研究課題/領域番号 |
22K05234
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 祥正 東京工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90444190)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | プロトン伝導性高分子電解質膜 / 天然ゴム / ポリスチレンスルホン酸 / グラフト共重合 / ナノマトリックスチャネル / 4-スチレンスルホン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
優れたプロトン伝導性を有するフレキシブルな高分子電解質膜の創製は、固体高分子型燃料電池の高性能化による水素社会および脱炭素社会の実現に向けて重要な課題となっている。この課題は、申請者らが提案したナノマトリックスチャネルの概念を利用することにより解決できる可能性がある。本研究では、ゴム状高分子粒子表面へのプロトン伝導性高分子の固定化、プロトン伝導性高分子の連結によるナノマトリックスチャネルの構築、プロトン伝導が効率的に起こるナノ相分離構造の決定により得られる成果に基づき、ゴム状高分子に由来する優れた柔軟性にプロトン伝導性が付与された高性能プロトン伝導性高分子電解質膜を創製することを目指す。
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研究実績の概要 |
ゴム状高分子に由来する優れた柔軟性にプロトン伝導性が付与された高性能プロトン伝導性高分子電解質膜を創製することを目指し、グラフト共重合によりゴム状高分子粒子表面にプロトン伝導性高分子を固定化する検討を行った。 ゴム状高分子として脱タンパク質化天然ゴム(DPNR)を用い、直径約1 μmの天然ゴム粒子が水に分散したラテックスの状態でゴム粒子表面にプロトン伝導性高分子を固定化するための検討を行った。乾燥ゴム含有率(DRC)を20 wt%に調整したDPNRラテックスにレドックスラジカル開始剤であるtert-ブチルヒドロペルオキシド/テトラエチレンペンタミン (0.020 mol/kg-rubber)を滴下後、4-スチレンスルホン酸エチル(SSEt) (1.0 mol/kg-rubber)を加えて30℃で3時間重合することにより、グラフト共重合体(DPNR-graft-PSSEt)を調製した。DPNR-graft-PSSEtに含まれるホモポリマー(PSSEt)は、アセトン/2-ブタノン (3/1)で24時間ソックスレー抽出を行うことにより除去し、アセトン抽出したグラフト共重合体(AE-DPNR-graft-PSSEt)を得た。DPNR-graft-PSSEtの加水分解は、ラテックスのDRCを2 wt%に調整した後、0.2 mol/LのNaOH存在下、85℃で4時間攪拌することにより行い、プロトン伝導性高分子が天然ゴムに固定化されたDPNR-graft-PSSを調製した。キャラクタリゼーションは、試料をアセトン-d6もしくはDMSO-d6で膨潤させ、FG-MASプローブを備えたゴム状態NMR法により行った。1H-NMRスペクトルに示されたシグナル強度比から、グラフト共重合の反応率、グラフト効率および加水分解効率を算出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SSEt供給量を1.0 mol/kg-rubberに固定し、条件の最適化を行った結果、開始剤0.020 mol/kg-rubberおよびDRC20%の条件でグラフト共重合を行うことにより、モノマー反応率およびグラフト効率がそれぞれ98%および39%でDPNR-graft-PSSEtが得られた。また、最適条件下でSSEt供給量を0.75 および0.50 mol/kg-rubberに変化させた場合においても、同程度の反応率およびグラフト効率でグラフト重合が進行した。DPNR-graft-PSSEtの加水分解は、NaOHを用いて85℃で行うことにより、全てのスルホン酸エチルがスルホン酸に変換されたDPNR-graft-PSSが得られることをNMR測定より明らかにした。1.0、0.75および0.50 mol/kg-rubberのSSEt供給量で調製したDPNR-graft-PSSのイオン交換容量は、それぞれ0.22、0.15および0.11 meq/gであり、スルホン酸基含有量が異なる複数のDPNR-graft-PSSの調製に成功した。以上の成果より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに、プロトン伝導性高分子であるポリスチレンスルホン酸の含有量が異なる複数のDPNR-graft-PSSを調製した。2024年度は、これらの試料のプロトン伝導度をインピーダンスアナライザ―で測定する。また、透過型電子顕微鏡でモルフォロジーを観察し、ナノマトリックスチャネルの形成とプロトン伝導度の関係を解明することを目指す。
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