研究課題/領域番号 |
22K05241
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
吉田 嘉晃 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00642555)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 高屈折率材料 / ケミカルリサイク / 機能性フィルム / ポリジチオウレタン |
研究開始時の研究の概要 |
ポリジチオウレタンは高い屈折率や柔軟性を示す熱可塑性樹脂である。さらに、このポリマーはモノマーであるイソチオシアナート類とチオール類の可逆的な反応に基づくリサイクル性を示す。このような光学特性や機械強度に優れたポリマーから成型される機能性フィルムは、光学パーツの保護フィルムやコーティング剤の新材料として応用可能なため、高速通信を支える電子デバイスの開発分野などへの貢献が期待できる。そこで本研究では、高機能性ポリジチオウレタンを用いたケミカルリサイクル可能な高延伸性光学フィルムの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
高機能性ポリジチオウレタンを用いたケミカルリサイクル可能な高延伸性光学フィルムの開発を目指し、1年目の研究ではポリジチオウレタンのモノマーとなる種々のジイソチオシアナートを安価で入手容易な二硫化炭素を原料として合成することに成功した。既知の合成方法の一つとして、二硫化炭素とジアミンの付加体にギ酸エチルを加えて中間体を合成し、続いて減圧下で加熱することによって縮合反応を行う方法が知られている。一方、本研究では同じ原料の混合物をジオキサン中で加熱還流することにより、ワンポットで容易に合成できる方法を見出した。この方法はアルキル基およびアルキルエーテル基を有するジアミンに適用可能であることが明らかとなり、これまでに4種類のジイソチオシアナートを合成した。しかしながら、三級アミン部位を有するジアミン類に対しては、構造不明な副生成物が得られることもわかったため、本反応を多様なジアミンに適応させるためには更なる反応条件の検討が必要である。 また、合成したジイソチオシアナートとエーテル構造を有するジチオールとの重付加によって対応するポリジチオウレタン(PDTU)が合成できた。このエーテル構造を有するPDTUのガラス転移温度は、我々が以前に報告したPDTUと比べて非常に低くいことがわかり、柔軟性に優れるが自立膜としてフィルムかすることは困難であった。そこで四官能性チオールを添加して架橋させることで、透明かつ柔軟性に優れたPDTUフィルムを成膜することに成功した。さらに、このPDTUフィルムを切断したのち、その断面同士を押し当てることで、断面が接合することを見出した。接合したのち十分な時間を与えることで、切断面の強度は切断前と同程度まで戻ったことから、このPDTUフィルムは自己修復性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二硫化炭素を原料としたジイソチオシアナートの簡便な合成法を当初の予定より早い段階で達成することができ、2年目に予定していたPDTUの合成およびフィルム化まで1年目で到達することができた。また、PDTUフィルムの物性として高屈折率、柔軟性、透明性、ケミカルリサイクル性などは期待していたが、今回の研究において自己修復性を示すことが明らかとなった。これは当初予想していなかった物性であり、今後の研究によってPDTUの応用範囲がさらに広がるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
多種多様なジアミンに適用できるジイソチオシアナートの合成方法を開発するため、反応条件を再検討する。また、PDTUフィルムの屈折率、柔軟性、自己修復性などを評価し、それらの物性と多官能性チオールの構造や添加量などの関係を体系化する。さらに、効率的かつ低環境負荷なケミカルリサイクルを実現するため、無触媒や無溶剤などの反応条件について検討する。
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