研究課題/領域番号 |
22K05225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
浅川 直紀 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80270924)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高分子半導体 / 有機トランジスタ / 有機電気化学トランジスタ / ノイズ発生 / 高分子電解質ゲル / 非線形分岐現象 / ノイズ駆動 / パイ共役系高分子 / 生体模倣 / 確率共鳴 / 熱ノイズ / 生体センサ / 高分子デバイス / 生物模倣 / エッジコンピューティング / ノイズ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は, 動物の信号情報処理機構に倣い,高分子物質の電気物性ゆらぎを積極的に用いた新しい動作原理による高分子電子デバイスを作製する.さらに,そのデバイス素子から構成される素子ネットワークが発生する複雑な信号パターンを用いた生体模倣型信号センシング・処理デバイスの創生を目指す.その際に,生体の熱ノイズを模した高分子半導体の熱ノイズを用いることにより、微弱信号の検出感度を高める「確率共鳴現象」の原理をデバイスの動作機構として導入する.また,微弱信号を素子ネットワークの信号パターンとして増幅し, 生体の複雑な状態を把握するための生体模倣型信号情報処理デバイスの創成を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では、R5年度は、1)神経シナプス可塑性の機能を模倣した高分子両極性電解質ゲルを誘電体として用いたサイドゲート型有機電界効果トランジスタの作製と、2)パイ共役系高分子を用いたノイズ発生素子のノイズによる非線形電子回路の分岐現象の駆動、3)デバイス素子といった複合材料中の分子ダイナミクスを明らかにするために、高分子薄膜向けの磁気共鳴イメージングも行い、分子ダイナミクスのスペクトル密度関数のイメージングを試みた。 1)これまで、高分子両極性電解質ゾルを用いた有機電気化学トランジスタ(OECT)の開発に成功してきたが、高分子両極性電解質ゲルを用いたデバイス開発には成功していなかった。そこで、R5年度は、高分子両極性電解質ゲルを用いたOECT特性を発現するデバイス作製条件を検討した。その結果、ゲルに外力を印加することにより、高感度な圧力センサへの応用の可能性を見出すことができた。今後、ヒトの筋電といった微弱力学信号を検出するセンサとしての応用が期待される。 2)パイ共役系高分子半導体を用いたノイズ発生素子回路により発生するノイズ特性を調べた結果、ノイズスペクトルは1/fゆらぎの特性を有していることが明らかとなった。そこで、本研究で開発した分子由来のノイズ発生素子を用いて、非線形分岐現象である周期倍分岐を有するダイオード共振回路を駆動したところ、ノイズ駆動分岐現象の発現に成功した。このことは、微弱信号の単なる検出ということに留まらず、素子ネットワークを構築した際に創発する時空間ダイナミクスとして信号処理することが可能となることを意味している。このことは、高分子物質をベースとした人工知能の基盤となる。 3)デバイスのゆらぎ利用にとって重要となるデバイス素子のイメージング手法も開発した。この手法により、高分子の膜材料の分子ダイナミクスのスペクトル密度関数のイメージングに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、R5年度は、1)神経シナプス可塑性の機能を模倣した高分子両極性電解質ゲルを誘電体として用いたサイドゲート型有機電界効果トランジスタの作製と、2)パイ共役系高分子を用いたノイズ発生素子のノイズによる非線形電子回路の分岐現象の駆動を試みた。 R4年度は、当初考案した高分子両極性電解質ゲルを用いたOECTのデバイス特性が得られていなかったが、高分子ゲルを電極へ押しつける力を調節することにより、電界効果トランジスタ特性が得られることに気がついた。これにより、OECTの確率共鳴や圧力センサといった様々な実験を試みる基盤ができたという点において、概ね順調に進展していると言うことができる。 さらに、パイ共役系高分子半導体の薄膜製造プロセスを工夫することにより、室温条件下で高確率でノイズを発生させることが可能なデバイス素子の作製に成功した。このノイズ素子を用いることにより、ノイズ駆動非線形ダイオード共振回路の実験が可能になり、今後、ノイズ駆動非線形分岐現象の詳細に調べることが可能となり、ヒトの体温といった熱エネルギーを利用したセンサ開発を展開することが可能になりつつあるという点においても、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の研究に取り組み、最終年度として総括を行う予定である。 1)高分子電解質ゲルを誘電体として用いたOECTのゲルへの圧力依存性とOECT特性との関係を調べる。 2)高分子半導体を用いたノイズ発生素子のノイズ特性の温度依存性について調べ、確率共鳴現象の発現を試みる。 3)高分子半導体ノイズ発生素子を用いた非線形ダイオード共振回路のノイズ駆動分岐現象の詳細を調べ、微弱信号の検出と増幅を目指したバタフライ効果の実装を試みる。 以上の研究課題の成果を基に、熱エネルギーを用いた高分子半導体ベースの人工知能の基盤技術の創生を目指す。
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