研究課題/領域番号 |
22K05247
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 早稲田大学 (2023) 国立研究開発法人産業技術総合研究所 (2022) |
研究代表者 |
犬束 学 早稲田大学, カーボンニュートラル社会研究教育センター, 准教授(テニュアトラック) (70735852)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 高分子 / 接着 / 界面 / 吸着層 / 中性子反射率法 / 和周波発生分光法 |
研究開始時の研究の概要 |
ガラスなどの無機固体と高分子との接着面における,官能基スケールの相互作用とナノスケールの吸着高分子鎖構造が接着強さに紐づくかを階層的に理解し,高分子メルト接着剤やゴム状高分子の接着現象について学術的な基礎を確立する.具体的には,ポリビニルアルコールを原料としてアセタール化率を制御したポリビニルブチラールを合成し,これと石英基板が接した界面における,官能基の配向を和周波発生分光法,吸着高分子鎖の構造を中性子反射率法により解析する.これらの結果を接着強さと比較することにより,官能基スケールの分子配向および相互作用がどのように吸着層構造に寄与し,ひいてはどのように接着強さに影響するかを明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究では,無機固体と高分子との接着面における,官能基スケールの相互作用,ナノスケールの吸着高分子鎖構造,およびマクロスケールの接着強さにどのように階層的に紐づくかを理解することを目的として検討を進めた.高分子試料として,スチレンモノマーと (2-ビニルピリジン)モノマーから構成されるランダムコポリマー(PS-r-P2VP)を選択した.このコポリマーは,極性が低い成分と高い成分の2種類から構成されているため,この比率を変えることで,高分子と無機固体との相互作用を系統的に変化させることができると期待した.これらの高分子と,親水化処理した石英基板が接した界面における,吸着高分子鎖の構造を中性子反射率法により解析した.溶媒膨潤状態での吸着層の中性子反射率の解析から,基板との相互作用が弱い高分子では緩く吸着したLoose鎖が,基板との相互作用が強い高分子では強固に吸着したTight鎖が,それぞれ多く形成された構造を定量的に評価することができた.また,これらの試料について引張せん断接着強さを行い,吸着層の構造および糊残りと接着強さとの相関の比較から,Loosely鎖とバルク鎖との絡み合いが接着強さに大きく影響している接着メカニズムを提案した.更に,モデル結晶性高分子としてポリエチレンオキシド(PEO)を用い,エリプソメータを用いた測定から薄膜化により界面の影響をより大きく受けることにより結晶化度が低下する挙動を解析し,この結果を和周波発生分光法により観測した界面分子配向状態の温度依存性と比較することで,界面近傍における高分子の結晶構造について解析した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたポリビニルアルコールを高分子反応により部分的にポリビニルブチラールとした共重合体を試料に用いた実験では,試料の製膜性が悪く,中性子反射率法などに基づく界面構造の解析に支障があることが分かったため,PS-r-P2VPを試料とした実験に切り替えて検討を進めた.中性子反射率測定によるPS-r-P2VP吸着層の構造解析および接着強さとの紐づけができており,基本的な研究目的は達成しつつある.更に,モデル結晶性高分子としてPEOを用いた検討も進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに検討できているPS-r-P2VPのモノマー分率の種類が少ないため,今後はデータ点数を増やす必要がある.また,より強固に相互作用するモノマーを有する高分子や,ランダムだけでなくブロック構造を有する高分子の検討など,高分子の分子設計から吸着層構造および接着強さを制御する手法について検討し,実材料系における接着強さ制御などの応用につなげる.また,無機固体界面における結晶性高分子の挙動および接着現象についても検討する.
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