTf)3, Zn(OTf)2を用いた場合には,溶媒の種類により重合活性種がラジカル種もしくはアニオン種と変化することを見出した。後周期遷移金属触媒はラジカル重合が,前周期遷移金属触媒はアニオン重合が進行する傾向が観察された。Fe(OTf)3は特に高活性なラジカル重合触媒であったが,Fe(OTf)2は不活性であった。すなわち,Fe(III)やCu(II)は一電子還元を起こしラジカル種を生成しやすいのに対し,Sc(III)や Y(III)は3価の安定性が高く重合中に還元されないと考察される。Fe(OTf)3はCu(OTf)2と異なり,水溶媒だけではなく有機溶媒中の均一系で重合反応が進行した。そこで,アクリル酸2-メトキシエチルの重合の速度論的な解析を行ったところ,重合速度はモノマー濃度とFe(OTf)3の一次に比例することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルイスペア重合において重要な役割を果たしているルイス酸触媒に関して,様々な金属トリフラートを用い検討することで,遷移金属触媒の種類により重合機構が異なることを明らかにした。新たな金属エノレートがラジカル重合およびアニオン重合の重合活性種となることを見出したことは,学術的新規性が高いと考えられる。特にFe(III)やSc(III)は活性が高く,重合速度論の知見を獲得できたことは,今後のルイスペア重合における適用範囲を大きく広げ,研究を展開できる可能性を示すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に見出した重合条件を用いて,ラジカル重合とアニオン重合の機構をさらに明らかにする。特に重合速度論からは重合の本質を明らかにすることができる。次に,今回新たに生成することが確認できた金属エノレートの反応性を詳細に調査することで,有意義なビニル重合系の確立を目指す。特に,高温高速リビング重合の可能性を探求する。さらに,その重合活性種の水などの活性プロトンに対する耐性を利用し,N-イソプロピルアクリルアミドなどの活性プロトン含有モノマーの重合反応へと展開する。
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