研究課題/領域番号 |
22K05238
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
荒木 潤 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10467201)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | キチンナノウィスカー / 表面アミノ基 / サリチル酸 / プロピオン酸 / 補強効果 / UV吸収能 / 消臭性能 / TNBS / o-フタルアルデヒド / ニンヒドリン / Acid Orange 7 / Reactive Red4 / 可視光吸光光度計 / 反応性 / 縮合 / 吸着 |
研究開始時の研究の概要 |
まず初年度に、キチンナノウィスカー表面アミノ基をターゲットにした種々のゲスト分子(低分子・高分子)の結合あるいは吸着反応を行い、どの分子がどれだけ反応するのかを定量する。2年目にはなぜ表面アミノ基の反応性が低いのか、そのメカニズムを明らかにする。3年目には、高効率な触媒の使用など、表面アミノ基の反応性が向上する手法を検討し、表面アミノ基の定量的な修飾が可能になる条件を探索する。
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研究実績の概要 |
脱アセチル化処理を用いて表面アミノ基を制御したキチンナノウィスカー(ChNWs)のアミノ基に対し、サリチル酸・プロピオン酸・フェニルイソシアネートなどの種々のゲスト分子を結合する反応を行った。反応温度・反応時間・ゲスト分子のアミノ基に対する化学量論比等の条件を様々に変えて結合反応を行い、紫外・可視吸光度や滴定による残存アミノ基の定量などの手法を用いて結合量を定量した。フェニルイソシアネートに対しては反応そのものを非水形で行うことが困難であり結果は出せなかったが、サリチル酸およびプロピオン酸はアミノ基に対して過剰に添加し様々な条件電反応を行ってもすべてのアミノ基が反応にあずかることはなく、アミノ基の初期量の半分またはそれ以下しか結合しなかった。これは前年に明らかにした、アミノ基ラベル化試薬や色素の吸着の結果と同じ傾向であり、ChNWsのアミノ基はキトサンや一般のアミン化合物と比較して反応性がきわめて低いことが明らかになった。 また、表面にサリチル酸を結合したChNWsは紫外線吸収能を示すほか、残存アミノ基が酢酸を吸着し中和することによる酢酸消臭能を示すことが明らかになった。綿布に塗布するとUVブロック効果と酢酸の消臭効果を発揮した。さらにPVAフィルムに添加して混合すると弾性率および破断強度が向上し、複合材料のナノフィラーとしても効果を発揮した。 以上より、本研究で得られたサリチル酸結合ChNWsは、補強効果・UV吸収能・消臭性能を示す多機能微粒子材料として湯用であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年の結果と併せて、ChNWsの表面アミノ基に対して様々なゲスト分子を結合する反応を広範な条件下において行った結果、極めて多くのゲスト分子の結合率が低いということが判明している。その真の理由は未だ明らかに放っていないが、従来のキチンの研究分野において言われてきた定説(固体表面アミノ基である・2位の官能基は反応性が低い・アミノ基のpKaが特異である、など)だけでは説明がつかないことははっきりしており、ChNWsの表面アミノ基のもつ特異性がより浮かび上がってきている。 また、表面にサリチル酸を結合したChNWsが、補強性能・UV吸収能・消臭能を示す多機能微粒子として有用であるという新規な結果も得られた。補強性能については古典的な力学モデル(Halpin-Tsaiモデル)を用いて解釈可能であった。また、布に塗布することによりUVブロック効果および消臭性能を簡便に付与することが可能であり、布を含めた固体表面の新規な改質法を提案するに至った。 以上より、本研究は順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の検討が不十分であった、禁水条件下におけるフェニルイソシアネートの結合量評価を検討する。サリチル酸およびプロピオン酸についてはさらに結合条件を広範にして結合反応を行い、結合量と反応条件の相関について検討する。 ChNWsの表面アミノ基の反応性が低い理由をさらに考察する。場合によっては、グルコサミンを誘導体化して2位・3位および6位がアミノ基となったモデル糖化合物を合成して反応性を調べる必要がある。 得られた成果を学会発表および学術論文投稿する。
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